防疫作業従事をちょっと違う角度から

今朝4時半に自宅を出発。千葉県いすみ市に向かった。7時までに集合するようにと言われていたが、時間ギリギリになど到着するなどもってのほか。ナビは6時半を示していたが、到着したのは6時10分。(スピード違反はしてません、あしからず)
到着すると、まずは本部にショートメールを送信する。すると、すぐに電話がかかってきて「6時半から受付が始まります」とのこと。
1番(おきまり)に受付をすませ、会場に。作業するときに使う防護服、それも中用、外用、マスク、手袋(これも中、外)、キャップ、ゴーグルを受け取り、着替える。(緊張感高まるー!)
私は初めての従事なので、まわりで着替え始めた人を観察し、なんとか着替え終える。県庁からのバスで来ている要員はぎりぎりに到着なので、全体の説明が始まったのは7時半近く。ただ、ほとんどの方が着替え終わっているので、説明というよりは確認の連絡。
全員がそろい、「それでは班ごとにバスに乗ってください」と声がかかると、靴ははかずに靴下のままバスに乗り込む。向こうについてから長靴をはくためだ。
バスが出発するも安全運転のためか、かなり遅く感じる。このスピード感がこれからの作業を重々しく感じさせる。しかも、当たり前だが誰も話をしない。
1点、嬉しかったのは到着時、暗くてわからなかったのだが、会場を出た瞬間、太陽が見えたのだ。不謹慎だが、テンションがあがってしまった。仕方がない。太陽を見ると、自然にスイッチが入る。ワクワクしたわけではないが、雪だと言われていたので、少しだけ気持ちが軽くなる。
しかし、防疫作業をする場所に到着する際、会社の看板が目に入ってきた。
『履歴書付きで卵をお届けします』
しっかりとした卵をこれまで届けていたのだろう。この看板を見て、太陽で軽くなっていた気持ちがまた重くなった。
時計もない場所だったが、おそらく始まったのは8時半。
到着すると、長靴を履き、手袋をし、テープを使ってすきまをぐるぐる巻いていく。そして、最後にゴーグルをかけ、現場までトラックで移動した。
私のチームに与えられた作業は、透明のビニル袋に殺処分された鳥(おそらく10羽ずつ)を大きな袋に20ずつ詰め込んで(1つの大きな袋に200羽)口を閉じる、というもの。
作業の流れとしては、


トラックで殺処分された鳥が運ばれてくる→私たちがトラックの荷台から運び、大きな袋に入れていく、

という単純なものだが、私は教員ということもあり、この作業が始まった時に、ある視点でこの作業を見てしまった。
それは、誰がどんな仕事をするか、ということである。(教師の悲しい性…笑)
トラックの運転を申し出る者、トラックが来ると真っ先に荷台のストッパーをはずす者、トラックの荷台に乗っかりほかの人がとりやすいように動かしてくれるもの、必ず、鳥の袋を運ぶ人、袋を広げて数える人。
誰に指示されたわけでもないのに、16人のメンバーがてきぱきと動き、仕事を進めていく。
そんなとき、K君(20代に見えたので君づけにします)の動きが目にとまった。
彼は、大きな袋(何も入っていないので軽い)を運び、みんなが鳥を入れていくのを数えてくれていた。「1、2、3…はい、ラストです」と。20袋入ると、最後、その袋のてっぺんをしばり、中から出てこないようにする。(もう死んでいるので自力では出てこないが)
それが終わると、次の袋のところに行き、また、袋を広げ、数え始める。
2、3回続いたので、「これはもしや…」と思っていたら、それを何度も何度もやっていた。他の袋を誰かが広げていると、違うところに置いてあった袋をわざわざ取りに行き、別の場所で待機。誰かが入れにくるのを待つ。どう見ても20代。しかし、重い袋をせっせと運んでいるのは、私のような50代やK君よりも年上の方ばかり。
もっと、びっくりしたのは、途中、トラックが来るまで時間が空くのだが、鳥を20袋詰め込んだ袋にこしかけ、目を閉じているではないか。なんということだ。すでに死んだ鳥とはいえ、ちょっと前までは生きていたんだぞ。しかも、我々が口にする卵を産んでくださっていた生き物に対して、お前はモノ扱いするのか。最後の最後まで彼の行動は同じだった。
どこの部署から来たかわからないが、おそらく、彼の仕事ぶりは容易に想像できる。大変なところは人まかせ。自分がいかに楽をするか、しか考えないのだろう。
きっと、大切なことを教わらずに大人になってしまったらしい。
まあ、いい。私にはかかわりはない。しかし、この人物のいる部署は不幸だと思う。たぶん。きっと。いや、そうに違いない。
まあ、それはともかく、私は、よく働くUさん(おそらく30代くらい)とコミュニケーションを取りながら楽しく仕事をした。彼はとにかく、鳥の袋を運んだ。私の手伝いもよくしてくれたし、助けてもくれた。やはり、仕事というのは、こういう人物としたい。そして、ちょっとでも楽しく効率よくやりたい。
はじめは雪だろうという予報だったが、作業開始時は晴れ、途中、汗ばむくらいだったが、ちょうど終わりになる頃、ポツポツと。
帰りのバスに乗り込み、朝の会場に向かう時はかなりの降りになっていた。これから同じ作業をする人がいると思うと、申し訳ない気持ちになる。
帰りのバスでは、隣によく話しかけてくれるおじさんが座った。なんでも従事は2回目とのこと。いろいろよく知っている。
いきなり、自衛隊の話になった。
「自衛隊の皆さんも本当にご苦労さんだよな。災害派遣も仕事なんだろうけど、本来の仕事も大切なんだからね。大丈夫かね」
というので、ちょっとだけ返した。
「いや~、確かに国を守るのが本来の仕事だと思うんですが、ちょっと小耳にはさんだ話では、今の自衛官って、災害派遣で助けられた世代が同じように貢献したいからって入ってくるんですって。自衛隊の仕事って、災害派遣だけじゃないんですけどね。テレビでもそういう面ばかり取り上げられてますから、勘違いする人が出てくるかもしれませんね」なんて。
バスが最初の場所に到着すると、大宮からも自衛隊の車が次々に到着していた。遠くから本当にありがたいことである。
いすみ市は、この会場に近くに、「自衛隊の皆さん、有難うございます」と看板を立てていた。大事なことである。いすみ市の良識に頭が下がる。自衛隊の皆さんには1日も早く、本務に戻っていただきたい。(って、俺がいうことではない)


先週は、1月末の2回目の従事はなくなったと副課長から言われたが、新たな感染が出たのだから、きっと、また、従事することになるだろう。その時は、率先して従事させてもらうつもりである。私の室の№2も同じ考えである。(学校でいえば校長、教頭の関係か)下の者よりも先に従事するという考えが一致するというだけで信頼できるし、尊敬できる。こういう人物と一緒に仕事ができていることにやはり、あらためて感謝である。


次に従事する時は違う仕事かもしれない。そのときには、また、いろいろな角度で見てみたい。

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