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よしながふみ『大奥』雑感1

私のなかで人にお勧めしたい漫画第1位の漫画です。もう何度目か分からないけど読んでいるので、読みながら思ったことをメモしていこうと思います。だいたい妄想です。

家光と有功

この時代まだ男女が同数で男性の方が立場が上という社会構造と、有功の美しさや賢さや性格の良さにより誉め称えられてきたであろう過去(ただ有功は父親とはあまり良い関係ではなさそうでしたが)から来るものだろうけど、有功は、作中周囲から言われてるほど聖人という感じがしないんですよね。家光に対しても、言葉の端々から上から目線だなーと思います。

家光は自分を正しく叱ってくれてそのうえで受け入れてくれる人を求めていたのだろうし、家光にとって有功は生きる理由だったのだろうけど、死ぬ間際まで有功に対して不安げだったのが悲しいです。「これでよかったのだよな?」という確認に含まれる不安。有功に対して、自分のせいで大奥に閉じ込められることになってしまったこと含め将軍であることの負い目をずっと感じていたのでは。

正直、有功は家光の気持ちにすがって生きるのをやめられた(少なくとも表面上は)けど、家光はどうだったのかなーと思ってしまいます。

綱吉と柳沢吉保

これはもう完璧と言わざるを得ないのでしょうか。百合の完成形。もちろん大奥はどこをとっても魅力的な漫画だけど、人に勧めるのはやっぱりこの二人かなという気持ち。

系統の違う美人(分かりやすく言うとカワイイ系とキレイ系)がお互いがお互いを「綺麗でいいなあ」と思っていて、それを伝え合うシーン。

「姫様の魅力を殿方になんか分かられたくないけれど」と伝える吉保、「裏切るなよ」と太ももに小刀突き立てられて恍惚の表情を浮かべる吉保、最後に自らの手で1番大事なものを壊す吉保…さいこー!

間部詮房

みんな大好き間部詮房(少なくとも私は間部詮房が1番好きです)1番最初に登場したシーンで即失脚する可愛らしい第七将軍家宣の側用人。読み返すとかなり序盤で登場していることが分かります。

間部詮房はなにか納得できないことがあると片方の眉を上げて片方の眉を下げた不満げな表情をしていて(なんて表現される表情なのか分からない…)、これは大奥の登場キャラクターのなかでは彼女だけでは?と思っています。とにかく感情とそれに伴う表情の変化が可愛らしくて大好きです。

赤面疱瘡

赤面疱瘡を治すために集められた人たち、青沼、黒木、伊兵衛、僖助の主に4人の男性が赤面疱瘡根絶のために戦うところ。よしながふみの男女逆転大奥は女性が将軍になるということで女性の物語と思われがちだけど、1番の物語の山場はここ(10巻あたり)だと思っています。

大奥は男性のセーフティネットみたいな面があって、お金が欲しくて、ここでしか生きられなくて、イヤイヤ連れてこられて、厄介払いとして…と様々な理由で大奥に入る男性陣が、そのなかで奮闘していく、この4人は時の権力者である女性の政治に巻き込まれ振り回される男性の象徴ですね。どれだけ頑張っても、どれだけ大きなことを成し遂げても、風潮、そして権力の前では塵のように捨てられてなかったことにされてしまう怖さ。

マイノリティの置かれている状況がリアルだなあと思います。

伊兵衛

「痛みが引けるまでこいつを眺めてるほうがマシだろ」と椿の花を渡した伊兵衛の優しさが好きです。「自分にはどうすることもできない」と悲劇に浸ったり、「見ていてつらくなるから」と放置して逃げたり、そういうことをしないのって結構難しいと思うので。

他人様の役に立つことをクソ喰らえと思っていた伊兵衛が、実はずっとずっと他人の支えだったこと。かっこいいなあと思います。そういう人間になりたかった~

平賀源内

源内さんと青沼の関係が好きです。ハイ。

源内さんと菊之丞さんの話、源内さんは黒幕が菊之丞さんだと気づきながらも菊之丞さんを受け入れる心情が分からなかった。「あたしゃこういう女なのよ、それでもいい?」ってあなたにこれだけ恨まれるような人間だけど、って意味なのかな。1人だけ赤面疱瘡根絶の答えを知っていて、おそらく菊之丞さん含め他のことも全部見えていて、それってどんな感覚なんだろう…と考えると源内さんの闇がちょっと深すぎる。

徳川治済

ここに来て初めて大奥作中で明確な「悪役」が登場します。これまでの悪役といえば春日局や徳川綱吉などですが、それぞれ悪役にも悪役なりの正義があり守りたいものがあり…という感じだったと思います。明示されているとおり治済にはそういうものがありません。

作中孫の家慶が治済の血を受け継いだと言われていましたが、全然別物だと思いました。治済は人の心(欲望)が無かったと思うけど、家慶はどちらかというと欲望まみれの人間という印象です。

徳川家斉

あまり好きではないですが、心情は想像できます。

毒親にしてもパートナーからのDVにしても、抜け出そうとすることで自分が信じてきた常識や感情が否定されるのはすごく怖いことだと思うので。後年、赤面疱瘡の予防接種を強行したのも、もちろん悪いことではないんですけど、そういうやりかたしか見てこなかった、見せてもらえなかった者の末路なのかなと思います。

誰のことも(特に女性)信用できなくなったことは、このあと出てくる家定と少し状況が似ています。誰も信用できないから頑なになってしまう。かといって、自分が死ねと言われてなお治済を助けようとしてしまう家斉に対し、御台が最初から暗殺計画のことを話したところでどうせうまくいかなかっただろうし…

あと、事なかれ主義が周囲から「優しい」って評価されるのってリアルだなと思いました。そして事なかれ主義の人は責任を取りたくないので、妄想ですけど治済がその後死ぬまで16年、自分からお見舞いとか行ってないと思います。

長くなってしまったので分けます。

あいざわ

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