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令和6年度ガバメントクラウド早期移行団体検証事業の採択状況を整理する

昨年度に引き続き、「令和6年度ガバメントクラウド早期移行団体検証事業」が行われています。デジタル庁が整備する「ガバメントクラウド」への移行及びガバメントクラウド上のシステム運用に係る課題の検証を行うことを目的としたもので、今年度中にガバメントクラウドの利用を開始する場合はこの検証事業への参画が必須となります。

検証事業の第2回の採択結果が7月12日に発表されましたので集計してみました。

公表結果は以下の通りです。前回は追加採択がありましたので、今後増えるかもしれませんが、この記事では7月12日時点の内容を取り扱います。

第1回についても以下の通り公表されています。R5年度までの検証事業の団体も再度申請をしていますので、第1回と第2回の内容を足し合わせれば、ガバメントクラウドを利用している団体の総数がわかります。ただし各団体がどのCSPを選定しているかの情報は含まれません。

なお、この調査は大半をClaude3.5Sonnetくんに実施してもらっています。集計誤りは事前に確認していますが、もし漏れがあればご指摘いただけると幸いです。

自治体数など集計データはJ-LISさんの以下を参考にしています。


注意事項

今回の記事にある数字は、第1回もしくは第2回のガバメントクラウド早期移行団体検証事業の公募に採択された団体を集計したものです。今のところ、この事業に採択されなければ各自治体はガバメントクラウドは利用できません。公募にあたってはいくつかの条件があり、公募要項に記載があります。本文に記載の通り、採択状況は都道府県によって大きな差がありますが、現時点で採択されていないことイコール標準化移行状況が悪いということではありません。標準化移行手順におけるひとつのマイルストーンであることは確かですし、標準化対応に課題を抱えている団体も多いと思いますが、これが唯一の指標値ではありません。
例をあげると

  • いくつかのモデル団体で先行評価をし、そこで課題を抽出してから横展開を計画しているケース

  • 全国規模で事業を展開している運用管理補助者に委託しており、他の都道府県の結果を待っているケース

  • ガバメントクラウドを利用しないケース(ガバメントクラウドの利用は努力義務であり、経済合理性が高い等の理由で他の環境を利用することも認められています)

のような場合は、採択率が低くても問題はないといえます。

とはいえ、ガバメントクラウドについて机上の評価や計画段階から先に進めるためには実環境が必要ですから、採択されている方が着実に進展していると考えるのが自然ではあります。

総務省の定義する「自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書【第3.0版】」をみると、そろそろフェーズ3に入っている必要があるようです。

移行推進マイルストン(自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書【第3.0版】より)

全体状況

前置きが長くなりましたが、それでは数字を見ていきましょう。

第1回が151団体、第2回が312団体、合計で463団体が現在採択されています。
区市町村が455団体、都道府県が5団体、広域連合が3団体です。

広域連合(および一部事務組合)については、代表自治体がまとめて応募している可能性もあるため、参考程度としてください。

移行率をみると、区市町村全体では26.1%となっています。ぐんと306団体が増えており、基礎自治体全体で着実な採用の進展が見られます。指定都市はすべて採択済、特別区も約7割が採択済となっている一方で、町村は10%台と低調なのが気になります。
また、都道府県レベルでもガバメントクラウドの利用が見込まれますが、10.6%にとどまっています。

都道府県別集計

次に都道府県別に見てみましょう。まず一覧です。平均は26.1%で、中央値は20.0%の静岡県です。最高値(岐阜県の81.0%)と最低値(富山県、石川県の0.0%)の間に大きな開きがあり、都道府県間で大きな格差が存在することがわかります。

地域別の傾向

これら都道府県別の採択率をDatawrapperで日本地図で可視化してみました。平均が26.1%なので基準を±10%、±20%で振り分けました。オレンジ寄りが平均以下、青寄りが平均以上です。

昨夜にXで掲載したものと色分けを変えています(あちらは適当に色分けしたので)。

ガバメントクラウド採択率(2024年7月12日時点)

都市部が高いのかと思いきや、必ずしもそうはなっていません。地域別にみると、突出しているのが南関東(57.5%)ですね。東海・四国・九州も平均以上となっています。平均から大きく離れているのが北海道・東北・北関東・中国のあたりで、特に東北は6.6%とかなり低い状況です。

南関東と東北の間に50ポイント以上の差があり、地域間の差に問題がないか点検が必要そうです。

採択率別ランキング

採択率の上位と下位の10団体を抽出すると次の通りです。

上位をみると、岐阜県が突出して高く、81%の自治体が採択されています。次いで、宮崎県(65.4%、26団体)、東京都(59.7%、37団体)となっています。採択団体数でみれば、もっとも多いのは東京都ですね。

下位をみると、富山県・石川県採択団体ゼロとなっています。採択団体が1つなのは3県(宮城県・三重県・島根県)、採択団体が2つなのは6県(岩手県・秋田県・山形県・滋賀県・広島県・長崎県)でした。

都道府県の状況

最後に都道府県の申請状況です。都道府県も生活保護システムや児童扶養手当システムの2システムについて標準準拠システムへの移行が必要と考えられ、ガバメントクラウドの利用が努力義務となります。
都道府県の47団体のうち、今のところ採択率は10.6%で、まだ5団体しか採択されていません(長野県、京都府、高知県、鳥取県、福岡県)。
生保と児扶手の2システムだけのためにガバメントクラウドを採用するのは少しコストパフォーマンスが悪く、二の足を踏んでいるかもしれませんね。

まとめ

デジタル庁の集計結果をもとに、都道府県別に数字がどうなっているかを確認してみました。冒頭に記載した通り、採択率が低いとただちに何か問題があるわけではありませんが、もしかすると標準化移行に際して大きな課題を抱えているかもしれません。
デジタル庁や標準化リエゾンは採択率の低い地域や自治体に対する支援策を検討すると良さそうです。平均を基準として、それを大幅に下回る都道府県については、何かしら重点的な支援が必要な状況かどうかをヒアリングするなどが考えられます。国だけに任せず、事業者も同様に、もしリソース面の余裕があればエリア別の状況を確認すると何か良いヒントが見つかるかもしれません。平均を大幅に上回っている都道府県について何か独自の施策をしており、成功事例があるようであればそれを共有していただくような場作りも有効そうですね。

Appendix

採択団体一覧はかなり長くなりますので、リンク先にまとめておきました。関心があれば参照してみてください。


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