春田康吏(HARUTA Yasushi)

愛知県生まれ。日本福祉大学通信教育部卒業。 難病のため気管切開。酸素吸入や人工呼吸器を…

春田康吏(HARUTA Yasushi)

愛知県生まれ。日本福祉大学通信教育部卒業。 難病のため気管切開。酸素吸入や人工呼吸器を使いながら、 現在、日本福祉大学グループ企業で在宅勤務中。

マガジン

  • 春田康吏のラボラトリー-シーズン2-

    週1回更新。毒にも薬にもならないサプリメントのような文章を心がけています。自分の好きなことしか書きません。

  • 月刊マイノリティマガジン

    • 2本

    障害にまつわる問題に身体障害者であるTaroと春田かリアリズムの視点で発信していきます。

  • 春田康吏のラボラトリー

    文芸Webサーチ公式メールマガジン「B-Search NEWS」の連載「春田康吏のラボラトリー」 ※尚、メールマガジンは現在廃刊しています。

  • 短編小説

    オリジナルの短編小説です。

  • 創作童話

    私が書いたオリジナル創作童話です。

最近の記事

#6「キーボード選びから解放された-一生物HHKBと出会った奇跡-」

これが最後のキーボードになるだろう。たぶん。 20年くらい様々なキーボードを試してきた。太陽パネルが付いた電池不要ワイヤレスキーボードなんてのもあった。 まあ一つ一つそれはそれで愛着があったわけだけど、一生付き合っていくぜ的に思えたものはなかった。 昔から、HHKBの存在は知ってはいた。 ただ、Lite2を買ったことはあって、良いとは思えなかった過去がある。 それが呪いとなって、なかなか本家本元に手を出せなかった。 何よりその値段の高さが行く手を阻んでいた。 それを乗り越えな

    • #5「日曜劇場『VIVANT』役者の顔芸を楽しむ」

      堺雅人主演のドラマは、役者たちの顔芸を楽しむものだ。 「半沢直樹」しかり。 演出上なのか、やたらと顔のドアップが多い気がする。 そして、VIVANTである。 第一話と最終話では全く話が違っているのが分かると思う。時々、ドラマなんて最初と最後だけ見ればいいやと言う人がいるが、同じドラマなのだろうかと思うほど訳が分からないだろう。 それだけストーリーは二転三転するし、ロケ地のスケールの広さも一つの見どころになっている。 映像が映画並みで、このご時世、どこからこの製作費が湧いてき

      • #4「伏線回収グラドル・本郷柚巴( @yuzuha_hongo )」

        今週のグラドル・本郷 柚巴(ほんごう ゆずは) アイドルグループ出身のグラドルは、意外と多い。 しかし誰でもなれるものではないし、ましてやアイドル時代に人気があってもグラビアで大成するとは限らない。その逆もある。 本郷柚巴は、NMB48在籍当時からグラビアデビューすると、もう既に写真集を2冊出版している。 NMB48本郷柚巴1st写真集 美しい果実 [ Takeo Dec. ] NMB48本郷柚巴 卒業記念写真集 どこを見ればいい? [ カノウ リョウマ ] DVDに比べ

        • #3「どうしてnoteなのか」

          再開させるに当たって、どのサービスを使うかは悩んだ。 メールアドレスで登録してもらうニュースレター(メールマガジン)方式でも良いのではと思ったからだ。 その方が読者との距離が近くなるのではないかと。 また、ツイキャスやポッドキャストなどの音声配信も考えてみたが、一人喋りが苦手なのと、定期的に録るのに、呼吸疾患がある自分は息が続くわけないだろうと思い、却下。 サービス(プラットホーム)探しに勤しんだが、めぼしいサービスを見つけることが出来なかった。 そこで、友人に相談もして、

        #6「キーボード選びから解放された-一生物HHKBと出会った奇跡-」

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        記事

          [1]優先エレベーター問題を日常と非日常で考える

          福祉の問題は、日常と非日常に分けられるのではないだろうか。 これは持論かもしれないが、日常生活で何度も直面する問題だとそれだけストレスも大きくなる。 一方、非日常だとたまにしか直面しないのでストレスではあるが、その限りで終わってしまうことも多い。 今回、この共同執筆マガジンを始めるにあたって、毎回テーマを設定しようということになった。 初回は、「優先エレベーター問題」 問題の概要は、それぞれ調べていただくということで、ここでは割愛する。 前から存在していた問題だろうが、今

          [1]優先エレベーター問題を日常と非日常で考える

          #2「プロフィール」

          自己紹介と、noteで何を書くかについてきちんと表明しておくべきとあったので、書いてみようと思います。 あなたは何者か1984年生まれの愛知県に住んでいる身体障害者です。 中学1年のときから気管切開をしていますが、24時間人工呼吸器を装着というわけではなく、自発呼吸は一応あります。 しかし、呼吸器なしで眠ることは不可能です。 車いすで座位を取って、市販のマウスとキーボードを操作してPC作業をしますが、ほとんどベッド上で何かをしています。 いわゆる「重度」ということになると思

          #2「プロフィール」

          #1「帰ってきた、ラボラトリー」

          2017年〜2019年まで知り合いのメールマガジンで、週1回コラムを連載させてもらっていた。 ネタが無い!なんてときもあったけど、そこそこ続けられていたのは奇跡だった。 もともと文章を書くのは嫌いではない。めちゃくちゃ好きかと言うと怪しいが。 自分でもよく分からないのだけれど、今まで複数の人から「春田さんの書く文章、好きですよ」と褒められたことがある。 在宅勤務をしている会社内でも、社内報で使う文章を書いていることもある。 くだんの連載が終了して、もう4年になる。 ここら

          #1「帰ってきた、ラボラトリー」

          打ち上げ花火と共に

          メールマガジン「B-Search NEWS 2019年12月27日分最終号・第1416号」に寄稿した文章です。 2017年10月から文章を書かせてもらっている「B-Search NEWS」も最終回を迎えてしまった。 メールマガジンの会社のサービス終了が原因だというからなんとも物悲しい。 B-Search NEWSの創刊は、2001年3月20日とある。 始まりがあるものには、必ず終わりがあるとは言え、老舗中の老舗。 長く続いた分だけ悲しさも増すだろう。 18年お疲れ様でし

          打ち上げ花火と共に

          連載小説「甘美に……」(8・最終話)

          「魂の画家‐川島清企画展」 大げさなタイトルが付いた企画展が地元の美術館で開催されることになった。新聞の片隅にも広告記事が載った。魂の画家というのは、美咲が思いついたらしい。何でも一心不乱に描き続ける清の姿に、魂を感じたとのことだった。 期間は1ヶ月。清は、たくさんの風景画よりもたった一枚の裸婦画がどのように展示されているのか気になっていた。 家族で訪れた企画展、客はちらほらと入っていた。美術館に自分の絵ばかり並んでいるというのも、気恥ずかしく目を背けたくなるような気持

          連載小説「甘美に……」(8・最終話)

          連載小説「甘美に……」(7)

          美咲は1時間後に、清のアトリエを覗いた。 そこには一心不乱に絵を描いている一人の男がいた。顔は真っ赤で鬼の形相。 そして、猛烈に汗をかいていた。 「少し休憩しましょうか」 一回では気づかれず、少しトーンを上げてもう一度声を掛けると、ようやく気づいてもらえた。 「あー、もう1時間経ったんですね」 清は、こちらの世界に戻ってきたようなホッとした表情をした。 アイリも内心、心配していたのかバスローブを羽織ると、「ふー」と息を吐いた。 「もう70〜80%は完成しています」

          連載小説「甘美に……」(7)

          連載小説「甘美に……」(6)

          「それでは、準備してきますね」そう言うと、アイリは風呂場の脱衣場に向かった。美咲と二人っきりになると、清はいよいよだと緊張してきた。さっきまで早く描きたいと思っていたのに、もう逃げ出したいような気持ちになっている。 「川島さん、リラックスですよ。いつものように描いてもらえばいいんですから」 いつものようにと言っても、風景画とは違うのだ。女性経験がほとんどないと言ってもいい自分が裸の女性を目の前にして正気でいられるのだろうか。そんな清の緊張と不安とは関係なく、アイリはバスロ

          連載小説「甘美に……」(6)

          連載小説「甘美に……」(5)

          意外にも引き受けてくれるヌードモデルはすぐに見つかった。セミプロといったところだろうか。30歳で若すぎず、かと言って年もいっておらず、ちょうどいい年齢だと清は思った。モデル料金は、美術館持ちだった。場所は、清のアトリエでいいとのことだった。 家族はその日だけは出禁にした。反対されるかと思ったが意外とすんなりいった。この機会に温泉にでも行ってくるらしい。 すべての条件がすんなりと上手く通り、清のヌードデッサンのためだけに用意されたかのような日がやってきた。 当日、学芸員の

          連載小説「甘美に……」(5)

          連載小説「甘美に……」(4)

          「はい。分かりました」 若い女性のお願いには弱い。ただ、安請け合いしたものの、清の最近の絵に対するモヤモヤはどうにも取れなかった。そんな表情を読み取ったのか、美咲はすぐに尋ねてきた。 「何かご不満なこととか、ささいなことでも何かありましたら遠慮なくおっしゃってくださいね」 「僕は、加藤さんに絵そのものをほめていただいて、とても嬉しいのです。ただ、展覧会をやるにはまだ画力もそうですし、人を引きつけるものがないと思うのです。作者が障害者であることを忘れさせられるような絵です。

          連載小説「甘美に……」(4)

          連載小説「甘美に……」(3)

          部屋に戻り、パソコンを開けると見慣れないアドレスからメールが来ていた。どうせ迷惑メールだろうと思い、削除ボタンを押しかけたが手を止めた。そこには、清が載った新聞を読んだ旨が書いてあった。どうやら地元の美術館からのようだった。 清も企画展がある度に何度も連れていってもらったことがある。お世辞とも取れる文章が並び、気恥ずかしくなったが嬉しくもあった。本題は、新聞記事の感想では無いようだった。 つきましては、一度お会いして話をさせていただきたいとのことだった。何だろうと清は思っ

          連載小説「甘美に……」(3)

          連載小説「甘美に……」(2)

          川島清は今日もぼんやり外を見ていた。40の働き盛りと言われる時期に働かず、風の音に耳を澄ましているとは、いい気なものだ。彼が一つやれることと言えば、絵を描くということだけだった。 少し前までデイサービスというのに通っていたが、バカバカしくなって止めてしまった。一言で言えば、そこにいる人たち(職員や利用者(多くは老人ばかりだった))と合わなかった。 昼食に前日のカレーを温めて一人で食べていると、窓から見える草木や花を描くのも飽きたなと思った。川島の絵は、ただ一人で描いて自己

          連載小説「甘美に……」(2)

          連載小説「甘美に……」(1)

          僕が祖父の家の屋根裏部屋で、その絵を見つけたのは夏休みのことだった。大学生は基本的に暇でバイトに明け暮れていた毎日だったが、ある日、祖父から携帯にメールがあった。 今は、高齢者でも簡単なメールくらいなら打てる時代。内容はと言えば、毎年恒例のお盆に親戚一同が集まるときに屋根裏部屋の片付けをしてほしいとのことだった。もちろん、少しのバイト代は出すとのこと。僕は、金が出るならと引き受けた。相当、処分品があるらしく汚れてもいい恰好をしてくるようにとも書いてあった。 当日は、毎年お

          連載小説「甘美に……」(1)