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「プロフェッショナリズムがいいものを作る。」〜TYA香港 植木伸彦さん〜


こんにちは!飛田ゼミなんでも取材班の福井あみです。

今回は企業取材ということで、私がリモートでインターンをさせていただいているTYA香港のCEO植木伸彦さんにインタビューさせていただきました。TYAは、香港の他にも東京、シンガポール、ベトナムにも拠点があり、ブランディング、TVCF企画制作、グラフィックデザイン、デジタルマーケティングなどを行なっている会社さんです。

植木さんは香港、私は日本からzoomを繋ぎ、オンライン上でのインタビューになります。
仕事を始めたきっかけから、学生へのお言葉まで幅広く語っていただきました。海外で働きたいと思っている学生の皆さんにもぜひ見ていただきたい内容となっております!


インタビュー


○アジアで働くきっかけ

ー今日はありがとうございます。

植木さん「いいえ、とんでもないです。」

ーでは最初に軽く自己紹介をしていただいてもよろしいでしょうか?

植木さん「香港でTYAというデザイン会社をしている植木と申します。上海に3年間、香港に22年間で日本を出てから既に海外生活25年になります。デザインやマーケティングの仕事は学生の頃からやりたかったので、今それを仕事にできていて嬉しいです。海外で働くことも刺激的で、大変なこともありますが楽しい毎日を送っています。」

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植木さんのお写真です。

ー25年も海外にいらっしゃるんですね。すごい…。

植木さん「そうなんですよ。でも、こんなに長くいようとは考えていくて、最初はせいぜい5年くらいやれるだけやってみようと思って来ました。でも幸運なことに、1、2年目くらいから良い話や面白い話が沢山あって、やってるうちに人との繋がりができたり、上海だけでなく香港でもやってみないかという話が広がっていって今に至ります。」

ー海外で働きたいと思っていても、一歩踏み出せない人が多い中で、やってみようという気持ちで海外に行けるのはすごいですね。

植木さん「確かにそうですね。僕は後先考えずにやっちゃうタイプなので…(笑)でも、このチャンスを掴んでおかないと絶対後悔するだろうなって思ったんですよね。」

ー最初から英語や中国語が話せたわけでもなかったんですよね?

植木さん「はい。もし学生の頃にTOEICを受けていても600点くらいしか取れなかったのではないかなと(笑)アジアにも興味があったので、中国語も少し勉強していたのですが、こっちに来た時はほとんど話せませんでした。」

ー本当に飛び込んだって感じですね。

植木さん「もちろん最初から語学も含めて様々なことが出来るに越したことはないけど、足りないものがあってもいろいろな道筋があることを痛感しました。」

ー今は英語で会話されているんですか?

植木さん「そうですね。香港は大体の方が英語で教育を受けてきているので、英語で意思疎通を図っています。中国語は、上海にいる時に勉強してそこそこ話せるようになったのですが、香港は広東語を話すんですよ。標準語より声調の数が多くて、広東語は無理ですね。」

ちなみに、現時点でTOEIC905点だそうです!

https://medium.com/@uekinobuhiko/アジアで働くようになったきっかけはなんですか-1-54c2a45f94b1#.rmat8548h
こちらが植木さんのブログになります。海外で働くようになったきっかけが詳しく書かれていますので、こちらも是非お読みください。


○日本と香港のギャップ

ー香港に来て、やはり日本とのギャップは感じましたか?

植木さん「はい。日本人は細かくて、ディテールにこだわったり、組織内である程度の理解を共有してから物事を進めるじゃないですか。そういうのは香港ではあまりないです。上司や先輩からのフィードバックもほとんどありません。香港では、いかに早く効率よく終わらせるかが最も大事な価値観なんです。」

ーなるほど。全然違いますね。

植木さん「履歴書の自己PRとしても、いかに早く仕事を身につけられるかをセールスポイントとして書いている人が多かったです。早さを求める香港とディテールにこだわる日本、どちらが良いとは言えないですが、精度という面で言えば日本の方が優れていると思います。」

ー確かにそうですね。

植木さん「最初はその違いを人ごとのように面白がっていたのですが、だんだんと自分ごとになってきて大変で仕方ありません(笑)」

ーそのギャップにはどう対処されたんですか?

植木さん「まずは仕組みを作るしかないと思って、こういう仕事が来たらこういう風に進めていこうという手順を決めました。それでも自分の求めているものと全く同じかといえばそうではないけど、きちんとステップを踏んでいるところで自分としては納得がいくので。自分で納得がいくということは、お客様にちゃんとおすすめできるということに繋がるしね。」

ー社員は香港の方ですが、その仕組みに対して何か反応がありましたか?

植木さん「ありますね。手順を踏むということで、今までより忙しいしそれがめんどくさくなって、やめていく人もいました。」

ー香港の方は仕事をやめることに抵抗がない人が多いんですよね?

植木さん「めちゃくちゃ抵抗ないですね(笑)この間辞めた2人のうち、1人は7ヶ月、もう1人は3日。22年やっている中で、1週間以内で辞めた人は3人います(笑)広告・マーケティング業界は、30歳までに平均で5社は経験してますね。」

ーえっ?3日ですか!?衝撃、、辞めた人は何が不満だったのでしょうか?

植木さん「うーん、、新しい会社からオファーを貰って、そっちの方が給料が良かった場合とか、思ったより仕事がきつかったとか。あとは、複数のタスクを課すとその分給料を上げてくれって言われます。」

ー働き手からしたら良いですけど、経営者側からしたら大変ですね。日本と全然違う……。


○仕事のやりがい

ー現在さまざまな業務をされていますが、仕事のやりがいは何ですか?

植木さん「企業さんから課題をいただいて、試行錯誤しながらその解答を導き出した時がまず最初の喜びです。」

ーなるほど。

植木さん「そして、植木さんのところでやってもらって良かったと、それを評価してもらうのが2つ目の喜び。最後に、次の仕事にも呼んでもらえることですね。自分が持っているものが形になる瞬間はやっぱり良いです。」

ー私も自分が持っているものが繋がった時はすごく嬉しかったです。では、経営する中で大切にしていることや、軸となるものはありますか?

植木さん「あまり嘘を言いたくないというか、適当に済ませたくないというのがあるんですよね。だから、少なくとも自分のベストは尽くす。さまざまな制約がある場合でも、その与えられた条件の中で満足できる結果を出すために頑張るということですね。」

ーやはり、やるなら自分の満足するものを提供したいという気持ちが大きいですよね。

植木さん「そうですね。そうじゃないと、上手くいかなかったなぁ、、とずっと引きずっちゃうんですよね。」

ー日本の会社は企業理念などを社員と共有していますが、TYAさんでもされてますか?

植木さん「丁寧に取り組もうということは言ってますね。うちは香港でビジネスをやっていても、日本で立ち上がった会社ですし、丁寧にやらないと存在意義がないですからね。"丁寧さ"で他社との差をつけていこうよと。丁寧さって、人との関わり方もそうですけど、ものづくりには不可欠な要素なんですよね。結果として出来上がりの質も上がってこなきゃいけない。」

ーなるほど。

植木さん「うちのサイトにも載っているビフィーナSのCMは福岡で作ったんですけど、その時は丸一日ずっとスタジオにいました。朝5時に現場入り、終わったのが深夜の2時でした。これを香港でやっていたら、多分午後6時くらいに終わっていたでしょうね。やっぱりディテールにこだわるその場の熱量が違うから。」

ー早朝から夜中までですか!

植木さん「事前の準備もすごくて、タレントの女性が動く演出もプロの振付師さんが考えたダンスで、全部で2分くらいの長さのものなんですよ。たった15秒、30秒のCMですから、ダンスのシーンはたった1,2秒なんです。それを前日からきちんと何回もリハーサルをしていました。」

ーきっちりリハーサルをするのは日本らしいですね。

植木さん「そういうプロフェッショナリズムがいいものを作ると思います。日本のいいところです。ですので、丁寧な取り組みがいいものを生むんだと思っています。」

こちらがそのCMです! https://youtu.be/hCllqP5cl9g


○求める人材

ーそうだったんですね。では、そういう丁寧さを武器にしている会社さんが求める人材とは何でしょうか?

植木さん「難しいですね。指示したことをそのままやるのは誰でもできるじゃないですか。やはり、自分で考えて工夫して、それに新たな価値を付け加えられる人じゃないですかね。」

ーそれは大事なことですよね。

植木さん「大企業の場合は縦割りの組織があって、それぞれの扱う範囲もはっきりしているので、自分が何をしたらいいか分かりやすいかもしれませんが、うちは少人数だし、毎回取り組む問題の内容が違うので、指示待ちの姿勢では何も生み出すことができないのではないかと思いますね。」

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植木さんの誕生日のお祝いの写真。少人数だからこそ垣根なく関わり合えるのですね。

ーそうですよね。元々勤めていた大企業と今の会社では、働き方もギャップを結構感じられたんじゃないですか?

植木さん「はい。大企業だと部門間で垣根ができたりしますし、やれることも広がりに欠ける場合がある。僕はこっちのものと、あっちのものを繋げることが好きなタイプなので、少人数になって、営業も企画もデザインも、といろいろな役割に携われていることは楽しいですね。」

ー確かに、植木さんのように自分で何かを生み出したいとスタートアップを志望する学生も増えていますよね。今就活生の立場で、会社を選ぶ時の決め手や軸が欲しいんですが、何かアドバイスをいただけますか?

植木さん「就活生が100人いたら、きっと6割くらいが自分が何をやりたいか分かっていないのではないかと思います。うちに来たインターン生も、7割くらいの方がはっきりした志望が決まってなかったし、最初に考えていた業種と最終的に就いた業種が違った子たちもたくさんいました。」

ーそうだったんですか!

植木さん「なので、いくつか見てみないと決められないんじゃないかなと思いますね。その点インターンは良い制度ですよね。そこでどんな経験をするかによって良い指針を得られると思うし。あと、今は業界の垣根がなくなってきていますね。ここに入ったからこの仕事が出来ないということもないと思います。」

ーでは、大手で短期のインターンと小規模で長期のインターンだったらどっちが良いと思いますか?

植木さん「一長一短あるでしょうけど、最低1ヶ月くらいは経験した方が良いのではないでしょうか。この会社に行きたいと決まっているなら、そこでインターンすることは大きなプラスになるでしょうけど、さまざまな業界を知りたいとか、何か実践的なことを経験したいのであれば、小規模な会社の方が多くのことを経験できると思いますね。そうやって使い分けていけば良いと思います。」


○コロナによって

ーコロナによって何か影響を受けましたか?

植木さん「うちはリモートワークがうまく機能しませんでしたね。コロナの感染状況がひどい時期は3週間くらいリモートワークを実施し、感染者数が減った頃から出社日を増やしていって、今は完全にオフィスに来てもらうようにしてます。」

ー急にリモートワークに切り替えるのも難しいところがありますよね。

植木さん「リモートワークの良さは、アジェンダさえきちんと決まっていたら短い時間で結論を出すことができることですが、やりとりできる情報量が対面で話をするのとは全然違うんですよ。どこにフォーカスするかによりますけど、僕はそっちの方を大切にしているので…。」

ーそうですよね。他にはありますか?

植木さん「あとは、コロナによって香港の社会が分断されて人々の気持ちが不安的になったことですね。もちろん半年続いたデモの後にコロナが来たわけですから、経済はミクロにもマクロにもダメージが大きくて。」

ー香港の場合は社会情勢が独特ですからね。やはり売上にも影響がありましたか?

植木さん「落ちましたね。企業さんもこの状態でお客さんが来るかどうか分からないじゃないですか。だから、先行してお金をかけてマーケティングするっていうのは難しいですよね。企業がお金を使わないとみんながどんどん使わなくなるという悪循環になってしまう、というのはやっぱりありますよね。」

ーコロナ禍で新しいビジネスを始める会社もありますが、TYAさんでも何か新しい取り組みをされましたか?

植木さん「例えば、飲食業のお客様はこれまでイートインが売上の主流だったはずです。それが、営業時間の制限や、お店に入るのにも制限があって、加えて、誰もが外に出るリスクをあまり犯したくないので、テイクアウトやデリバリーが俄然、稼ぐ手段として注目されました。」

ーはい。今ではそれが主流となりつつありますよね。

植木さん「そこで、これまでは導入されてなかったデジタルなツールを使ってのサービスシステム、具体的にはアプリや、サイトなどからオーダーができるシステムのようなものを作りたいという要望も多くなり、その仕組み作りから制作、マーケティングに到るまでを依頼されるというコンサルティング的な仕事が多くなってきていますね。」


○今後の展望

ー今後の展望をお聞かせください。

植木さん「今までは、出来上がったものをどうやって消費者に売るのかということを考えていたけど、商品やビジネスモデルの企画から材料調達、さらには流通やカスタマーサービスなど、ビジネス全体に関わっていけたらいいなと思います。」

ーなるほど。

植木さん「あとは、自分たちでも直接モノを売ったり、体験型のサービスをコーディネートするみたいなことを提供できるようになればいいなと思いますね。現業と新しいビジネスのバランスを保ちながら、徐々に新たな成功体験を作っていけたらいいです。これが言うのは簡単ですか行うのは難しいのでぜひ手伝ってくださいね(笑)」

ーはい(笑)

植木さん「あとは、ベテランの方は経験がたくさんあっていいけれども、成功体験があるから新しいことに挑戦するのが難しいので、若い方々の好奇心やエネルギー、突破力が非常に大事ですね。」


○学生に向けて

ー最後に学生に向けて一言いただけますか?

植木さん「今世の中がすごいスピードで変わってきている中で、その変化を柔軟に取り入れたり、新しいことを作っていけるのはやっぱり若い人だと思います。僕らの頃に比べても大学でみなさんが習っていることがストラテジックになっていると思うし。是非とも頑張っていただいて、日本を良くしていただきたいです。これからも世界は狭くなっていき、外国の人たちとのお付き合いはますます増えます。日本人はすごく良いものをたくさん持っている国民だと思うので、どこにいても負けずに頑張ってほしいなと思います。」

ー日本のいいところを残しつつ、海外の良さも取り入れていけたらいいなと思いますね。

植木さん「そうですね。でも損しちゃいけないと思うんですよ。日本人はつい、いいものを安く提供しがちですよね。いいものをちゃんとしたお値段で提供することが大事なので、その仕組みを若い人と一緒に作っていけたらいいなと。今は大学生の頃からビジネスを起こしたり、自分たちで活動している人が多いじゃないですか。どんどんやって欲しいなと思いますね。自分たちだけでやらないで、たまには年寄りも仲間に入れてほしいですけど(笑)みんなで幸せになりましょう!」

ーありがとうございます!私も、みんなで幸せになれる社会をみんなで作っていくことが1番良いと思います。

植木さん「最後に、海外で仕事、香港、広告やマーケティング全般について話を聴きたい方がいればいつでも連絡してください。
e-mail: ueki.nobuhiko@gmail.com 或いはFBメッセンジャー: Ueki Nobuhikoまでどうぞ。」

ーありがとうございます!


最後に

いかがだったでしょうか。
自分の気持ちに正直に、とにかくやってみようと海外に飛び込んだ植木さんの行動力には感服しました。アジアで働くきっかけから、学生への前向きなお言葉まで、さまざまなことをお話ししていただきありがとうございました。
個人的には、インターン先の社長さんと多くの話ができてとても良い時間になりました。今後もインターン生として、さまざまなことをお手伝いさせていただきたいと強く感じました!


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