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Dani California

 我が家は、両親含めて理系家族だ。加えて3姉妹が3人とも、父と同じ建築や都市系を専攻している。顕微鏡やカメラのレンズ関係の仕事をしている母の、「誰かしら同じ道に来てくれてもいいのに」という嫉妬をよそに、我々は3人とも似たような学問に進んでしまった。最初に分岐を選んだ長女からすれば、妹に空気を読んで欲しかったところである。代わりに母の家系から受け継がれたのは、音楽経験だった。

 生業にしていたレベルではないが、母の家系には楽器経験者が多かった。私も幼少期はピアノを習い、中学は吹奏楽部に入り、高校は軽音楽部に片足を突っ込んだものの野球部のマネージャーを経験した手前、大学でアカペラサークルに入り損ねた。

 吹奏楽部時代、学年に2人しかいなかった男子部員の1人、イワホリくんにバンドを組まないかと持ちかけられた。仲の良かった女の子を合わせた3人で、たまに遊び感覚で集まって、薄い記憶だが文化祭に出たような気がする。イワホリくんはお父さんがトランペット奏者で彼自信もトランペットを担当する傍ら、趣味でベースを弾いていた。

 その時彼が教えてくれたのがレッチリだった。Red Hot Chili Peppers。そういえばまだガラケーで、サブスクなんてない時代だ。彼のお母さんがアルバムをCDに焼いてくれ、盤に収録曲を手書きしたものを渡してくれたのだ。今でも大切に保管してある。レッチリのベースがすげえんだ、マジで上手くて好きなんだと、彼は得意気に教えてくれた。当時、そのCDをパソコンに取り込んでウォークマンで聞いてたわ、今思い出した。

 私は特別推していた歌手もいなかったので、そのCDを聴きまくっていた。サブスクでなんでも聴けてしまう今、Spotifyで久々にDani Californiaを聴く。さすがにちょっとエモくなる。私は最初に勧められたボーカルが恥ずかしくてキーボードに転向し、耳コピで足りないギターを補ったのを思い出した。懐かしい。ピアノの練習はあまり好まなかったが、娘に絶対音感をつけてくれた母の功績は私の中で大きい。

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