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劇場版ONEPIECE FILM REDで描かれる、ジャンプとディズニーの思想の激突

もう言われているのか、言われていないのかわからないけど、劇場版ONEPIECE FILM REDに登場するウタという少女は、明らかに『ディズニー的思想』のもとに世界を統合しようとする。彼女は海賊という男の子文化、その戦争と略奪に傷ついた世界中の弱者を代弁し、暴力が完全に排除された世界をバーチャル空間に作り出し、すべての人類の魂をそこに繋ごうとする。そしてそれはもちろん、ある種のファシズムなのだ。
上の世代は、なんとなく尾田栄一郎という作家を理由もなくバカにしてきたところがあると思う。ワンパターンでホモソーシャルな、古臭い絆を崇拝する物語を描いているのだと。そうではない。天竜人のヤバさも含めて、彼は明らかに全世界、ワンピース(ひとつながり)の全体小説を書こうとしているのだ。この映画で描かれるウタの思想、観客を全てぬいぐるみやお菓子に変えてしまうその寓話的な描き方は、ディズニーの世界戦略のど真ん中、本質を撃ち抜いている。これはジャンプ文化からディズニー文化への、文化戦争の挑戦状のような映画になっている。かつて海賊が大好きだったウタは男の子たちに裏切られたと感じ、あらゆる男の子らしさを排除した女の子文化で世界を統一しようとする。
海賊はボーイズクラブそのものだが、脚本にコミットしたと言われる尾田栄一郎は明らかにウタの思想に対抗するものとして自分の作品と海賊たちをおいている。歴史が海賊たちとウタのどちらに軍配を上げるかはわからない。でも200億が見えるこの映画で尾田栄一郎が宣言している戦いは日本の漫画文化にとってすごく重要なものだと思う。

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絵やイラスト、身の回りのプライベートなこと、それからむやみにネットで拡散したくない作品への苦言なども個々に書きたいと思います。

七草日記

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