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妄想レィディオ #31

~あの放火ビルの2階で営業していました~

午前0時を回り、今夜も始まりました「夜な夜な倶楽部・妄想レイディオ」
今晩は、DJのKUNIです。
毎回、ボクの独断と偏見で気になるニュースを取り上げ、そのニュースの内容をキッカケに、知的で、お馬鹿な、お気軽トークを繰り広げます。
番組の命綱は、この一台の電話だけ。
(SE:リリ~ンと、電話が鳴る音)
リスナーの方とこの電話を繋いで、KUNIとのお喋りと、素敵な音楽で、朝までお付き合い下さいませ。
さて、去年の12月17日、大阪・北新地のビルで放火事件があり、実に25人の方が犠牲になりました。その忌まわしい事件から、間もなく3か月が経とうとしています。お亡くなりになられた皆さんの遺族の方々の悲しみは、これだけの期間で決して癒えるものではないと思います。そうした方々の“その後”の取材は、もう大メディアに任せるとして、確かに、死傷者は出なかったものの、大きな経済的損失を受けた、心理的ショックを受けたと言う方も大勢おられます。しかし、なかなか大メディアでは取り上げらることはない。ならば、この妄想レィディオにお招きしようと思った次第であります。
・・・って、今回は、珍しく社会派な内容やね~。
さぁ、早速、そのゲストをご紹介しましょう!
株式会社CLOCKの代表取締役・村上剛さんです。
こんばんは!

「こんばんは」

村上さんは、英会話教室を4つ運営されていて、そのうちの一つの教室が、あのビルに入居されていたんですって?

「そうです。西梅田教室が、あのビルの二階。事件があったのは四階でしたので、その二つ下の階で英会話教室を、我が社としては三店舗目として
2015年から営業していました」

火事の一報はいつ聞かれたんですか?

「10時半くらいですかね?別の教室にいました。もちろん『えぇ!?』とは思ったんですが、あのビルって、少し変わっていて、ガス管はありましたが、ガスが通っていなかったんですね。だから、もともと火の気はないので、ボヤ程度だと思っていました」

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今、村上さんのお写真を拝見しているんですが、これは「梅田校」と言う文字が見えるので違う教室かと思いますが、オシャレですね。

「EnglishCaffeと言うコンセプトですから」

しかし、あのビルには、ガスが通っていなかった。これは初耳でしたが、そりゃ、最初はボヤだと思いますよね。

「でも、Twitterで検索すると、モクモクと煙があがってるし、現場に行ったら、もうもう騒然としていて・・・」

現場に駆け付けられたのは、何時?

「11時頃です。救急車とか消防自動車が何台も止まっていて、被害に遭われた方が、運び出されてるところでした。まだ規制線も敷かれていなかったし。もう驚きましたね。本当に、もう凄惨な状態だったんで、本当に見たことのないような・・・」

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教室は何時から?

「その日は、11時45分に社員が入ってくる予定だったんです。ですから、社員は、中にいないことは分かっていたんで、そこは落ち着いて、その場から、スタッフに連絡をしました。」

生徒さんは、何名くらい通われていたんですか?

「300人です」

そんなにおられるんだ。

「でも、その日のうちに、月末まで休校します、と伝え、他の教室への振り替えをお願いしました」

その時点では「月末まで休校」と伝えたんですね。

「まだ被害の全容が分かっていなかったのでね。でも、被害の詳細が分かると、生徒の皆さんが、あそこのビルの教室でレッスンを受けようとは、もう思わないだろうな、と思いましたね」

実際に2階の教室に入られたのは?

「翌日に、警察の方と一緒に」

どうだったんですか?

「煤の匂いが、充満していて、下には、消火活動による水溜まりができていました。火災の被害はなかったです。火は上に行くんで。しかし、水は下に行くんで、水たまりが出来ていたわけです」

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どう思われましたか?

「もう呆然とするしかないですよ。もうなんか、こう無力感というか・・・、うん、なんか、もう立ち尽くすしかなかったです。」

怖くはなかったですか?

「このビルって、どのフロアも同じ作りなんですよね。ですから、エレベーターの前に立った時に、あぁここで、容疑者は、ガソリンを倒したんだな、とか、この回りにおられた方々は、皆、どんな気持ちで奥に向かわれたんかな?とか、最後、煙が充満する部屋で、皆、どんな気持ちだったのかな?って思うと、手を合わすしかない、やっぱり祈るしかないですよね。」

そうなんでしょうね。しかし、そんなお話の後で、敢えて聞きますが・・・保険金は下りるんですよね?

「見積もりはしてもらったんですが、かなり少額かと。まぁ、もともと火の気のないビルだったんで、掛け金も低かったんですが、水浸しになった部分だけの保証なんです。物理的に被害を受けた部分だけ。煤の匂いも考慮されません。人によって感じ方が違うからと言う理由だそうです。また、多くの方々が亡くなったビルだと言う心象も考慮されないんです」

そうなんだ。ある種の保険の限界と言うことなんでしょうね。
しかし、村上さんは、スタッフから渡されたメモによりますと、「2月1日には、新しく移転した場所で、西梅田校での授業を再開するぞ!」といち早く宣言され、実際に12月中に、新しい物件を見つけ出したそうですね?
そのわけは?

「まず、何としても従業員の雇用を守らねば、と言う気持ちからですよね。そして年内に、とにかく明るいニュースを従業員に聞かせてあげたいと言うその一心ですよね。生徒さんからも、どうなるのか不安ですっていう声が多かったですし、従業員からも、今後どうなるのか不安ですってことで、とりあえず、その28日までに、うち、年内の最終営業日が28日やったんで、28日までに、何とか、新たな物件を見つけだして、入居のオッケーをもらいたかったんです」

事件が起こったのが12月17日、実に10日余りでの作業だったわけですね。

「実際に動き出したのが22日から23日ぐらいなので、5日間ぐらいでの出来事ですね。仲介屋さんに依頼する、ネットを検索するのはもちろん、西梅田の周辺を、寒空の下、歩き回って、『部屋貸します』の貼り紙を見たら、片っ端から電話していました」

で、良い物件が見つかったんですか?

「やはり、うちの経営状態から言うと、これまでの賃料を上回るような物件を借りるのは難しい。しかし、あのビルは古かったので、梅田から近いと言う立地の良さからすると格安でした。一方で、この立地の良さと言うのも捨てられない。さらに、これまでの物件とは異なり、二方向避難出来る場所、と言うことを条件に探していました。すると、あのビルよりは、2分ほど梅田からは離れますが、さほど遠くなく、賃料もさほど変わらない、二方向避難も出来ると言う物件を見つけたんです。しかし、その分、やはりスペースが随分小さくはなりましたが」

いずれにせよ物件は年内に見つかった。しかし、新しい教室のオープン予定は2月1日。英会話教室ですから、そんな特殊な機材などを入れる訳じゃないだろうけど、それって、間に合ったんですか?

「普通であれば、例えば、内装屋さんと打ち合わせをして、デザイナーさんと打ち合わせをして、そして、資材を取り寄せて・・・とか、すごく時間がかかって、大体2か月ぐらいかかるんですよ」

ですよね?じゃぁ、間に合わない。

「そう!そんな時間は無いんで、もう全部自分でやったんです!」

なんと!自分で!!村上さんは、DIYは得意だったんですか?

「いえ!初心者」

よく、やりましたね?

「KUNIさんは、平安伸銅工業株式会社さんって、知ってはります?」

確か、“突っ張り棒”の会社ですよね。

「そう!大阪の会社です。そこに、飛び込みで入って、こんなことをしたいんで、教えて下さいって、頼み込んだんですよ。もちろん、最初は『なんや?』と言う怪訝な顔をされましたが、経緯を説明すると、『それは難儀なことですね』と、ご協力いただき、展示に使っていたような突っ張り棒をご提供いただけたんです。その突っ張り棒を活用して、テーブルとテーブルを仕切るパーテーションや、講師控室となるような間仕切りを、ほんと数日で完成させることが出来ました」

DIYで!?

「そうDIYで」

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凄いな!
しかし、これまたお金の話で申し訳ないけれど、新しい物件を借りるには、保証金も要りますよね?

「はい!まぁ、新車を買うぐらいは」

一方で、元の教室が入っていたあのビルに預けていた保証金は?

「まだ、どうなるのか、分かりません。返ってくるのか、まぁ、返ってくるとしても一部でしょうが、今のところ、そうした話は一切ありません」

となると、現時点では大きな出費だけが発生したわけですよね。そんな費用をかけ、さらに、そんなDIYをしてまで、教室を急ぎ移転させると言うことに、どんな意味があったんですか?

「まぁ、この現状を何とかしたいっていう“思い”だけで、やってきたんですが、ここで、もうええわとか、くじけちゃったら、凶悪犯罪に屈したことになるじゃないですか。ああいうことをする奴に負けた、負けっぱなし、やられっぱなしは、悔しいと思って。やっぱりなんか、本当ににここで投げ出したら、凶悪犯罪に負けたことになるんじゃないかな、肯定することになるんじゃないかなって思ってやってきました」

なるほどなぁ。村上さんは村上さんならではのやり方で、あの容疑者と闘っていたんですね。さて、そんな努力の甲斐あって、西梅田教室は無事2月1日に再開出来たんですよね。さぁ、皆さんの反応は?

「生徒さんは、『こんなに早く!』と喜んでいただきましたし、講師の先生方も、それまでは、他の3校に分かれてレッスンをしていただいていましので、『また同じ場所で一緒に働ける!』と手を取り合っていましたね」

うん。うん。その光景が目に浮かぶなぁ。
さて、事件からここまでを振り返り、今、どう思われていますか?

「本当にもう日々感謝ですね。毎日、毎日、ちゃんと職場に行ける。その職場があって日々仕事ができるってことに感謝しないといけないなって思いながら、毎日仕事しています。そして、様々な支援をいただけたことにも感謝ですよね」

様々な支援と言うと?

「先ほども申し上げた平安伸銅工業さん。商品提供だけじゃなくて、『頑張ってくださいね』っていうお声いただくことが、力になりました。あと取引のある出版社さん。『大変でしたね』と、いつも購入してる教材を何十冊も寄贈していただいたり。あと、知り合いの不動産屋さんが、仲介手数料を半額にしてくれたりとか。また、様々な場所で、生徒さんたちからもお見舞いのお菓子を頂戴したりして。現場のスタッフや先生方は、そうしたお菓子を食べて、勇気づけられたみたいですね。単に甘くて美味しいだけじゃなくて、やっぱりそこに込められた“気持ち”っていうのがありますからね。本当に、悪い世の中とちゃう。ホンマに悪い世の中じゃないんですよね。ですから、何とか前向きに過ごしていきたいなと思いますね」

そうなんですよ。決して悪い世の中じゃない。それだけに、今回被害にあった方々の無念はいかばかりかと、心は痛みます。でも、でも、我々はやっぱり、世の中の良いところに目を向け、ポジティブに行きたいですよね。
村上さん、今日は、前向きなお話し、ありがとうございました。

「こちらこそ、僕のこんなお話を取り上げていただきありがとうございました。」

では、最後に、今日は、この曲でしめくくりましょう。
世の中は決して悪くないのです。
ルイ・アームストロングで「What A Wonderful World」「この素晴らしき世界」♪です。
皆さん、おやすみなさい。また、良き明日、良き朝をお迎え下さい!(了)

※参考:
English Cafe CLOCK:
https://www.englishcafe-clock.com/

平安伸銅工業株式会社:
https://www.heianshindo.co.jp/


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