思い出の、あの映画シーンに誘われて(旅情 ヴェネチア)

第2位 旅情(イタリア ヴェネツィア)・・・フィナーレの別れのシーンにあこがれて

2003年にキャサリン・ヘップバーンが亡くなった。96歳だった。あまりの長生きにびっくりした。ヘンリー・フォンダとの「黄昏」で元気に演技していた。といっても40年前の話だから当たり前ではあるが・・・オードリーと比較して「本物のヘップバーン」なんて言い方をする人がいたが、同じヘップバーンだからといってあまりに酷い言い方だ。じゃあ、聞くが、キャサリンにあの「昼下がりの情事」のアリアーヌの可愛さが出せたかとツッコミたくなる・・・こういう言い方をするとオードリーの方がキャサリンよりと思われがちだがあくまでキャスティングが良いかどうかだ。その意味で旅情のキャサリンははまり役だったと思う。むしろ、相手役のロッサノ・ブラッツィのバタ臭いイタリア男の方が気になった・・・

さて、旅情の舞台ヴェネツィア。初めての旅行で行ったので興奮も手伝っていたが、ヴェネツィアという水に浮いているような町の姿は本当に感動した。古い言い方だが「マジカンドウした」てなところ。

 サンマルコ広場に立って教会と鐘楼を仰ぎ見て、視線を下に戻せば、カフェ・フローリアンのオープンカフェにキャサリン・ヘップバーンが興味深そうに人を見ている・・・しばしの回想に酔いたい。

ホテル・ダニエリの屋上レストランから暮れなずむ景色の素晴しさについても天正遣欧使節団のくだりで触れたが、グラン・カナルが切れるところに建つサンタ・マリア・デル・サルーテ教会からサンジョルジョ・マジョーレ教会の風景が最もヴェネツィアを代表する風景ではないかと思うが、そのサンジョルジョ・マジョーレ教会の鐘楼からヴェネツィア本島を見渡して欲しい。因みにこの教会にあるティントレットの「最期の晩餐」と「マナの収穫」は必見だ。(これも、天正遣欧使節団の件で紹介済みです。)

他にも、普通の観光ではサンマルコ教会と隣のドゥッカーレ宮殿で終わってしまうが、時間を作って行って欲しい場所がたくさんある。前段のサンジョルジョ・マジョーレのほか、アカデミア美術館、ベギー・グッゲンハイム美術館。テントレットの傑作があるスクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコ。近くにティツィアーノの「被昇天の聖母」のあるサンタ・マリア・グロリオーサ・ディ・フラーリ教会にも是非。ベリーニの多翼祭壇があるサンティッシマ・ジョバンニ・エ・パオロ教会。教会は宝物の山だ。更に時間を作って、ヴェネツィアの発祥の島トルチェッロ島やガラス工芸博物館のあるムラーノ島、レース編みと映画「ファニー」を連想させるカラフルな漁村ブラーノ島めぐりもお薦め。更に更に、ヴェネツィアは歩いて町を見るのが基本だが、グランカナルを水上バス・バポレットに乗ってカナルから町並みを見るのも良い。最後は旅情のクライマックス、サンタ・ルチア駅でバポレットを降りてしみじみと映画のシーンを回想する。私が監督でなくても撮影をしたくなる町。それがヴァネツィアだ。

画像1

(グランカナルからサンマルコ教会の鐘楼、ドゥッカーレ宮殿を仰ぐ・・・Wikimedeaより)

画像2

(サンジョルジョ・マジョーレ教会。教会正面はパッラーディオ作・・・Wikimedeaより)

画像3

(サンマルコ教会正面・・・Wikimedeaより)