【エッセイ】僕とチョッパーと

バイクは18までシャコタンは20まで

それが当時の世の中との約束
二十歳を過ぎてから、ましてや中高年が暴走族の真似事をするなんて考えられなかった時代

18歳からの2年間、稼ぎと時間の全てを費やしたクルマ。だけど二十歳を契機にそれを卒業した僕は、物足りなさを感じながら毎日を過ごしていた。

多くの仲間がおしゃれな車に乗り換え、白いポロシャツの襟を立ててセカンドバッグを持った。

でも僕にはちょっと。

クソみたいなDCブランド
クソみたいなドラマ
クソみたいな音楽
心の中で中指を立てる。

そんな中、少し前から髪を伸ばし始めた先輩は、ウエスタンブーツにブーツカットを履く。
「それ、なんて言うジーパン?」
「おーこれ?リーバイス517」
「ブーツは?」
「トニーラマ」

その後もショットにバンソン、レッドウイングにチェーンウォレットと、僕は先輩を当然のように追いかけた。

そんなある日、先輩の店に見慣れないオートバイが止まっていた。今まで一度も見たこともないオートバイだった。
「誰の⁈」
「あぁ俺の。ええやろ?」

先輩が跨ったその姿は、僕の小さな右脳を大きく揺さぶることになった。




それから知ったこと。

普通の人とは違う乗り物
流行りのスタイルに中指を立てて走る乗り物
不便さを追求する乗り物
ある人は「走ること自体が修業のような乗り物」とも言った。

それはやがて、反骨心に溢れた僕の心を満たしてくれる乗り物になり、僕は、その世界に傾倒していった。




50の半ばを過ぎた今。
僕はガレージに入りきらないほどのオートバイに囲まれている。

それでも時々、物足りないと感じることがある。

それはあの頃、チョッパーで満たされていた僕の心とのコントラストにほかならない。

「乗ればいいじゃない」

そうじゃない。

今の僕の心には、あの頃のような反骨心がどこにも見当たらないんだ。

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