『藪の中』 芥川龍之介 作

藪に残された死骸…殺しと強姦の吟味。
〈不確実性〉に隠された「欲」、
邪悪と正直の共存にフォーカスする。

「検非違使に問われたる木樵の物語」
「検非違使に問われたる旅法師の物語」(3'25"~)
「検非違使に問われたる放免の物語」(5’32“~)
「検非違使に問われたる媼の物語」(7’12”~)
「多襄丸の白状」(9'40"~)
「清水寺に来れる女の懺悔」(21’10“~)
「巫女の口を借りたる死霊の物語」(28’25”~)。
検非違使に応えているのはー
木こり、旅の僧、放免、真砂の母、多襄丸の5人であり、
真砂・金沢武弘夫婦は其々一人語りである。
聴き手がいるのか、判然としない。
名高い盗人・多襄丸の白状する「宝」に欲を丸出しにした夫婦の姿。
どちらかと言えば夫にその傾向が強い。
しかし夫婦の語りは共に、多襄丸による強姦罪から始まる。
何故ゆえ、藪の中に入り込んだかーその愚かしさは語らない。

『藪の中』の発表は大正11(1922)年、「新潮」新年号。
芥川は同年、
4誌(新潮・改造・中央公論・新小説)の新年号に登場し、
一つの絶頂期を迎える。
又、この前年には新聞特派員として上海に渡っている。
混沌とした大陸も又
「確かなモノなどない現実」と「欲望と渇望」の渦であったろう。

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