2014年12月の記事一覧
act8 : Once upon a time
◀第1話 act1 : Sun. Dec. 17th から読む
──私は、自分の名前が嫌いでした。
最初にそう思ったのは、小学生の頃だったでしょうか。
「『りん』の名前って、むずかしい字をかくんだね」
長い休みのたびに、先生から返却される通知表。
そこに記されている私の名前……『凛』の字を見ては、クラスの人たちに口を揃えて言われたものです。
自分の名前に使われている字を、何気なく辞書で調べた時。
act9 : One more chance
◀第1話 act1 : Sun. Dec. 17th から読む
目覚めた時、私は薄暗い部屋の中に居ました。
打ちっ放しのコンクリートで囲まれた室内。
そこに窓はなく、自分の居場所はおろか、今が朝なのか夜なのかさえも判然としませんでした。
私は後ろ手に縛られていて、目の前には何人かの男女がいて。
私の起床を待ちわびていたらしく、彼らは飢えたような視線を注いでくるのでした。
彼らは、自らを「傀儡」
act10 : Sun. Dec. 24th
◀第1話 act1 : Sun. Dec. 17th から読む
ぶつん、と。終わりを告げる音がした。
世界にノイズが散らされる。
音と光の錯綜は、激流となって感覚を焼いていく。
「──っ、あ、ああ、」
どこかで誰かが呻いていた。哀しそうに、叫んでいた。
「──ああああああああああああ!!」
頭の内側が、膨れ上がって破裂しそうな錯覚。
ひび割れそうなほどに鋭い痛みが、身体の中心に走った。