サイドボードの話~後編~

賢明な読者諸君ならもう気づいているかもしれないが、この話には前編がある。この記事だけ読んでいただいても構わないが、こちらが後編である以上、前編も多分読んだ方がいい。一応、こちらに乗せておくからね。

サイドボードを行う大前提の話

サイドボードというのは原則、メインに不足している要素を追加するものである。それが一体どういうものなのかは前編の通りだが、メインに不足する要素というのはどういうものなのだろうか?

妨害の増量

除去、ハンデス、なんでも言えることだが自分がゲームに負けないためのものであるはず。ということはこれを入れるためにゲームに勝つカードを抜くことはあり得ない。そして、マナカーブを崩壊させるような無茶なサイドボードだってしたくない。どうやって自分のデッキと向き合うか?
答えはふたつある。一つは最適化。対戦相手にそぐわない妨害を抜いて、適切なカードを足す。これができればこんなに悩むことはないだろう。
もう一つはプレイできないゲームの駒をいっそ抜いてしまうことになる。
撃ちたい時に撃てなくなる可能性があるカードなら抜いてしまえば少なくともミスは起きない。そして、それがゲームに影響を及ぼす可能性も低いという公算だ。これがうまくいかないのであれば、そもそも妨害の増量という選択が間違っている可能性があるので、自分のメインの動きをもう一度見直す必要がある。それは、お互いに押し付けあった時にどちらが強いのか、相手はそれに対して妨害を用意してくるか、ということを考える必要があるということだ。相手が使うカードに対して妨害を用意することが必ずしも適切ではないということは覚えておいて損はない。

フィニッシャーの増強

この場合、自分のプレイを押し通すための妨害もここに含まれる。このプランをサイドボードから行うということは、少なくともメインの動きは有利で、サイドボードから不利にならないようにこちらもカードを用意するということになる。
これは実は前者より難しい。なぜなら本来サイドボードなんかなくても勝てるようなマッチで、対戦相手がこちらに対して何を入れてくるかを考える必要があるからだ。これを間違えてサイドボードすると、メインの動きが弱くなって隙を作ることになる。アグレッシブサイドがあるならここは非常に強力だが、そうでないことがほとんどである以上、ここは特に慎重になるべきところだ。こちらはいっそサイドボードしないというのもひとつの選択肢になる。

メインとサイドの密接な関係

自由枠、というものがメインにはある。逆に、なぜサイドに自由枠がないのだろう?意外と疑問に持つ人は少ないようだ。
メインの自由枠って、大半のデッキがサイドボードに採用しているようなカードが採用されていてはいけないのか?そうなると考えることはメインにもありそうだ。

自由枠の定義を考える

メインでやりたいことがなんなのか、ということにもなるがゲームに勝つためのカードと、少なくともメインでは目的をもたない打ち消し以外は全て自由枠と考えている。
対戦相手によって必要かどうかわからないカード、とも言うだろう。サイドボードで抜けうるカードは、こうした自由枠から調整が入るのが基本である。つまり、自由枠とはメインからサイドカードが入っているといっても過言ではない。自由枠とはメタ読みの産物であるということを意識するとサイドボードでの間違いは少なくなるだろう。

自由枠=妨害の場合

自由枠に妨害を入れられるくらいなので基本何も言うことはないだろう。サイドボードに用意されるカードはさらなる妨害か軸をズラすカードか、これは完全に好みの範疇になる。おそらく後者の方がサイドボードとして適しているが、それはあくまで環境によるのでこの記事では答えは出さないことにする。特筆するようなことがないという点において、これができるのであればサイドボードの枠は余っていると言えるのであまり悩まずに組んだ方がいいはずだ。

自由枠=デッキの軸が二種類以上ある場合

これがちょっと難しい。ひとつ減らして負けないようにするのか、減らさないままに押し付け続けたほうがいいのかというのは同じカードを入れる場合でも抜くカードは当然異なるし、デッキの強度がそれぞれで大幅に変わってしまう可能性があるからだ。こういうことを行う場合、サイドボードは徹底的に丸く作る必要があって、対戦相手のことも熟知している必要がある。理解とは、それだけで構築そのものに影響を与えるので当然それにそったプレイも行う。同じアーキタイプでも人によってプランが全く異なることがあるのはこういう理由で、サイドボードの練度の差というものが出るのはここだ。そして、こういう場合は裏目が出やすい。できるだけ最小限にサイドボードを行いたいが、メインゲームを落としたとあればそうは言っていられないので大胆な動きをしなくてはいけないかもしれない。これは、サイドボードだけではできないので本記事で解説するには非常に難しい話だ。

以上を踏まえたメインとサイドの合計枚数

ゲームを遂行するカードと負けないためのカード、対戦相手と比べてどちらが多いかというのが最も分かりやすい指標になるが、これらをプレイするための土地やマナソース、そしてそれを探すカードの有無も問われる。
メインから打ち消しが入ってて、サイドから打ち消しがさらに入るような構成をとった場合に、それが適正より多くなるともしかしたら自分のゲームを遂行するカードが相手の妨害を下回ってどうしたって勝てなくなるかもしれない。こういうことが起きる可能性があるから時間の概念もかなり重要になる。そうなると本項目とはまた違う話になるのでこれについてはまた別の機会に話をすることにしよう。

結局、適正に入れ替えるとはどういうことか

諸君、待たせたね。この答えが欲しかったのだろう?

そんなもの、ないよ

すまない、ちょっと冷めすぎかもね。でも、ないんだよ。ないんだ。
なぜならメタゲームは常に変化する。最適なものを見つけた時、すでにそれは時代遅れなことが大半だ。諸君が一番最初に見つけられるならこのような記事から学ぶことなんか何一つないだろう。
常に最適解を追う姿勢は必要だが、それにはもちろんセオリーというものはある。サイドボードを作るところからそれは試されているし、そしてそれはメインの構築から始まっている。サイドボードの枠が足りないのはすなわちデッキ強度が低い可能性がある、ということを思い出してほしい。そうじゃないけど負けが込む時はサイドボードを正しく作ったか、そしてサイドボードを正しく行ったか、こういう順番だ。
適正な入れ替えというのは対戦相手によって異なるし、その対戦相手でもそれが適正でなくなっていることもあるくらいなので、セオリーを学び、そしてセオリーに振り回されないのがもっとも重要なことであるという話をして、この長い話を終わりにしようと思う。
この記事で諸君の明日が変われば、この話にも意味があるだろう。


本記事は基本無料となっているがお賽銭箱を用意させていただいている。
もし、お賽銭が入っていれば喜ぶし入れてくれた方に沿って戦略記事を書くこともあるだろう。あぁ、もちろん聞き流してくれて構わない。しがない地方プレイヤーの戯言なのでね

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