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登った先にあるご褒美

暑い暑い夏の日。
背中に重い荷物を背負って歩いていく。登山に人気の丹沢は塔ノ岳だ。

渋沢駅からの始発のバスに間に合うように、眠い目を擦りながら小田急線に乗り込む。うつらうつらと眠りながら、いつもとは逆方向の電車に揺られる。

海老名を過ぎると緑が目立ち始め、目が覚める頃には山がすぐ近くまできている。

駅につき、西口のバス停から大倉行きのバスに乗る。気持ちもどんどん高ぶり、気がついたら大倉バス停につく。

バス停には登山者向けの施設があり、入山届けをだし、虫除けスプレーやヒル避けの塩を塗り込み、ツライツライ山路へと進んでいく。

塔ノ岳の山道はキツい。富士山が楽チンに感じられるほどだ。にも関わらず重い荷物を背負って山を登るのには訳がある。

じりじりと照りつける太陽。登るにつれ、強くなる紫外線。水分を取れども、あとからあとから汗として流れていく。身体が渇いていくのがわかる。

いくつかの山小屋を越えて最後の急な階段を登りきると、塔ノ岳の頂上である。

ただ、ここで終わりではない。

そこからさらに尾根を丹沢山の方に縦走していく。濃い緑色と目が覚めるような空の青さが視界に広がる。塔ノ岳山頂までの山道とは違い、ほとんど人がいないのも魅力だ。自分が自然と一体化したような気持ちになる。

いくつかのピークを越えると丹沢山につく。ここが目的地だ。

ベンチに腰掛け、重い荷物を降ろす。おもむろに保冷バックを取り出す。

火口をセットし、家で凍らせてきた肉を焼く。山頂にくる頃にはいい塩梅で解凍されているのだ。

ジュワジュワと肉が焼ける音を聴きながら、ここでもう1つ保冷バックから取り出す。

350ml缶だ。

プシュッ。

山道で揺られた缶から泡が飛び出してくるのを、こぼれないように口で受け止める。
肉が焼けるのも待てずに、ゴクリゴクリと渇いた身体を潤していく。

紫外線を全身に浴び、背中に楽しみを背負って山道を登ってきたからこそ、味わえる幸せが夏の山の頂上にはあるのだ。

自己投資という名の食材への出会いに使えればなあなんて思っています。