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【どうすればいいんだ】2020年8月8日(土) J1リーグ第9節 ヴィッセル神戸vsべカルタ仙台【この夏】

スタメン

基本構造

神戸のビルドアップ

・神戸は、まずサンペールを3バック中央に配置した形からスタートします。ピボーテポジションには山口が落ちてくる事が多かったように思います。
・対する仙台は4-5-1で守っていました。簡単に飯倉を使わせないように(数的劣位ができやすい)まずミドルゾーンまで引き、ピボーテは関口を前に出して対処します。
・ウイングはハーフレーンに立ち、中央の配給路を消して外にボールを誘導するような位置取りから、大外に出るとSBとダブルマーク的に挟み込む守備を行っていました。が、そこまで被プレッシャーの強いわけではないHVの運ぶドリブルや、中央を迂回するようなパス,サイドチェンジ(フェルマーレンがよく蹴っていました)などでボールを受けられてしまうような場面も多々あり、前半の神戸はそこからのシンプルなクロスなどを主要な攻め手にしていました。
・逆にサイドを上手く封鎖できている場合は、神戸は前の選手が降りてきてボールを循環させる必要が出てきます。右の小川はハーフレーン突撃などある程度前目でタスクをこなす分、ドウグラスが落ちてくる機会が多かったです。左の郷家はあまり落ちてこず、ライン間でまずは勝負していたように思います。

神戸の敵陣攻撃

・サイドから敵陣に入ることの多かった神戸は、普段よりハイクロスをシンプルに使ってくる頻度が高かったように思います。仙台はウインガーを下げずに4-4で中央を(PA幅)を守るので、普段は後半のオープンな時間帯まであまり仕掛けない西に時間とスペースが与えられます。
・中央は固められていますが、長沢はデスコルガード(カウンター要員)としてあまり下がらないため、その裏から攻撃を継続することはできていました。
・神戸からするとこれはありがたい展開で、高精度のクロスが何本か入るようになります。左にはサイズのある郷家がいるので、右→左のクロスはかなりねらい目です。
・ですが、郷家は一度PA内に入ってしまうとなかなか左サイドのトライアングルに関与することができなくなります。クロスのターゲットとしては確かに機能していたのですが、古橋が普段やっている引いてきて受けて捌くプレーや、SB裏に抜けていくプレーはあまり行っていませんでした。
・よって、いつものように左で旋回しながらのアタックは控えめで、配置はより固定的にプレーしていた印象があります。酒井がシンプルにクロスを上げるシーンが多かったのも、これが要因の1つだと考えます。
・また、クロスがシュートで終えられない場合やカットをされた場合は、トランジションで空いたスペースを使われる危険性が徐々に顕在化してきます。サンペールは自陣に相手を押し込んだ状態だとポジションを上げてピボーテ的に振舞うのですが、そうなると脇のスペースなどで所謂”息継ぎ”が可能となり、SB裏にウインガーを走らせたり、盤面を整理する時間を創出したりすることが可能になります。
・本来ならネガティブトランジションのカバー役として山口を使いたいところではあるのですが、右ウイングに起用されている小川はPAの手前でクロスを待つ動きは得意としていない(Twitterにも書きましたが、SBの裏に抜ける動きはかなり効いていたと思います)ので、結局山口がインテリオールとして1列前に出て行かざるをえません。そうなるとカウンター対策要員は実質3枚なので、かなり無防備な状態になってしまいました。

神戸のプレッシング

・この試合の神戸の最大の問題点は、ボールを回収できなかったことだと個人的には感じています。前節と同じ5-4-1の撤退を軸にボール非保持を組み立てていたのですが、正直な所、課題は積み残されたままで、どこでボールを奪っていきたいのかがあまり見えてきませんでした。
・まず神戸のプレッシングの特徴を整理しておくと、基本的に人を当てる意識が強いことが挙げられます。ウイング/シャドーは固定的に相手のSBを見て、敵CB周辺で数的不均衡ができた場合はインテリオール/CHが一列前に出てプレスをかける運用になっています。後方のWBも基本は縦スライドをいとわず、前に出てくる守備を志向しています。

・上の図に示した札幌戦での課題は2つ。1トップ脇から簡単に前進できてしまうことと、2列目の不適切な前進(主にイニエスタ)でライン間が空いてしまうことでした。

・仙台は2CBとアンカーでまず後方部隊を形成しますが、SBは左右で非対称のポジショニングをします。
・神戸の1トップ、ドウグラスは基本的にボールを片方のサイドに制限する役割を担っているのですが、特段運動量の多いタイプではない為ミドルゾーンから待ち構える守備をする場合はどうしても中央でステイするタスク以外は与えられません。
・そうした場合は2CBvs1トップという数的不均衡な状況を解消する為にいつも通りボールが出たサイドのCHが前に出て来てプレスをかけようとするのですが、仙台はこうした場合でも神戸の”数合わせ”プレスを回避するために1トップの脇にインテリオールを落とすなどして、神戸のプレッシングの効きづらいスペースから安定した前進に成功します。
・CHが前に出てくると、当然ライン間のスペースも空きやすくなってきます。せっかく4枚で横幅を守っているはずなのに、気い付いたら枚数全然足りてへんやん!という状況に陥っていたのは、主にこれが原因です。
・ライン間にパスが通されるとDFラインの縦方向への圧縮が肝になってくるのですが、この日の神戸はなかなかラインが押し上げられません。理由は何個かあるのですが、1つ目は本職でないサンペールが5バックの中央に入っていること。去年のセレッソ戦での”偽CB”ぶりの鮮烈さが記憶に新しい彼ですが、このポジションに入るのはそれ以来。実戦経験の不足している彼にラインコントロールなどの仕事を任せるのははっきり言って無謀なのではないかという印象がありました。
・もう1つは、仙台もロングボールを多用して積極的に神戸のラインを上げられないようにしていたことが挙げられます。特に、サンペールと比較すると体格で勝る長沢を裏に走らせるようなボールは何度か出されていました。
・セレッソ戦で偽CBが採用された際にも、競り合いに弱いサンペールに大型CFをぶつけたらどうなる?ということを識者の方が指摘していたような記憶がありますが(ブルーノメンデスがいなかった為思い切って真ん中で使えた面はあった)、この日の結果が大体証明をしてくれたように思います。
・他には柳の特殊なポジショニングも悩みの種で、神戸のシャドーは単純に開いてくるSBに対しては混乱なく対処できるのですが、柳のように内に絞って高い位置を取ってくる相手に対しては、どこまで付いていけばいいか曖昧になってしまうところがあります。
・前節の神戸がこのような撤退守備でも攻撃の形を確保できていたのは、札幌が後ろに必要最低限の人数しか配さずに自陣に大きなスペースを残してくれていたことと、身も蓋もないですがリードしていた状況だったことが大きかったと思います。どれだけドウグラスが素晴らしい陣地回復能力を持っていても1人で孤立している状態ならあまり怖さはありませんし、しかも相棒である古橋を欠いているためさらに脅威は半減します。

・後半から神戸は4バックにしてサンペールの位置を1列上げたのですが、こちらの方がまだプレスがはまりそうだなと感じさせてくれました。インテリオール(特に山口)の列を超えたプレスを許容するには、ピボーテがカバー役として振舞っていたほうがいいですし、前から単純に噛み合わせが合うので人を当てるプレッシングが好みの神戸的には好都合です。

※後半の内容は後ほど加筆修正します