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LUNA SEAが見た夜空

今日は金曜日。
いつも会社から帰る時は地下を通って駅へ向かうが、なんとなく「花金の空気」が吸いたい気がして、地上を通って駅に行くことにした。

予定がない金曜には、よくこんなノリで名駅付近を軽く歩いてから帰る。
大勢集まってワイワイするのが得意な方とはいえないけど、そういう空気の人がたくさんいる駅の様子は割と好きだったりする。

(好きと言っても「混ざりたいなぁ」よりは「うわぁ…」と異文化を覗き見する感覚に近いけど)

外に出て、大名古屋ビルヂングの側からゲートタワーの方へ渡る横断歩道で信号待ち。
ここの信号は長いのに、ちょうど赤に変わったばかりのタイミングで来てしまったみたいだ。

手持ち無沙汰になるけど、仕事で散々ブルーライトを浴びたから、スマホをいじる気持ちにはならない…。
私はボーッとゲートタワー方面の空を見上げた。


なんか…

ビルってよく考えたらやばい建物だよなぁ…


(二度見)

あんなに高くて、中に部屋がたくさんあって、その部屋の中でたくさんの人が今も仕事をしているんだもんなぁ…

てか、名駅の近くって、こんなにビルあったっけ?

思ったより空が見えないな…


などと、取り止めもないことを考えながらビルと空を見ていると、ある曲の歌詞が思い浮かんだ。

輝くことさえ忘れた街は
ネオンの洪水 夢遊病の群れ
腐った野望の吹き溜まりの中
見上げた夜空を切り刻んでいたビル

LUNA SEAの代表曲、「ROSIER」。
まだゴス的な雰囲気が強かったLUNA SEA初期の名曲で、サビのキャッチーなメロディによってLUNA SEAを一躍有名にした曲でもある。

作詞は「LUNA SEA」。
作曲も「LUNA SEA」。
LUNA SEAはV系バンドでは珍しくメンバー全員で意見を出し合って曲を作るスタイルを取っており、「ROSIER」も例に漏れずLUNA SEA全員で作った曲だ。
原曲はベースのJが書いたとされているが、誰がどの部分にどれくらい関与しているのかは公式からは非公開となっている。

一説によると、この「ROSIER」という曲は、まだ若かった彼らの「売れたい」と言う強い気持ちの発露だとかなんとか言われている。
実際にこの曲が出された時期は、なかなかバンドとして売れることができず、原曲を書いたとされるJはスランプに悩まされていたという。

そんなバックボーンを知ってこの曲の歌詞を読むと、当時の彼らのフラストレーションとか、攻撃的な精神状態とか、いろいろなものが推察されて非常にエモい。

私はビルを見上げて、この曲の

見上げた夜空を切り刻んでいたビル

という部分を思い出した。

言われてみれば確かに、ビルが空を切り刻んでいるようにも見える。

私はこれまで空を見上げても、「ビルの向こうに空(背景)がある」としか解釈したことがなかった。
でも、今見ている景色は確かに「見上げた夜空を切り刻んでいたビル」という表現がとてもしっくりくる。

ビルが夜の闇に包まれているのではなく、夜空がビルに切り刻まれている…。
「図と地の逆転」とまでは言わないかもしれないけど、なんだかちょっと「ルビンの壺」的だ。


この歌詞を書いたメンバーの目には、ビル=人間の社会が、美しい夜空を汚しているように見えたのかな、と思った。

きっと、こんな歌詞は普通にビルと夜空を見上げただけでは浮かんでこないだろう。
追い込まれて、見るもの全てに攻撃的な気持ちを向けてしまうくらい追い込まれている時に、脳が変な反応を起こして、ものの見方が突然変わってどこかから降りてくるものなんじゃないだろうか。

あるいは、フラストレーションの極地で自分の中にある隠し部屋みたいなところからスッと出てくるのか…。


信号が青になって歩き出しても、私はビルと夜空から目が離せなかった。
LUNA SEAの誰かも、当時これと同じような景色を見たのかなぁ…。

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