見出し画像

音楽、辞めないで

”アイドルを辞めたとしても ステージに立てなくなっても 音楽だけは辞めないで”
大好きな女の子に、私は昨日そう言った

一生続けたいと思っていた音楽を 私は辞めた
3歳から中学生まで続けたピアノ 小学生の頃3年間やっていたクラリネット 高校に入って始めたギター 人生で音楽に触れていない時なんてなかった

高校生になって3ヶ月が経つ頃 母親が亡くなり、休学を余儀なくされる程に精神状態が著しく悪くなった。起きたら電気もつけずぼーっとして 適当にコンビニで買ったご飯を食べて また少し寝て ギターを触るだけ、本当に廃人みたいな生活をしていた時期もあったっけ
弱冠16歳、やっぱり女子高生らしいことはしておきたいし 迷惑もかけたくないし 重い腰を上げて軽音部の夏合宿と文化祭にだけは参加した。久しぶりにバンドメンバーとステージで演る音楽は紛れもなく楽しかった。まだぎこちないコピーバンドだったけれど、スタジオに籠りっぱなしで練習したり 見てくれる人がいる中で大きな声で歌うことが たまらなく好きだということに気が付いた。

真っ赤な浮かれぽんち文化祭パーカーのわたし
高校辞めたのに卒アルのど真ん中に載っていたらしい

それでもやっぱり精神状態がめっきりよくなる ということはなくて、退学せざるを得なくなった時 1人のバンドメンバーからグループLINEで”鬱なんて甘えだろ”と 一画面に収まりきらないほどの長文が送られてきた。理解されない苦しみと この負の状況から抜け出したい一心で、この頃からバンドのライブに通い詰めていた気がする。
好きな音楽と 体が震えるほどの爆音と もみくちゃなフロアに 脳も心もぐちゃぐちゃに搔き混ぜられて、今 この瞬間以外をすべて忘れてしまえる唯一の空間であり、私の生きがいになっていた。ライブこそが私を生きていると実感させてくれたし 段々友達も増えて ライブハウスだけが私の居場所になった。月10本以上ライブに行くことが当たり前になって、その為に働くようになって、辛い気持ちを紛らわせるために ではなく 楽しいからライブに行くようになった。私を人生のどん底から引っ張り出してくれたものこそがバンドなのだ

大人になるって無情なもので どうしても夢を諦めなければならない時が来る。私は 父が亡くなるまで音楽を続けていた。

沢山のバンドを組んでは、歳を重ねるごとに音楽を辞めていくメンバーたちや バンド活動に対する熱量の差で、自分の思い描いていたバンド活動はあまり出来なかった。それでも私は歌詞が書きたいし 曲も作りたいし 歌い続けたかったから、小さな事務所に入って個人的に活動を続けた。自分の曲ができて 歌詞をのせて レコーディングをして ローカルではあるもののラジオで自分の曲が流れて、すごく嬉しくて
でも、そんなタイミングで父が亡くなって 兄弟もなく 祖母や祖父もおらず 親戚も頼れない少し複雑な家庭だったから、これから1人でなんとか生きていくしかなかった。音楽だけでなく、好きなことをやるにはお金も時間も山ほどかかるし 音楽で食べていくって正直あまりにも漠然とした大きな夢すぎて 私一人では抱えきれないものだった
今でも家にギターもピアノもキーボードも置いてあるけれど 触ったらまた絶対に音楽を演ることに執着してしまうから。最早今となってはインテリアでしかなくなっている

そんな私の夢を、昨日改めて大好きな女の子に託してきた。
昨日はグループにとってすごく大切なライブで、最後MCでメンバーそれぞれがこれまでとこれからについて話す場面があった。
大好きなその子は以前も昨日もこんな話をしていた

「将来の目標はなんなの?」と聞かれて、「音楽を辞めないこと」と返したら、「そんなの無理だよ」と言われたことがあります。


運とか、タイミングとか、理由とか、ただそういうものが重なり合って、ここにい続けて5年。バンドをやりたいとか、ロックミュージックをやりたいとか、誰にも言えなかった夢。想像していた形ではなかったけど、夢が、かないました。

あなたもきっと、いつかわたしに会いに来なくなる日がくるだろうけれど、それでも言わせて欲しいのです。
わたしはずっと、ここで音楽を続けようと思います。

私の憧れであり 大好きな女の子は どうやら音楽を暫くは辞めないつもりらしい。私は彼女を追い続けることしかできないけれど、自己満足だけど、彼女の“音楽を辞めない”という目標を全力で応援したいと思った。私の抱いていた夢を代わりに叶えてくれるかもしれない希望だから

念を押すように 呪いをかけるように“音楽辞めないで” と目を見て伝えてきた。負担に感じていたらごめんね
音楽を辞めても、音楽を聴かないと生きていけないし 辞めた後は一生の未練だけが残るから、ギターを持って街を歩く人や 好きなバンドのライブに行く度音楽がやりたくなって でも一度辞めたものに躊躇いもなく手を出すこともできなくて とてつもなくもどかしくなってしまうから。

ステージに立たなくなっても もうあなたに会えないとしても 家で少しギターを弾くだけでもいいから、音楽を諦めないで 辞めないでいてね

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?