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92歳の洞察力

豊島の長老を訪ねました。前回お会いした時から1ヶ月以上あいてしまいました。お変わりなく聡明な思考で、豊島の今に心を寄せています。

自治会長の時に、廃棄物対策豊島住民会議(略称:住民会議)の筆頭議長を務めた長老は、豊島事件の語り部最年長です。日本中に人に世話になったから「頭が枕から離れるうちは」語り継ぐと、現場視察を引退されてもマスコミ等の取材には応えてきました。豊島に生まれ、農業をしながら農協(現JA香川)に勤めた長老は、豊島のことなら洞察深く把握しています。わたしは、暮らし方や豊島の風習を聞き取りするのが楽しくて、取材ノートがたまる一方です。

長老は、今の豊島をどう見ているのでしょう。
ーー わし、わからんの、本当のことが。断片的に話は入ってくるけどな、どしてそうなったのか、わからんの。

長老は事実を整理しているようでした。事実と推測と意見を分けた時に、真実が見えて来ないとおっしゃっているのだなあと思いました。物事の側面だけを聞きかじらず、表面化するに至った経緯を洞察しているようでした。
思えば、それが長老の手腕でした。豊島住民に懇切丁寧に働きかけて住民運動を率いた時、物事の運び方を誤ることがなかったのは(結果論ですが)、根幹を熟考したからです。

長老は、長老の正義があります。ある運動を振り返って「今になって(応援したことは)恥ずかしいけどな。でも、それを言うたら、嘘になってしまうからな」とおっしゃる。引き際も、自分の立場もよくわかっている。時を経て、物理的にも距離ができ、だから豊島について言わない。

長老が求めている真実が手に入った時、もう少し実のある会話ができたらと思います。


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