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【特集】着せ替えアプリ「ポケコロ」:アバター文化とファッションの新たな交差点(後編)

自粛生活が続くなかで、急速に注目が高まったバーチャルファッション。
ココネ株式会社が運営する着せ替えアプリ「ポケコロは、ファッションブランド「KEITA MARUYAMA」とのコラボレーションを開始。

「ファッション業界側からのバーチャル進出」ではなく、「バーチャル業界側からのファッション進出」のアプローチを探求する本インタビューの後編は、ハイブランドとのコラボの経緯と意図に迫る。前編に引き続き、ココネ株式会社の取締役弁護士の石渡真維さん、コーポレート担当デザイナーの渡邉辰也さんに話を伺った。

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ココネ株式会社の取締役弁護士の石渡真維さん

リアルのファッションから学ぶためのコラボレーション

ーー実在するファッションブランドのアイテムを展開したことは、これまでもあったのでしょうか?

石渡:2017年に渋谷109ブランドである「Swankiss(スワンキス)」さんとのコラボをしたことはありました。ポケコロ内では評判が良く比較的人気の商品で、今でも話題に上がることがあります。

ーーでは、今回のKEITA MARUYAMAとのコラボレーションの経緯を教えてください。

石渡:ポケコロは9年の歴史があり、アイテム数は3万点に上ります。組み合わせは無限大です。また、着せ替え系アプリでは日本No.1だと思っておりまして、デジタルのお洋服を日本一販売していると自負してきました。

しかし、社内にファッションを専門とする人がおらず、社内のデザイナーを刺激したくて、リアル・ファッション業界の方とつながりたいと思ったのがきっかけです。アイテムが「好き」と思ってもらう感性に刺さるには、やはり流行、季節、世の中の状況など様々な要素が関係します。私たちにとっては、リアルのファッション業界とのコラボレーションはマンネリ化せず、お客様に新しい風を感じてもらうためのひとつの手段です。

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石渡:そこで、日本のアナ・ウィンターと言われている、ViViなどの編集長をされてきたファッションエディターの軍地彩弓さんを顧問にお迎えし、リアル・ファッションとのコラボレーションにチャレンジすることになりました。

ーー実際にコラボしてみて、ファッションデザイナーの方と制作を進めるというのはどういった体験になりましたか?

石渡:今まではデザインが内製なので、作ったものはボツになることなく、ほとんどが販売されていました。今回は、KEITA MARUYAMAさんの世界観を壊すことのないようにしなければならないし、12頭身くらいのモデルさんが着こなすものをポケコロ内の2頭身のキャラクターに着せるという難しさもあり、満足いくまで制作を繰り返す経験をできたのは、弊社内のデザイナーが刺激を受け、ファッションについて学び、お客様により良いものが提供できるきっかけになると思いました。

ーーやはり、制作の方法やこだわるポイントに違いはあるのですか?

そうですね。通常だと、とにかく1点ずつでも豪華に見えるように、とにかく盛り込んで足し算的に作るのですが、KEITA MARUYAMAさんはランウェイファッションの世界なので、トータルコーディネートのバランスを意識した作り方で、引き算の要素が強かったです。ただし結果として、それはポケコロの世界に当てはめてもかっこいいものでした。ひとつのブランドの強い世界観を維持する形で、ポケコロがそこに合わせていくという作業は初めてだったので、とても勉強になり、楽しい経験でした。

ーーコラボアイテムを実際にリリースして、ユーザーの反応はいかがでしたか?

「やっぱり上品だね」とか、「KEITA MARUYAMAのアイテムが実際には買うのは難しいけれど、ポケコロでなら手に入る」などの喜んでいるお声をいただきました。KEITA MARUYAMAさんの方でも、コラボレーションについて声をかけられることが多くなったとのことです。

リアルとバーチャル、2つの世界を自由に架橋する

ーーリアルなファッションと繋がっていく大きなきっかけになったのですね。ゲーム内でのアイテムをリアルでも展開する、また反対にリアルなアイテムをゲーム内で販売するということは考えていますか?

石渡:今回もリアルでアイテムを販売したらよかったという意見もありました。それはやっぱり、自分を表すものとしてキャラクターを作ってコーディネートして、スマホの中にあるものが手元にあることはウキウキする体験かなと。

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石渡:一方で、お客様にインタビューするとリアルな世界で嫌なことがあったらポケコロに癒されに行くと、本当に2つの世界を自由に行き来しています。そして、ポケコロの世界もリアルなんです。

以前はゲームの世界というとオタク的なもので「リア充」の真逆をいくものだと思われていたかもしれませんが、最近はもうゲームの世界が充実していて「デジ充」という言葉もあります。「リア充」と「デジ充」、そのふたつが別々にあるようで、ファッションの楽しみ方も別のものになっているみたいです。

例えば、実際の鞄は劣化してしまうし置き場所も困るけど、デジタルの鞄ならいくら買っても置き場所に困らない、価値もむしろ上がる傾向にある。また、TPO的にリアルでは着るのが難しい服もある。シンプルな黒いTシャツはポケコロ内では人気がでない。なので、同じものを売ってもお客様の好みと重なるものもあれば、そうでないものも多いのではないかと思っています。

ーーありがとうございます。アバターを楽しむという文化に早くから携わっていらっしゃったことが、とても印象的でした。最後に、アバター文化が今後どう展開していくか、ぜひお考えを聞かせてください。

渡邉:バーチャル、デジタルの場所が、皆さんの居場所になってきているのを強く感じます。バーチャル、デジタルの場所が、人の居場所になれば、当然その場所で、どんな洋服を着たいか、どんな飾り付けの部屋に住みたいかという、人間本来の「飾りたい」というニーズが高まります。

オンライン会議などが多くなっていますが、そうするとおのずと背景をきれいな風景に差し替えたいなどの要求が出てくるのと一緒です。その意味で、私たちのポケコロのような場所が、人の安らぎや、癒しの場所になればなるほど、その場所を飾ったり、着替えたりするニーズは高まると思っています。

石渡:アバターはもう時代が来たと思っています。お化粧をすること自体がアバター的なものであると思っていて、その最大級な形、究極版ではないかなと。

コロナの影響もあって、これだけリモート世界やオンラインの世界が広がり、ゲーム内で会議するような事例も出ています。デジタルな世界で自分を表現するものとして、認識が強まってきたなと。そういう意味で、自分のキャラクターを載せられるものとして、これからはさらにみなさんの理解と活用が広がると思っています。


アバター活用の側から独自に発展を遂げ、ファッションにアプローチしながら挑戦を続ける「ポケコロ」。バーチャルファッションの普及には、ファッションの側からのアプローチだけでなく、こういったアバターコミュニケーションの場をつくるアクターがファッションをどう活用してきたかを考え、相互理解を深めていくことが重要かもしれない。

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