最近読んだマンガたち

新潮社作品を中心に。個人的に新潮社の作品群は「そこを書く?!」的な驚きが多分にあってとても好き。「作家が描きたいもの、そして描けるもの」がしっかり描かれていて、編集部の方々はその引き出し方が非常に上手いんだなと思う。

そして、そうした作品たちは私たち読者の世界をどこまでも広げる。普段の生活では決して見ることができないような世界を覗き見るようなワクワク感と、読了後に「何かしたい」と思わせるような活力を私たちに与えてくれる。今回は、そんな感覚を私に与えてくれた作品をwebで今すぐに読める「くらげバンチ」からいくつか感想と共に紹介したい。


1.舞台はラブホテル!だけどエロくない?!

『趣味のラブホテル』らぱ☆,くらげバンチ

作品を読み進めてふと気づく。

「この漫画、話の8割がラブホテルで進むのに、セックス全然しないぞ?」

それもそのはず、本作はラブホテルの魅力に焦点を当てた、いわば「ラブホテルの参考書」のような作品なのだ。読了後、ラブホテルのイメージが180度とはいかなくとも60度くらい変わる。「セックスする場所」として肉欲に溢れたイメージが、テーマパークを思わせるようなエンタメ性や時にリアルな内情を交えた解説は、私たちに「ラブホテル」の世界を広げてくれる力がある。

「ラブホテル、行きてえな」

下心に溢れたセリフのようだが、読了後はきっとテーマパーク感覚でこうしたセリフが湧いてくるはずだ。また、主人公の推しキャラがアイマスキャラを彷彿とさせる点もお気に入り(らぱ☆さんは井村雪菜Pとのこと)。

個人的にツボだったのは第八話。タイトルは「愛と倫理とラブホテル」

不倫浮気がなくなったらラブホは経営危機ですね…

吹き出してしまったセリフだが、真実。ラブホは浮気を遂行させるためにあらゆる手を尽くしているのが笑えて、まためちゃくちゃリアルで最高だった。第8話は、参考になってしまう人がいるかもしれませんね。

2.『衣』から垣間見る歌舞伎町と人間

『歌舞伎町の洗濯屋さん』駒魔子,くらげバンチ

歌舞伎町にあるクリーニング店を舞台に、そこに出てくる衣服を皮切りに、歌舞伎町と人間ドラマを描く。

人間生活の基本「衣・食・住」
なかでも「衣」は人間を映し出す鏡だと思う

「人間」って一番身近な世界で、そして一番見てはいけない世界だと痛感させる作品。ページをめくる手を動かすのは、危ない好奇心だ。読者は本作を読み、どんな世界を広げるのだろう。「こんな人もいるのか」とドン引く人もいれば、勇気をもらう人もいるかもしれない。感想から読み手の人間性を暴露してしまう恐ろしさも兼ね備えている。

そもそも本作は、タイトルから秀逸である。第一話は、「ポケットは歌舞伎町の縮図」。言いえて妙である。舞台は、歌舞伎町。様々な人がクリーニングに衣服を出し、そしてそのポケットには「やばい」ものがたくさん入っている。

ところで、あなたのポケットには何が入っているだろうか。自分の衣服を客観視したとき、潜在的に眠る自己像が湧き出るかもしれない。



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