三題噺 34 秋のひ

秘密 コーヒー 焚き火

 彼と並んでのんびり焚き火を眺める時間は、最高のひとときだ。
 パチパチと、火の粉が跳ね、木から独特の匂いがする。
 松や、杉の木は油分を持っていて、燃えやすいと教えてくれたのは彼。
 空気を含ませるように丸めた新聞紙と、細かくした木の屑と、大きな薪を組み上げて、火をつける。
 冷える秋風を背中に感じながら、お腹はボウボウと燃える火に温められる。
 この感じが好き。
 焚き火の火で沸かしたコーヒーを飲みながら、火と、火に向き合う彼を見つめるだけで楽しい。彼はそのささやかな楽しみをより大きくしてくれる。
 「ほら、出来たよ」
 火箸で取り出したのは、アルミホイルに包まれたサツマイモ。
 切れ込みを入れて、バターを仕込んだ逸品だ。
 「やっぱ、秋は焼き芋だよなぁ」
 指先を火傷しそうになりながら、ホイルを剥き、ホクホクと食べる。そして、ホッと吐く息の白さに冬が近い事を感じる……。
 そのまま、焚き火を見つめて、ただぼんやりとした時間を過ごした。
 ……おならしてしまったのは秘密。
 だってお芋食べたから。

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