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会えない彼女

世の中には、自分に似た人が3人存在するらしい。

15年ほど前に、取引先の企業に私にそっくりな人がいる!と言われたことがあった。その会社とは当時いくつかのプロジェクトでチームを組んでおり、各担当者はバラバラなのだが、その全員が口を揃えて「似てる、似てる」と言うもんだから、私も段々自分に似たそのAさんという人に会ってみたくなった。
しかし、会おうとするとうまくいかない。

○○支店にいるらしい。
いや、今は△△支店だよ。
あれ?□□営業所にいるのをみたけど?

なんとも要領を得ないのだ。
なかなか会えないまま、そして確たる情報がないまま数ヶ月が過ぎ、自分に似たそのAさんのことも忘れそうになっていたある日、チャンスはやってきた。半年前の異動で、とある支店に彼女が勤務することになったというのだ。そしてその支店では丁度打合せの予定が入っている。この機会にお目にかかろうじゃないか。

当日、打合せを終え、緊張しながら「Aさん、いらっしゃいますか?」と聞く。ようやく会えるのだ。私に似た人に。

Aさんは、会社を辞めていた。

結局、周りの人たちの「似ている」という言葉だけを残したまま、彼女とは会えずじまい。そもそもAさんという人の存在自体も訝っている自分がいる。Aさんとは、会ったら死んでしまうというドッペルゲンガーだったのではないか?そんなことはないか。
いつかどこかで、会えたらいいなと思う。

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