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女子選手は記号じゃない

こんにちは、しおりです。

https://note.com/shiburadi/n/n1c96a3cba7eb

1/31(金)放送の「Track Town SHIBUYA」様にて、私のnoteや意見をご紹介してくださいました。
話題は「女子選手の撮影について」です。

noteを始めたら必ず書こうと思っていたことなので、今回お話します。


ショックと閉鎖

「そういう」アカウントを初めて見たのは高校生の時。
たどり着いた経緯は覚えていない。
女子選手の身体の一部が拡大された写真が、卑猥な言葉と共にいくつもツイートされていた。
絶句した。
その人と繋がっている無数のアカウントも同じようなものたちだった。

陸上選手はとにかく格好良くてキラキラしていてリスペクトの対象だと思っていた私は、その卑劣さと数の多さがとにかくショックでとても落ち込んだ。

高校を卒業し表彰の写真を中心に撮っていた頃、選手や関係者に届いてほしくて写真をTwitterに載せた。
心配の気持ちも頭をよぎったが、選手がアップになったものではなく遠めに全体を映したものだったので大丈夫だろうと思った。

いいねの通知の中からなんとなく覗いたアカウントが収集アカだった。先ほどの私の写真が無断転載されていた。
そのアカウントは通報してすぐに消えたけれど、フォロワーが多く誰が保存しているか分からない。
選手に迷惑をかけてしまったことが本当に申し訳なくてツイートを全て削除した。

写真は1番に、ご本人やご家族、チームメイトに届いてくれたら嬉しいと思って撮っている。
そして試合を観ていた人にも観ていなかった人にも、写真だからこそ切り取れる会場の空気や選手の格好良さが伝えられたら嬉しい。

私にとって、Twitterは届ける手段。
でも載せたら悪用されてしまう。迷惑をかけてしまう。
深いジレンマに陥った。

市船の女子選手にはTwitterを使わずともマネージャーさんを通して写真を送ってもらえたが、他校には知り合いが全くいなかったので届けることができない。必然的に女子は市船しか撮らなくなった。
そして私のアカウントには市船含め女子の写真は載せなくなり、男子の写真だけになった。

しばらくすると、当時やっていた質問箱にこんなメッセージが来た。

「男子は他校も撮るのに、女子は市船しか興味ないですよね。やっぱり男目当てなんですか?」 

今ならば「そんな理由でこんな機材買わないわ!」と笑ってしまえるが、自分の活動にも写真にもあまり自信が持てていなかった頃なので
「ああ、考えて動いてもこんなふうに言われるならもう無理かも」と思った。

どこかでずっと張りつめていた糸がぶつんと切れ、Twitterも陸上観戦もやめようとした。
2018年三重インターハイ直後だった。

打開策の先に

その後色んな方がDMや連絡をくださり、踏みとどまった私は活動を続けることにした。(当時メッセージくださった皆さま、本当にありがとうございました。)

あのメッセージも完全なスルーはしないことにした。
悪意の読み取れる内容ではあったが、実際に私は悪用を恐れるあまり女子選手にほとんど触れなくなっていた。
発信をする立場としてそれはおかしいし、市船以外にも千葉の高校女子はたくさん頑張っている選手たちがいた。どうにかして女子選手のことも取り上げたかった。

しばらく悩んだあと、女子選手は鍵垢を作りそちらに載せることにした。基本的には知り合いのみしかフォロー許可をせず、DMをくださった方はフォロー欄やいいね欄を全てチェックして問題がない人のみ承認。
また、オフショットの多くもそちらに載せることにした。

これで私の言葉も一緒に添えられるし、本人や関係者にも届く。最善だと思った。
女子選手から撮ってほしいとDMをいただくことが増え、交流のある選手も増えた。

でも奥の方で何かがひっかかった。なにか変だ。
違和感の実体を掴めないまま、私は観戦を続けた。

違和感の正体

先日石塚晴子ちゃんとお会いした時、女子選手の写真の話をした。

身体の一部のみをアップにしたり顔が切り取られた画像たちを、彼女は「記号」だと言っていた。

「女の子」、「陸上選手」、「セパレート」、「女子高生」、「ユニフォーム」……

選手たちは一人ひとり生きた人間で感情やストーリーを持っているのに、収集家たちはその1番表面の「記号」しか見ていない。
想いを込めて撮られた写真たちも、裏側の物語を想像することもなく記号として無断転載される。

だから気持ちが悪いし、踏みにじられたような気分になるのか。
納得と同時にひとつ疑問が生まれた。

私は鍵垢を作って非公開で女子の写真を載せている。悪用を防ぐために。
でも、本来頑張っている姿はとても尊いもので、そこに性別は一切関係ないはずだ。

どうして女子だけ隠さなければいけないの?
ただ競技にひたむきに打ち込んでいるだけ。ユニフォームは記録を出すために効率が良い形なだけ。
それなのに、なぜ搾取されなければいけないの? 彼女たちが何か悪いことをした?

それはずっと感じていた違和感の正体だった。

あくまでも撮影側が気を使うのは当たり前であって、掲載の仕方にも工夫した方が絶対に良い。映っているのは自分ではないのだから。

でも選手たちは何も悪くない。大好きな陸上競技と向き合っているだけだ。
その姿を見せてはいけないもののように隠すことに、私はずっと違和感があったんだ。

私たちに何ができるか

結局ここまで書いておいて、未だに答えは見つかっていない。
隠すのはおかしいから積極的に女子選手の写真を載せよう、ではないと思う。それは根本的な解決ではないし、悪用のリスクは避けられない。今のようにアカウントを使い分けることが現時点では最善だと思っている。

写真を撮ることはひとつの応援の形。
だが、選手のために撮影が規制されるのは仕方ないことだ。最優先されるべきは私たちではなく選手の安心、安全なのでそれは当然である。

以前仕事で行けなかった試合で盗撮騒ぎが起き、かなり荒い言葉でツイートしてしまったことがある。
それを見てDMをくれた女子選手がいた。

「盗撮事件、とても悲しいです。」

「競技をしている立場としてはこのままでは怖いし、応援してくださっている人に紛れてそういうことをしているのなら憤りを感じます。」

「競技の写真を見ることがとても好きなので、撮影自体が全面的に禁止になったら不愉快ですし悲しいです。」

「一刻も早く犯人が捕まって、好きな陸上をしたいです。」

彼女の切実な言葉たちは胸に深く刺さった。
不安に決まってる。そんな状況で競技をしないといけないんだ。
私にできることはないかな、と考えるきっかけにもなった。

撮影者が増えていく中、少しずつ撮影ルールも増えつつある。
個人的には、各試合でルールを統一して共有していただけたらとても助かる。
本部に許可が必要なのか、それはどこで手続きができるのか、撮影禁止エリアはどこか、ホームページ等に記載がなく戸惑ってしまうことも少なくない。地域によっての違いもある。

また、競技場での試合と駅伝のロードレースでも状況は変わってくる。大きな大会では沿道に人がごった返し、ファインダー越しは非常に視野が狭い。選手は自分の目の前を走るので、更に注意を払わないといけない。

まず公表されているルールを必ず守ることが、選手の安心につながると思う。
盗撮目的ではない撮影の場合も、ルール違反があれば注意をされて当然だし撮影自体が禁止になってしまう可能性も高い。
撮影者がルールを守れば選手たちの不安も減るはずだし、補助員の方々の負担も軽減されより盗撮犯などを見つけやすくなるかもしれない。撮影者の立場も守れると思う。

また、ルールが公表されていなくとも自分たちで想像したり拾いにいけることはたくさんある。
これは自分に対しての戒めでもあり、書いたからには私も必ずルール内での撮影を行っていきたい。

私のジレンマは今も解決していない。
だが選手が安心して競技を行い、私たちが撮る応援を続けるための第一歩はこうしたところからだと思う。

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