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vol.16 長い協働のなかで育まれる実りある関係性【アカシアの樹】

経営者とブランディングデザイナー西澤明洋が対談し、ブランドの成長ストーリーを振り返りお届けするシリーズ「BRAND STORY」。

執筆・編集 加藤孝司
撮影 トヤマタクロウ

抗酸化力、血糖値低下、体脂肪低減、血中コレステロールの低下、動脈硬化防止、肌の潤いといったアカシアポリフェノール(アカシア樹皮由来プロアントシアニジン)の可能性が明らかになったのが2000年代初頭。2019年2月にエイトブランディングデザインとともにリブランディングおよびブランドの刷新を発表した「アカシアの樹」は、2007年創業したアカシアポリフェノールを用いたサプリメントを日本で初めて開発し発売したリーディングカンパニー。株式会社アカシアの樹 代表取締役の片岡武司氏とエイトブランディングデザイン代表の西澤明洋との対談前編では建材メーカーがなぜ健康食品の通販会社を設立したのか、ブランディングに至る背景を語り合ってもらった。

アカシアポリフェノールで健康食品

ーーまずは貴社の創業の経緯とどのようなものづくりをしている会社であるのかを教えてください。

片岡:「アカシアの樹」はアカシアポリフェーノールによる健康食品をメインに製造販売する健康食品メーカーです。もともと私は弊社のルーツとなる広島県廿日市にある木質総合建材メーカーに勤めていました。林業から建材メーカーに発展していった会社ですが、少子高齢化が進み、住宅の需要が減少するといわれ、今後新しい事業に取り組む必要性があると感じていました。それが1990年代のことです。その会社はニュージーランドに所有する広大な土地に松を植林していますが、そこで着目したのが製材過程で大量に余る松の樹皮でした。

ーー製材過程で生じる樹皮は端材として燃料などに使われることが一般的だそうですが、実は可能性をもった素材であり、有効活用が模索されていると聞いたことがあります。

片岡:そうです。松は製材の過程で芯材は建材として出荷しますが、樹皮が大量に余るんです。それらはボイラー行きになることが多く、弊社でも別の活用ができないかと研究を続けていました。当時弊社の研究顧問をしていただいていた矢崎義和先生という方はオーストラリア連邦科学産業機構・林産研究所研究員でオーストラリアのモナッシュ大学にいらして長年木質用天然物(タンニン)系接着剤の研究もされていましたが、ポリフェノールの権威でもいらした。

西澤:なるほど。そう繋がるのですね。

片岡:松の木の樹皮の抽出物にもポリフェノールが含まれていることは以前より知られていました。それで松の比較対象としてオーストラリアに自生しているアカシアの樹皮から得られる粉末を使い接着剤の研究をしていたときに、アカシア樹皮の抽出物の抗酸化活性を試験したそうです。そうしたら松のそれに比べて数値が約10倍高いことを偶然発見しました。ご存知のように活性酸素によって酸化を抑える抗酸化活性とは抗老化にも効果があるとされています。ですので松での接着剤の研究から始まって、その比較対象としてアカシアの研究をしたことがこの事業の発端となりました。

西澤:新規事業の種はどこに転がっているか分かりませんね。実に面白いですね。

片岡:建材メーカーの新規事業の開発というとリフォームの会社をするなどありきたりなアイデアしか出てこないなかで、当時社内で行なっていた研究が思いもよらぬ方向に向かっていきました。

タイミング的には赤ワインが持つポリフェノールに抗酸化作用があり、健康効果があると注目されていたころです。建材メーカーと健康食品メーカーは事業構造が全く異なるのですが、アカシア由来のポリフェノールを使ってサプリメントなどの健康食品の道もあるのではないかと事業化をしようと起こしたのがこの会社の始まりでした。

ーー住宅業界から健康食品業界へ、めずらしい取り組みだと思うのですが、社内での反応はいかがでしたか?

片岡:おっしゃるように全くの未知の分野ではありましたが面白いそうだからやってみようという前向きな感じでした。

株式会社アカシアの樹 代表取締役 片岡武司氏
大学卒業後、広島にある建材メーカーに勤務。植林事業を国内外手掛けており、本社勤務の技術開発部時代にアカシアの研究と出会う。会社内で新規事業立ち上げのプロジェクトが始まり、2007年に株式会社アカシアの樹を設立し現在に至る。

目指すのは世の中の人の健康に貢献するものづくり

片岡:全くの異業種ではありましたが販売展開としては通販でしたので、大きな設備投資が必要ではないということもきっかけとしてはやり易いという考えもありました。
木材の場合は建材メーカー、問屋、販売店、工務店やハウスメーカーと、いうなれば川上から川下へと流通が流れていきます。通販の場合はメーカーからダイレクトに消費者に販売をしますので固定費が圧倒的に少なくて済む利点がありました。

ーー販売方法は最初から通販でとお考えだったのですね。

片岡:はい。流通をやろうと考えたら通販に比べて人員も流通マージンも多く必要になります。ただ利幅が多い分広告費が莫大にかかるのも事実です。そこがネックでもあるんですね。

ーー創業が2007年3月で、エイトブランディングデザインとのリブランディングを発表されたのが2019年2月でした。創業から12年間、広告もパッケージのデザインも全て自社でされてきたのでしょうか。

片岡:はい。ですが通販業界では通販の肝は、いかに強い言葉で広告をするかであってパッケージは関係ないと言われていました。ですので極論をいえば今でもこの業界では「ブランディング」という考え方自体無縁に近いといえば近いんです。

西澤:重要なのは広告とマーケティングであるとされてきた業界ですからね。

片岡:はい。もちろん大きな会社さんは全てをしっかりとされていますが、ご存知のように小さな会社がたくさんあって、はたから見ていて言葉は悪いですが売ったもん勝ちというどこか胡散臭さのある業界でした。ですので最初はそれもあって健康食品の業界に参入することには少し抵抗もあったのも事実です……。

西澤:弊社にもこの業界からブランディング依頼がものすごく多いです。中には、引き受けてよいものか、と悩むものもあります。

片岡:私たちは親会社での長年の製造と販売の経験があり、会社も製品も生き物であることが分かっていました。会社を立ち上げた以上は世の中に役に立つものをつくり、継続しながら事業としても伸ばしていかなければ意味がないと教え込まれてきました。ですからそのためにもブランディングよりも、まずは世の中の皆さんの健康のために良いものをしっかりとつくり、それを売ることを優先でスタートしたのは事実です。

物が持つ本質を正しく伝えるブランディングとは


ーー健康食品、あるいは通販という業態に対して、しっかりと安心感や信頼感を持っていただくためのリブランディングを視野に入れたのはいつのことになりますか?

片岡:それまでは臨床試験を行いエビデンスがあることだけを広告でPRをしながらお客様を地道に集めてきました。社名は海外展開も視野に入れて、アカシアの英名であるミモサから「mimozax(ミモザクス)」とつけました。ですが商品が流通していくなかで、メインのお客様である高齢者の方のなかには英語の名前が読めない方も多かった。「アカシアさん」、主力商品名である「アカポリアさん」と親しみを込めて呼んではいただけるのですが、それもあって社名に違和感を持つようになりました。
創業から9年ほど経ち、アカシアポリフェノールの健康食品メーカーとしてある程度の骨格ができ、商売も軌道に乗っていたころにエイトさんに出合いました。きっかけは共同経営者である親会社の代表が西澤さんのセミナーに参加したことでした。「いい人と出会ったから一度会ってみたらどうか?」と連絡をもらいました。

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この続きは、エイトブランディングデザインWEBサイトで全文無料公開中。『アカシアの樹 [ 前編 ] 長い協働のなかで育まれる実りある関係性』

執筆・編集

加藤孝司 Takashi Kato
デザインジャーナリスト/ フォトグラファー
1965年東京生まれ。デザイン、ライフスタイル、アートなどを横断的に探求、執筆。2005年よりはじめたweblog『FORM_story of design』では、デザイン、建築、映画や哲学など、独自の視点から幅広く論考。休日は愛猫ジャスパー(ブリティッシュショートヘアの男の子)とともにすごすことを楽しみにしている。http://form-design.jugem.jp/

撮影

トヤマタクロウ
1988年生まれ。写真集や個展での作品発表を中心に、クライアントワークにおいても幅広く活動。http://takurohtoyama.tumblr.com/


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