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顧客を動かす「アイデア」の作り方

〜顧客起点マーケティング Part 9〜
今回は、顧客起点マーケティングにおける「アイデア」の導き方について解説します。

古典と言われる様々なマーケティング理論に関するセミナーや勉強会が開催されていますが、実務の現場において、その理論が明確に結果を導いたケースは何例あるのでしょうか?理論整然と説明され、マーケティング戦略がどんなに洗練されているように見えても成功していない事例はいくらでも見つかります。一方で、理論的な説得性に欠けていても、人を引きつける“何か”がある大成功事例は皆さんの周りでもたくさん見つかるのではないでしょうか。この差を生み出しているのが「アイデア」です。

「アイデア」という言葉は、発想やひらめきという意味合いで使われることが多く、特定の人しか持ちえないクリエイティブ的な才能と扱われがちで、明確に定義されていませんでしたが、その意味を定義し言語化することでマーケティングは飛躍的な結果を出すことが可能になります。M-Forceでは、多くのクライアントの「アイデア」発見をサポートし、既に多くの成功事例を生み出していますが、ここでは「顧客起点マーケティング」で紹介されている「アイデア」の導き方を紹介します。

2004年発売の「肌ラボ」は、ヒアルロン酸を高濃度に配合しており、しかも1000円前後と非常に安価でした。当時の基礎化粧品の市場はコモディティ化しており、資生堂、カネボウ、コーセーなどの大手メーカーが、女性タレントを使ったイメージ訴求や洗練されたパッケージのデザイン性などを打ち出して寡占していました。
顧客が求める化粧水としての浸透感を演出するために、肌にはあまり良くないはずのアルコールを配合した商品もあるような中で、成分にこだわり抜いたロート製薬の「『肌ラボ』極潤」というプロダクトは目立っていました。粒子の大きなヒアルロン酸の高濃度配合を特長としながら、そのために、肌への浸透感は高くなく、ベタつきを感じさせ、パッケージもデザイン性を無視したような文字だらけの仕上がりだったからです。訴求も、「ヒアルロン酸がたっぷり入った化粧水」「製薬会社がまじめに作った化粧水」などと典型的なメーカー視点で、決して顧客目線とは思えませんでした。
2006年時点で、年間20億円程度の売上で伸び悩みながらも、携わっていたマーケティング部員たちは「もっとポテンシャルがある」と感じていました。そこで、商品企画部と広告制作部も共同で、実際の顧客へのインタビュー調査を行いました。すると、一人のお客様がベタつきと安さを褒めながら、笑顔で「頬が手にくっつくくらいベタベタする」と、その場で商品を使って手が頬にくっつく様子を示したのです。さらに、「ベタつきは好きではないが、これが保湿されている証拠」と力説されました。実際に、ベタつくほど肌表面を保護するからこそ、保湿力が高い商品だったのです。
これが、その後に「肌ラボ」を化粧水No.1まで押し上げた「手に頬がくっついて離れなくなるほど“もちもち肌”になる化粧水」という「アイデア」の創出でした。この「アイデア」をマーケティング訴求に変換し、年間160億円の売上規模まで伸長し、アジア各国に導入するに至った最大の理由でした。1人のロイヤル顧客の「行動」と「心理」と「きっかけ」を洞察することで、圧倒的な成長に繋がる「アイデア」が生まれたのです。

実務の現場では、どうしたら売上が上がるのか? 利益が上がるのか? どうすれば顧客が増えるのか? と、誰もが頭を悩ませています。しかしながら、アイデアを出すために大勢で集まってブレストやディスカッションをしても、有益な案は見つかりません。その理由は、ブレストで想定する顧客像に具体性がないからです。

商品やサービスに、届けたい顧客がいる以上、強い「アイデア」を導き出すには、実在する一人の顧客を深堀りすることが唯一有効な方法です。顧客分析のフレームワークでTAMを把握して「どのセグメントの顧客を深堀りし、何を知りたいのか」=N1を設定することが出発点です。具体的なN1設定をするからこそ、具体的な「アイデア」に繋げられるのです。

「アイデア」は、一部のトップマーケターやクリエイターのひらめきでしか生み出せないものではありません。手順を踏むことで、必ずその糸口をつかむことができます。一方で、「アイデア」は合理性や理論だけで創出できるものでもありません。人の「行動」は、合理性だけでなく、認知、心の動き、深層心理の変化=「心理」に左右されるからです。競争を抜け出し、際立った成果を上げるためのすべてのヒントは、一人の顧客の心理洞察にあるのです。

書籍紹介
たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング(MarkeZine BOOKS)
1000人より1人の顧客を知ればいい。P&G、ロート製薬、ロクシタンを経て「スマートニュース」をアプリランキングで100位圏外からNo.1へ伸ばした著者が確立した「顧客ピラミッド」「9セグマップ」「N1分析」を全公開。

M-Force株式会社:
すべての「モノ」「コト」「サービス」を顧客視点で捉えることで顧客にとって価値があるものへと進化させ、「マーケティングを、経営のチカラに。」というミッションを実現するために様々なブランドを支援しています。
https://mforce.jp/ 


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