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カフェイン摂取は最強のパフォーマンスハック!? 論文から紐解く効能と付き合い方

以前「パフォーマンスハック」(= 生産性向上のためのハウツー)について研究していた際にまとめていた内容を折角なので公開。
*本記事の科学的作用の記述等についてはご自身で要確認してください。

カフェインについて調べるのはもう終わり

みなさんが常日頃お世話になっているであろう ”カフェイン” 。
朝目覚めるため。午前中の発奮のため。お昼のウトウトを防ぐため。午後にリラックスするため…。

そんな毎日のお供である”カフェイン”を良くもわからずグビグビと惰性になって飲んでいないでしょうか?
本当に効用やリスクを理解して摂取しているのでしょうか。本稿ではそんな日常に溶け込んでいる ”カフェイン”を丸裸にしていきます。
パフォーマンス観点のカフェイン記事の決定版を目指しました。

コーヒーでもゆるりと堪能しながら、楽しんでもらえたら幸いです。ではスタート!

そもそもカフェインとは?

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カフェインとコーヒーとは切っても切れない関係です。

カフェインは元々、ドイツの科学者 ルンゲ氏によってコーヒーから世界で初めて分離された化合物であり、ドイツ語でコーヒーを意味する ”Koffee” に含有されるものという意味で "Koffe + in" と命名されたとのこと。シンプル。

ちなみにコーヒーをフィンランド語では、kahvi(カービィ) と呼ぶようです。
丸々としたフォルムが脳裏をよぎります。

カフェインは脳に作用する。

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カフェインの大きな特徴は、脳に作用するということです。

多くの化学物質は、「血液脳関門」という脳のバリアに阻まれて、脳内には入ることを許されません。脳を守るためです。
しかし、カフェインはこの峻厳な関門を通過し、脳に到達することができるのです。
さながら化学物質界のクセルクセス1世。

クセルクセス1世はペルシア軍を率い、ギリシアの截然たる関門テルモピュライにてスパルタを打ち破りアテネに侵入した。

カフェインは「アデノシン」と呼ばれるドーパミンやノルアドレナリンといった興奮性の神経伝達物質の放出を抑える物質と構造が似ています。よって、アデノシンの働きである「興奮抑制作用」をブロックし、間接的に脳を興奮、覚醒させていると考えられているようです。

カフェインは接種後、速やかに大部分が吸収され、血流にのり全身に行き渡ります。最高血中濃度到達時間は個人差がありますが、30~120分後にピークとなるよう。
血中半減期を迎えるのが約4時間後とされますが、こちらも個人差があり 2~8時間の幅があるようです。

参考:Blanchard J( 1983)[The absolute bioavailability of caffeine in man]

以下では、特にパフォーマンスに関与する「集中力」「運動能力」にフォーカスして研究結果とともに説明していきます。

カフェイン「集中力と運動能力、目覚めてー!」

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まず集中力について。

米国で実施された、カフェイン摂取直後の認知機能テストによる調査結果では以下の全ての能力がカフェイン摂取の方が、プラセボの飲料よりも高くなる結果がでています。

・単純反応時間
・注意力
・数字作業記憶(反応時間)
・文章照合正確性

カフェインによる計算能力の向上は、カフェイン摂取の約30分後から影響し始め、1時間後にピークに達するとされています。

参考: Haskell CF (2005) [Cognitive and mood improvements of caffeine in habitual consumers and habitual non-consumers of caffeine]
Loke WH(1988[Effects of caffeine on mood and memory]

上記は、カフェインを日常摂取している人としていない人の比較であるが、英国で9,000人近くの健常者を対象とした横断調査が実施されました。結果、カフェインの継続的な摂取量が多いほど単純反応時間が短く、言語記憶も高まっていたそうです。

参考:Jarvis MJ( 1993)[Does caffeine intake enhance absolute levels of cognitive performance?]

カフェインが集中力や認知機能に好影響を与えることは事実であることは間違いないようです。

では運動能力ではどうでしょう。

まず前提として、カフェインが「筋肉のエネルギー代謝を高める」ということでないようです。

参考:Graham TE (2000) [Caffeine ingestion does not alter carbohydrate or fat metabolism in human skeletal muscle during exercise]

上述したように、あくまでカフェインは「脳」に影響を与えています。

英国の研究では、1,500m走3回の平均タイムがカフェイン摂取の方が約3秒速くなるという結果がでているようです。
これはつまり、疲労を感じた際の神経細胞のやり取りにカフェインが関与し、筋疲労を感じる時間を遅くする影響を与えるということです。結果として持続的に高い運動能力が達成されたというメカニズムなのです。
参考:J D Wiles (1992)[Effect of caffeinated coffee on running speed, respiratory factors, blood lactate and perceived exertion during 1500-m treadmill running.]

疲労感の軽減は分かったと、では、カフェインの筋力への影響はどうなのでしょう。

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有名な研究結果として、スクワットとベンチプレスの総負荷量とカフェイン、コーヒーとの関与を解き明かしたものがあります。(コーヒー、無水カフェイン、プラセボ、カフェインレスコーヒーの4つで実験。)

結果、コーヒー、無水カフェインを飲んだ場合において、スクワット、ベンチプレスともに有意な総負荷量の増加を示しました。

なんと、スクワットにおいては、カフェイン入りコーヒーはプラセボに比べて約3倍近い総負荷量を達成したのです。(それはすごいな。)
また、カフェイン入りコーヒーは無水カフェインよりも高い総負荷量を示しました。これはカフェインは液体摂取の方が吸収率が高くなるのが理由とされています。
参考:Richardson (2016).[Effect of Coffee and Caffeine Ingestion on Resistance Exercise Performance.]

カフェインが脳に影響し、その結果として集中力や認知機能、運動能力にまで好影響を与えることが理解できたと思います。
それでは、実生活ではどこに注意してどうカフェインを活用していけばよいのでしょうか。

結局どのくらいまでカフェインを取ってよいの?

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前半で説明したとおり、カフェインは中枢神経系に作用する物質です。

【カフェイン過剰の摂取は中枢神経系を過剰に刺激し、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠や、下痢や吐き気、嘔吐可能性があるので、注意です!】

現在日本において、食品中のカフェインについては1日摂取許容量のような摂取量は設定されていません。以下 食品安全委員会「食品中のカフェインファクトシート」より引用

「カフェインに対する感受性は個人差が大きいため、健康に及ぼす影響を正確に評価することは難しく、カフェインの一日摂取許容量(ADI)は設定されていません。」

しかし、カナダ保健省、欧州食品安全期間(EFSA)といった海外のリスク管理機関が設定している、「1日当たりの悪影響のない最大摂取量」は、農林水産省から以下のように公式に公開されています。

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[食品中のカフェインファクトシート 最終更新平成30年2月23日](https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/caffeine.pdf)

個々人の体格や耐性、体調によりますが、健康な成人においては、400mg/ 日を一つの目安にすべきかと思います。

また、主要な飲料に含まれるカフェイン量は以下です。100ml 換算なので、実際の飲料に当てはめる際には多少の計算の必要性がありますので注意。

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(引用 - 農林水産省:食品中のカフェイン濃度

浸出液 / 粉末によって差異がでますが、
仮に上の表の「コーヒー(浸出液)」に従うのであれば、スターバックスのドリップコーヒーなら、以下になるかと。
・ショートサイズ(240ml): 144mg
・トールサイズ(350ml)- カフェイン量:210mg
・グランデサイズ(470ml)- カフェイン量:282mg
・ベンティサイズ(590ml)- カフェイン量:354mg

カフェインには依存性がある?

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カフェインは多少の依存性を持つとされています。が、その依存性はアルコールの約50分の1、ニコチンの約10分の程度とされています。
参考:Roland R. Griffiths(1987) [Caffeine physical dependence: a review of human and laboratory animal studies]

ただし、なかなかの離脱症状があります。
カフェインを1日200mg、2週間以上継続的に摂取している場合には、摂取を中止すると頭痛、短期、疲労感、眠気などの離脱症状が発生するのです(多くの人が当てはまるのでは..)

離脱症状はカフェインを中断してから、12〜24 時間後に発生し、ピークは 48 時間後。約 7 日ほどかけて離脱症状は消えていくようです。(長いな!)

この持続的な離脱症状のため、カフェイン断ちにチャレンジしながらも道半ばで打ち破れていった方々を幾人も見てきました。

私もコーヒーを 1日3~4 杯飲むコーヒー愛好家でした。以前、「何かに依存し過ぎることは、人生のリスク管理上健全な状態ではない。カフェインもその一つだっ!」と半ば中二病的に一念発起し、コーヒー断ちにトライしたことがあります。結果は、ご想像の通り..。
倦怠感と頭痛に耐えられず1日で断念しました。今では、コーヒーを人生の伴侶としてともに歩む決意を固めた次第であります。

しかし、本気でカフェイン断ちをしたければ良い方法があります。
カフェインを数日に渡り、徐々に摂取を減量していけば良いようです

離脱症状の頭痛は、カフェイン摂取中断後24時間以内に出現するものの、約100mgのカフェイン摂取で消えると言われています。
その後も約200mg / 日を越えないように段々と量を減らしていけば良いようです。
参考:Nehlig, A. (2004) [Are we dependent upon coffee and caffeine? A review on human and animal data]

何事も急いては事を仕損じる。一気にカフェインを断つのは辛く、断念してしまうことに繋るので注意しましょう。

シーン別カフェイン摂取法

最後に、おまけとしてシーン別のカフェイン摂取法を。

時間のある優雅な朝、昼下がり。

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ぜひ時間のある時には、コーヒーを豆から煎り、カフェイン摂取を目的とせず、ゆっくりとコーヒーそのものを楽しみたいところです。
コーヒーの「香り」には高いリラックス効果があるとされています。
(参考:全日本コーヒー協会:[香りから生まれる、 「癒し」と「集中力」]

トレーニング前

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前段で説明したとおり、カフェインは運動効果を向上させます。

運動やトレーニングの30分〜1時間ほど前に、体重1kgあたり3 mgほど(体重が60kg であれば、約180mg。)摂取すると運動パフォーマンスが向上する可能性が示唆されています。

(参考:Richardson (2016).[Effect of Coffee and Caffeine Ingestion on Resistance Exercise Performance.]

時間がない、水分もなるべく摂取したくない、ハード期。

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コーヒーを買いにいく時間すらない。
会議続きなので、飲み物もあまり飲みたくない。人生は波乱万丈。そんなハードなタイミングも時にはあると思います。

そんな時は、[エスエス製薬 エスタロンモカ錠](エスエス製薬 企業サイト)が助けになるかも。1錠に無水カフェインが 100mg 含有されています。
スターバックスドリップコーヒートールサイズ(350ml, カフェイン210mg)の約半分、レッドブル1缶(250ml, カフェイン80mg)よりやや多いカフェイン量です。
*どうしてもの時の切り札として。短時間内の服用および連用はくれぐれも避けてましょう。


いかがだったでしょうか。
パフォーマンスに関与するカフェインの情報を集約したつもりです。
カフェインとうまく付き合ってハイパフォーマティブな生活を送っていただけたら幸いです。

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