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風船

7歳の頃、うっかり風船を飛ばしてしまったことがある。ひゅるひゅるひゅる。尻尾は私を嘲笑うかのように空に舞った。

風船ごときで泣く年でも無かったけど、ただ湿った手のせいで自分から離れゆくものがあるという事実にパニックに陥った。

それから、手に入りそうなものは全てぎゅっと握るようになった。倍率の高い選考も、紐を腰に巻き付けて固くちょうちょ結びにすれば逃げていかなかった。

いま。私の目の前には無数の選択が広がっている。「中学生 校外」「中学生 留学」と検索していた時代はとにかく全てに手を出せばよかった。でも今は違う。自分をより良くするために、解かなければならない、そして、空に飛ばさなければいけない。風船はどんどんスピードを上げて高い空へと上っていく。持っているだけで褒められる風船。スパンコールがついてて目立つ風船。空へ放つのが惜しくなることあるだろう。放ったあと心が空っぽになって、世の中に独りぽっちになった気もちになることもあるだろう。

だけどやっぱり、飛ばさなければならない。自分の肌に合う風船で、自分だけの空飛ぶ家を作ろう。自分しか中には入れないのだ。自分の住み心地だけ追求すればいい。

家は別に飛ばさなくても良い。地上10mくらいで漂うのも良い。富士山より高く飛ぶのも良い。

風船は付け過ぎるとパンクする。ただゴムの材料を選ぶことはできる。膨らませ方も、材質も、すべて、すべて、自分しだい。

ひゅるひゅるひゅる、ひゅる。その音はやっぱり寂しくて、放すときにいつも私を惑わせる。それが離すべきものだったかどうか、そのときには分からない。

離す時の迷いはまだ消そうと頑張らなくていい。67歳位でできるようになればいい。ただ、自分の風の船を最高だと思う経験を、今のうちにいっぱいいっぱいためておこう。

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