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本物の洋服

私は洋服が好きだ。

それは多分父の影響で小さい頃から、
ある程度しゃれた服を身に付けていたから。

でも、中学高校とあまり服に興味はなく、
日々ジャージか父から買い与えられた洋服を
それとなく着ていた。

大学に入る少し前から、
自分で稼いだバイト代で洋服を買うようになり、段々と雑誌の中のキラキラとした洋服たちに釘付けになった。

雑誌やSNSの中のあの人が着ていた、
あの洋服が欲しくて街に繰り出し、買う。
1万や2万するものもカードという半無敵なものがあるためにスルスルと購入。
そんなある程度いい服を着ている学生だった。

私は店員さんとお話ししながら服を買いたい人である。
服の裏側をストーリーを話してくれる店員さんから買いたいなと思う。

あなたにはこれが似合う、似合わない。
こんなのはどう?
それはこんな着方をするといいよ。

なんてわいわいしながら脱いだり着たりを繰り返して、まるで私は着せ替え人形かと思うくらいに、服を選べる場所をどこかでずっと探していたように思う。

そんなお店がある日ひょいと現れたのだから、私は本当に幸せ者である。

家から自転車で10分くらいだろうか、
花川戸にある看板もない一見倉庫なお店が
まさに上で書いたそのままのお店だった。

私たちはそんなお店だとは知らずに、
ラフな格好で入店し、
店内を見渡すとanatomicaや知らないタグが見えて背筋がピンとなった。

やばいお店な気がする…
そう思った矢先に店主さんに声をかけられた。

それを皮切りに、
服のストーリーを語る語る。
どう製造されているかはもちろん、
洋服の歴史をひとつずつ紐解いて説明してくれた。

※一部会話から
店主「セーターは編むものなのに、それを裁断してくっつけているものはセーターではない。」
我ら「たしかに。。」

店主「女は綺麗に装うために化粧をしている。男は化粧をしないのならば、身に付けるものをしゃんとしろ。でなければ、女性に失礼である」
連れ「はい(図星)」

これを着てみろと、
私はポロシャツ、白シャツにセーター、ダウンベスト、プリーツスカートを着たまま、
今度は喉が渇いたと、
ジュースをいただき、店主と連れは煙草をふかし世間話をする…

なんだ〜これは〜とへらへらしてしまった。

白シャツを1枚お持ち帰り、
ポロシャツとプリーツスカートを予約した。

1時間くらいに渡った溢れんばかりの服への愛を抱えきれないくらい持ち帰って、
なんだかものすごく充実した時間だったなあと振り返る。

私にとって服に対する姿勢というか、
そういうものが変わったし、
なによりこのお店に出会えたことを嬉しく思った。

お店を出るときに、
「また来てね」と私の名前を呼んで言ってくれた。

私はこのお店に通いたいし、
通える大人でいたいなと
青く重い扉を閉めながら強く思った。

(はたして私は化けるのだろうか…)