見出し画像

こわいこと

最近、ことに記憶力の低下が著しい。
長年に渡る痛飲、暴食で脳にも脂がまわり、プリン様になっているのかもしれない。

さて、かれこれもう15年以上前、地方から上京したての大学入学直後に体験した話。

「シャッター押してもらえませんか」

キャンパスを歩いていると、2人組の女性に声をかけられた。
聞けば、2人とも社会人で、休みがたまたま被ったため学食に来ていたという。
我が母校は学食が有名で、当時はよく近隣住民も食べに訪れていたため、部外者がキャンパス内にいることは珍しくなかった。

写真を撮ってあげると、新入生なのか、出身は?サークルは?など、2人組からの質問が始まった。
今となれば、ああ、これは無知な田舎者を狙ったマルチか新興宗教の勧誘のやり口だな、とわかるのだが、なにゆえ上京したて、慣れない土地で友人も少なかった私はそれらの質問に正直に答えたのだった。

その手の勧誘者は皆そうだが、「いい人」なことが多い。
よく話を聞いてくれて、共感してくれる。こちらにとって都合のいい、欲しい相槌が返ってくる。

私はあっという間に、その2人組が属しているサークル活動に参加することになった。

そのサークル自体は、曜日によって球技や英会話など、活動内容は多岐にわたっており、所属しているのも学生から社会人まで幅広く、20〜30人。やはり皆「いい人」ばかりだ。

最初に、アレ、と思ったのは、Aさんの存在。
その人は、リーダーというよりは圧倒的なカリスマという感じの人だった。
この人が、事あるごとに私のことを褒める。褒めまくる。内容は本当に些細なことで、例えばスポーツをやっていて、初めてなのに積極的にシュートを狙ってすごいね、とか、英会話教室で質問してえらいね、とかそんなものだ。
それにより、周りの人も「Aさんに認められるなんてすごいね!」と私に注目する…
最初は嬉しかったが、毎度毎度だと落ち着かない。

そしてサークルへの参加回数を重ねるうちに、このAさんと幹部クラスのメンバー数名で、共同生活をしているということがわかった。
郊外の大きな一軒家を借り、ルームシェアをしているという。

「今度あなたの歓迎会をしたいから、おいで」

Aさんから言われたのは、活動に参加し始めてひと月ほど経った時だった。


つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?