訴訟を提起する前に知っておくべきこと・ただしておくべき誤解・検討しておくべきこと_「感情を優先するか、勘定を優先するか_顧問弁護士実務大百科>企業法務大百科

訴訟は、
「感情を優先するか、勘定を優先するか」
という思考優先秩序に依存します。

1 感情を優先する

このまま泣き寝入りは許せん、というのであれば、
1)あれこれ裁判外で仕掛ける
2)正々堂々と訴訟を仕掛ける
の2択しかありません。

(2)は、莫大な資源動員が必要となりますし、かつ、動員資源に見合う期待値は、経済的に成立しません。

このあたりは、拙稿「ケース29:訴訟のコスパ やられたらやり返すな!」をお読みください。

となると、コスパのいい(1)ということになります。

・面談をもちかける:
相手はそれに応じてくれるのか(相手に、こちらのゴール達成に協力をさせるような強制の契機が存在するのか)

・誰かを仲介にして面談に来てもらう:
お願い筋の話であり、このようなメッセージを発すること自体、「(そちらがあっかんべーして、それ以上話が進まなくなってしまっていて、)困っているから助けてくれ」というこちらの状況を伝えるに等しく、ますます、相手をいい気にさせ、増長させるだけではないか

・有力者(たとえば国会議員)あるいは権力機関(たとえば監督官庁)とのネットワークを活用する:
上記と同様な場を設定することも、いまどき、そんな昭和の香りがするやり方で、相手をやり込められるのか

・特に国会議員を動員するのは、
(ア)使えない国会議員を動員するのは時間の無駄だし、
(イ)力があって使える国会議員を動員するのは反社会的勢力に借りを作るのと同じで、たいていロクなことにならない(という経験則)

・こういうショートカット、ファーストトラックを使うのは、本筋できちんとした根拠がなく、正道で戦えないから、邪道を求める、ということが多く、うまく機能せず、結果、相手が、このような動きを察知した上で、なお、さらに、あっかんべーを崩さない、という態度に出た場合、「釘を刺す」どころか、「より、バカにされ、なめられ、軽くみられる」というアイデンティ構築戦略としては、「やらなかったほうがマシ」という悲惨な結果を招くリスクがある

といったことが懸念されます。

そこで、内容証明を出してみたり、するとしましょう。

ですが、これも相手がしっかりと対応できる弁護士をつけ防衛体制を整備してしまえば、当方としてはすべて打ち返されてしまいます。

さらに行動をエスカレートさせると、今度は、攻守が変わりかねません。

結局、
「気持ちが収まらない、しかし、気持ちを収めようとして訴訟をしたいがカネがもったいない」
というジレンマに陥ることになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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