金の延べ棒

『人生最大のターニングポイント』

「テレビの前のみなさん、ごきげんよう!今週もやってまいりました『おとなりの金持ち先生』です。この番組は、一般のお金持ちの方々をお招きし、お金持ちになるまでのストーリーやその秘訣、独自の思考法などをうかがう番組です。第65回目となる本日は、東京都港区に住む田中富夫さんにお越し頂いております。田中さん、こんにちは!」

—どうもこんにちは。

「それでは早速ですが、田中さん。あなたがいかにして巨万の富を築き上げたのか、その軌跡をお話し頂いてもよろしいでしょうか?」

—ええ、わかりました。少々緊張しておりますが、喜んでお話しいたしましょう。

 思えば、私は、大学3年生まではどこにでもいる普通の人間でした。特にこれといった長所もなく、大学卒業後はふつうのサラリーマンになり、ふつうの家庭を築き、そしてふつうに老いていく——そう思って生きていました。

 しかし、きっかけは突然、訪れました。大学4年生になったばかりの春のことです。道端を歩いていると、ふとリンゴが落ちているのを見つけたのです。私はそれを拾い、布で丁寧に磨き上げました。すると、とてもキレイになったので、街に出向いてそれを売りました。

 次に、手に入れたお金で新たにリンゴを2つ買いました。そして、またその2つのリンゴを売り、得たお金で今度は4つのリンゴを買いました。

 こうして2週間後にはリンゴを入れるカゴを買うことができました。それからも私は、「仕入れて売る、売っては仕入れる」を愚直に繰り返し、半年後にはリンゴを運ぶための小さな中古車も買うことができました。

 そしてこのとき、人生最大のターニングポイントを迎えました。わたしの祖父が突然この世を去り、数十億円の遺産がわたしに転がり込んできたのです。

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