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普通の基準

わたしの日常はごく普通だと思っているのだが、他人から見ると少し変わっているようで、日常の中での出来事が面白すぎる~といわれたので、お恥ずかしいこととは存じますが触れることにしました。

どこが面白い点なのか自覚は全くないもので、どういうところなのかというそのツボ探しをしたいし、それは何なのかと知りたかったので、落ち着いて目を閉じて瞑想してみることにしました。

目を閉じると、間も無く浮かんできたのは、昨日の普通の出来事の映像でした。あの出来事は他人から見ると面白いのか?ということで、試しにブログを書いてみることにします。

わたしにとっての久しぶりの重大事件(魂と肉体との分離)が起こる二日前のお話が始まりとなります。
突然娘がわたしに「いよいよ一人暮らしをするので家を出ようと思っている」と言われ、その時に頭の中と胸の中が空き缶よりも軽くなって宙に浮かんだのを感じた。
状況をすぐに飲み込めず、口だけの人間になったような感覚で、「なに、そうなんだ~それはまた突然だね。寂しくなるじゃないの~」と、母親らしくない台詞。ただそれだけしか言葉が話せなかった。

娘は自立生活ができるような生き方をしていなかったので、『気持ちはわかるけど、突然そりゃ無理だろ!どうやって、どこで生活するのよ~?』と心の中で呟きながら、目からそういった周波数なる振動を娘に発した自分がいた。

引っ越し代はいくらかかるのか、電気代ガス代など最低どのくらい必要なのか。
生きているだけでかかる経費ってものがあることを知っているのか?
トイレットペーパーが相場でいくらなのか。シャンプーは何を買うのかなど、それらに対応している娘の姿がわたしには全く頭に浮かばない。

それにこちらの心の整理という時間が欲しいところで、
静まりかえった家の中で、わたしはどう振舞えばいいのか映像が見えない。
先ほど寂しいとは言ってみたが、自分を観察してみると涙は出てこない。
いや、寂しいのではない。自分の中心を自力で捉えられなくなり、
身の振り方をどうしていいのかわからなく、今すぐにゴロンと転がってしまいそうな心細さに瞬時に陥ったのだ。

神はいつもわたしのそばにいる。
しかし平和なわたしの日常を一変させるくらい無理難題のカードを突然叩きつけ、
『いつまでそれを続けられると思っているのかい。そんなことではダメさ。さあ。次はこれを超えられるかい?』と極悪非道の悪役の表情をするいつもの神がいることを知っている。
『今、答えなどは出せません。ただ立っているだけで精一杯です』とわたしは答えたのだった。

あくる日早朝、出ていく娘を見送りながら外に出た時、庭先に置いてある元気を失いかけた観葉植物が目に止まった。まるで植物が今のわたしの気持ちに共感してしまったかのように感じたので、光不足だと感じ慌てて朝日の当たる場所に植木鉢をかかえて移動させたのだった。

しばらくすると、知り合いが訪ねてきたので玄関先に出てみると、「あの~すみません。やらかしてしまいました。駐車するときにぶつけてしまい~」と平謝り。わたしは直感的に「え。もしかしたら、植木鉢ですかっ?」とわたしは両手を頭に乗せた。やはりそうだということで、そこからだ。わたしの魂は肉体を離れた。

相手は申し訳ありませんと丁寧に謝っている状況を、わたしの肉体をスルんと離れた魂が、頭の少し上のあたりからこの状況を第三者的な視線でみているような感覚になった。
わたしが分離している?

肉体の方はただそこに抜け殻のように立っているわたしがいるだけで、そこには感情も思考も何もない。本体は抜けた魂の方であって今の状況をしっかりと観ている。その状況を観ている視点の高さの位置でわかるのだ。

ショックを受けたわたしのしぐさを見たその人がとっさに、「同じものを弁償します」と言っている状況を、冷静に少し上から魂が観察している。
「いえ。そういうことじゃないのです。心が。。いいえいいのです。あの植木鉢は、銀座のアンティークショップでの出会いで、あれはある陶器作家さんの一点ものでして代替え品はこの世に同じものはなく、もう手に入らないものでその植木鉢は。。。」と何を言っているのか筋の通らない台詞を何度も言っている自分がいる。
頭上から観ている自分は「あはは。おかしなことを言ってるよそれ!」と魂の方から送られてくる。「あれはもう君の今の時代には合わないもので、ただそれだけだよ。いいも悪いもない。もともと不必要なものは自然に崩れ去り空にもどるのさ。」と肉体の自分に伝えた。両方とも自分でなのである。

わたしは以前から自分にとって対処でき難い、あまりにもショックなことがあると、どうやら魂と肉体がついうっかり分離してしまう癖がついていることをその時に思いだした。

娘の訳のわからぬタイミングの引っ越しのショックと、大切にしていた珍しい植木鉢のコッパ微塵になった姿を目の当たりにし、過去の心の損失が一気に重なり起こり衝撃を受けたのだった。

『神さま。あまりに酷です。こんな不安定な心の時に、どうしてわたしの手元からさらに大切なものを無くし手放さないといけない状況を作るのでしょうか!』と目を空に向け、半分怒りながら思いを投げた。もちろん冷ややかな風だけが通りすぎるだけで即答などない。

しばらくその場に立ちすくんでいると、やっと肉体と魂が合致したので気を取り直せる行動ができるようになってきた。
全てのスケジュールを後回しにして新しい植木鉢を近所の花屋さんに買いに行くことにした。

元気を失った観葉植物が割れて粉々になった陶器と土に挟まれ地面に横たわり、『ねぇちょっと早く~観てないでわたしを助けてよ~!葉の先が挟まってしまい痛いですけど!』と声が聞こえ、散らかった陶器のカケラを横に避けてから向かった。
わたし好みの器があるわけではないが、とにかく行かなくてはならないと思った。

花屋さんに行ってみると、直ぐに目についたのはプラスティックの花器で、形はプリンアラモードが入っているようなフォルムの可愛いものを発見した。
さらにこれであれば激しく割れないだろうと予測したので迷わず購入し、気分上々。
帰って直ぐに土を入れて、観葉植物を植え込んで水を注いだ。

これでわたしは新しい気持ちと向かうのだ・・・という感覚になったタイミングで植木鉢を壊した人から連絡が入った。
どうやら損害保険ですべて補うことができるのでご安心くださいとのこと。まだ具体的な物事は動いていないのですが、失いかけて心が少し戻ってきたものを感じた。

そうこうしていた次の日の晩、突然娘が泣きながら家に帰ってきた。
どうしたのかと尋ねると、バイト先でトラブルになりシフトを入れてくれないという仕打ちをされたと悔し泣き状態であったので、渋々家に戻ってきたという話だ。

神様ぁ
あの~!
振り幅をもう少し抑えてくれませんかね。

日暈 鸞

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