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天国と地獄を感じた「北海道」

くそほど眠い目をこじ開けて通勤電車に揺られているわけだが、満員電車で触れたくもない他人の汗にただ耐えるのも癪なので、なんか書くか、とスマホを開く月曜朝7:53。

まだ朝なのに充電43%。
頑張れ、私のiPhone8。
お前にはまだ死なれたら困る。



人生たかが26年、されど26年生きていると色んな事象が起こる。嬉しいことも、悲しいことも。色んな意味で「終わった」と思うことも。

3年前の夏、幼なじみと訪れた北海道もそうだった。

私がこの世の不幸を詰め込んだような顔つきで生きていたためか、彼女は私を外界に連れ出そうとLINEをくれた。
2泊3日で北海道に行こう、と。
正直外の空気を吸うだけで疲労困憊な私には酷なお誘いだったけど、幼なじみの誘いだし、北海道は好きだし、このままじゃいかんという気持ちもあったし、許諾。

北海道は車がないと不便だが、私はペーパードライバー。どっちがアクセルとブレーキかだけ教えてくれれば運転できるよと言ったら「…カーナビと音楽よろしく!」と言われた。懸命な判断だ。

こうして始まる北海道ドライブ旅だが、この車で後々やらかす。

北海道には夜パフェという文化があって、お酒やご飯のシメにパフェを食すらしい。なんて素敵な文化。大都会トーキョーにも出店する有名店で食したパフェは、なんともオシャレで、なんとも美味だった。

浮かれポンチで車を停めていたパーキングに戻り、何の躊躇いもなく助手席に私、運転席に幼なじみ。

幼なじみが慣れた手つきでパーキングを出ようとすると、

ゴリゴリゴリ、と嫌な音が響いた。
やったな。
日頃運転しない私でもわかる。
レンタカーがえぐれるかと思うほど駐車券を入れる機械にゴリゴリにぶつけた。

車内のはこの世とは思えないほど静まり返り、2人とも頭の中は主に2つの考えが巡っていた。
「レンタカー会社とパーキングの会社にいくら請求されるだろうか」
「これ以上キズをつけずに駐車券の機械から離れるにはハンドルをどう切ればいいだろう」

ペーパードライバーがハンドルの切り替えし方がわかるはずもないのだが、幼なじみもテンパっているし、私もテンパっているし、「一回左に回してバックして〜」とかほざいてしまった。アクセルとブレーキの区別もつかないくせに。

私の言葉を無視して(やはり懸命な判断)幼なじみが試行錯誤した結果、車は動かなくなった。

前にも、後ろにも、車が動かない。
どうやら何かに挟まっているらしい。
どうする、一体どうしたら。
途方に暮れる2人の24歳。

捨てる神あれば拾う神あり、というのはまさにこのことで、偶然どこかの警備員のおじさんが通りかかり、ハンドルの切り返し方を教えてくれた。
しかしおじさんもよく分からないらしく、進展なし。お気持ちだけもらっておきます。
そして2人目の神登場。
パーキングに停めていた家族が戻ってきて、駐車券の機械で右往左往する我々にお父さん的男性が手を差し伸べてくれた。

運転席に乗ったこの男性は、いとも簡単にハンドルをクルクル回し、車のキズを広げることなく駐車券の機械と仲良しこよしだったレンタカーを引き剥がしてくれた!god......

ヘドバンを思わせる首つきで謝罪と御礼を申し上げ、ご家族が去っていくのを見送り、警察に連絡。物損なのでね。前科持ち?とか考える余裕があったのは、ここまで。

警察を待つ間に、とてつもない腹痛に襲われた。パフェか?その前に食ったジンギスカンか?日頃まともな食事を摂っていないくせに旅行だからと食いまくったツケが回ってきたのか。冷や汗が止まらない激痛に悶えながら、幼なじみに「ごめんお腹痛い…警察きたら対応お願い…」とコンビニを探し歩いた。
1人にされて幼なじみはさぞ不安だったろう。ごめんな、本当に。だがここで漏らしたら君との関係は終わっていたし、警察は下の面倒までは見てくれないし、とにかくすまんと思いながらセブンイレブンに駆け込む。

結論、何も出ない。お腹は痛いまま。これ以上幼なじみを1人にしておけないと腹を括りパーキングに戻ると、警察が来ていた。簡単な書面に記載して、気をつけてねと優しく送り出してもらったが、私そんなことより腹が痛い。
幼なじみは安堵の表情で「どうなるかと思ったよ〜」と言っていたが、私はまだどうにかなりそうだった。

腹の痛みは絶頂を迎え、友だちに「そこのセブンに行きたい!腹が死ぬ!!!!」と申告。
駆け込みトイレ。本当にギリギリセーフ。コンマ1秒遅れいていたら醜態を晒していた。

やりきった顔でセブンイレブンを後にし、やっと2人揃って安堵。
やばかったね、とか、あの時あの男性いなかったらまだパーキングだよ、とかケタケタ笑いながら。喉元過ぎればなんとやら。

宿泊するホテルに着いたのは0時前だった。駐車場に停めて、車を出ようとしたとき。

待って。
鞄がない。
財布とスマホが入った鞄が、ない。 
助手席にも後部座席にも、ない。

またも冷や汗。
瞬時に駆け巡る思考。
忘れたとすればあのセブンイレブン。
しかし片道2時間の道をどう戻る?
幼なじみにまた運転させる?そんなことさせられるか。
とりあえずアクセルとブレーキがどっちか教えてもらおう。
ここまでおよそ3秒。

震える声で来た道を1人引き返すことを告げると、幼なじみが「もう一回車の中探そう…!」と。
ほぼ半泣きで車の中を探す私、心配そうな幼なじみ。

そして、絶対ないよと思った助手席の下の奥の方に、鞄らしきものが。
引っ張り出して、鞄と確信したとき、あった!と声にもならない声で幼なじみに告げた。

「よかったよ本当に!」と幼なじみも一安心。私もホッとして力が抜けそうだった。ふと空を見上げると、明かりのない北海道の山奥だから見られる、満点の星。綺麗だった。たぶん私たちは誰よりもこの星を綺麗だと思えている、そう2人で話した。

車を擦り、貴重品を失いかけ、ボロボロの心に、あの星空はなんとも美しすぎた。


ちなみに部屋に入ると、私の誕生日を祝うケーキとシャンパンが用意されていた。

幼なじみ、君って天使か。

熊本では何事もなく旅行を終えたい。

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