起業家7年、最も変わった世界観は

昔のブログなどを読み返して質問をしてくださるインターン候補生などがいて、そういえば昔とはわたし自身の世界観が変わったのだけど、自分の考えをあまり書いてないなと思うので、一番変わったことを書いておく。

一番変わったことは、貧困者の(特に小規模貧困農家の)努力量への考え方だと思う。

最近SDGsが騒がれていて、企業がアフリカの農家の収入向上などに取り組まれていたりすると思うのだが、まず農家さんの収入向上のために『営農指導』から入るのはやめなさいとアドバイスをしておきたい。

営農指導というのは、貧困者への努力比重が大きすぎるからである。

霰、豪雨、旱魃、虫害、獣害。農地が全滅するのを何度も見てきた。正直、アルファジリって何にも役に立ってないと、何度も心を痛めて泣いた。

気候がそもそも恵まれていたり、一国の大規模事業により灌漑設備が整うようになったりと、労働すると収入がちゃんと上がる農地では、そもそも営農よりファイナンスが求められているのであって、農家の情報収集力もより高く、投資に対するリターンも安定している。だから勝手に努力するのである。それ以上努力したい・するかどうかは、指導ではなく機会提供するか否かであり、個人の問題だと思う。

『絶対貧困』農村で、収入向上に関してやることがあるとしたら、営農指導を「収入向上」の第一ステップとして考えるべきではない。

絶対貧困農村での営農指導はどちらかというと、コミュニティの規律を高め、男尊女卑のカルチャーを変え、人々が切磋琢磨する意欲を高めるツールの一つと考えるべきで、収入向上の手段とすべきではないという意味である。

収入向上と直結させるには「労働負荷を上げずに、収入が上げられる」事業が必要なのである。

なぜなら彼らは毎日十分忙しく(水汲み、農作業の全て、サイドビジネス、家畜の世話、教会の行事など)、一方たくさん働いたからとて、その分収入が上がったりコストが下がる保証がないからである。

アルファジリは、労働負荷が下がって収入が上がる事業、もしくは少なくとも同じ労働力でも収入が必ず上がる事業を、ずっと探しずっと挑戦し続けている。

私たちが製造している味噌関連商品は、まさにアルファジリが何度も痛みを抱えながら見つけた一つのソリューションだし、それが全ての正解だともこれっぽっちも思っていないけれど、アルファジリ 自身は全身全霊で努力し、さらにアイディアを開拓すべきだと思っている。

例えば、何十年前に捨てられたアボカドの種。今は大きな木となり、何もしなくても収穫すればいいだけのアボカドが、そこら中にある。ただ、品種としては定まっておらず、そのまま輸出となると、大量の規格外アボカドがある。

では、これを油に加工する。東アフリカでローカル製造されているスキンケアオイルというのは単体の精製油ばかりで、消費者の悩みに応じた調合オイルは非常に限られている。自社の技術を高め、そういったニーズに応えた商品開発をするのはどうか?(もちろん量のインパクトという視点で言えば、技術力を生かした高級商品だけではなく、食品や工業用なども展開すべきである)など、常に「労働負荷を上げずに収入を上げられる」ビジネスアイディアを探し続けているし、これからも実行していく。

わたしの起業家としてのアイディアはショボいものかもしれないが、少なくとも9年もケニアで仕事し、7年はアルファジリ一本で生きてきた。ここで生き抜くための多くのスキルと人とのつながりがあり、わたしにない何かに秀でている人がいれば、ぜひ一緒に働いて欲しいし、助けて欲しいと思っている。そして、そんな優秀な人を歓迎できるように、もっと儲けていくことも、わたしの使命である。

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