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選択のない社会

日経5/25の紙面、端的な設問に応える21歳の意思。自由という表現を選ぶまでの推敲いかに。
ウェブにも複数、大学生の意見。頼もしい若者像は紙面の思惑か。

リンクは期限つきで閲覧できなくなります(無料の場合)。出典を明記して引用させていただきます。

■自由のもろさ
牧野佑哉(東京大学経済学部3年、21歳)

「自由は大事である」。平時には大半がそう言うだろうが、現在のコロナ禍の下ではどうであろう。そもそも、少し違う時代や場所に目を向ければ「自由」はそれほど絶対的、普遍的なものではない。それにも関わらず我々は自由は大事であるという命題を公理かのようにただ受け入れ、真剣に考えてこなかったのではないか。この命題が正しいとしても、その結論に至るまでに自由は本当に大事なのか、それは何故か、といった問いを深く考えることなしには、いかなる場合も損なわれてはならない自由の本質は見えてこない。その本質が社会で共有されていれば、非常時においても自由と「公共の福祉」の関係が大きな問題になることもなかったのではないか。本質を理解しないままにお題目のように唱えるだけならば本格的な脅威の前ではもろいものだ。今回のコロナ禍はそんな事実を我々に突き付けているように思う。
■webより転載 2020/5/25
新型コロナが私たちに突きつけているものとは?
読者の提案 田中陽・日本経済新聞社編集委員

何をもってして自由というか、自由の定義は共通認識なのか。自由のフレームを推測するにしても広義で難解です。わたしは自由を正義に置き換えて感がています。正義は、わたしの判断軸です。マイケル・サンデル教授の「正義」に触れて以来、正誤でなく正義を問います。

新型コロナが私たちに突きつけているものとは? 
わたしは選択のない社会だと申し上げます。選択肢がないのです、選べないのです。すでに決まっているフレームの外にあるか中にあるかだけです。例えば、行動履歴が追えるアプリの導入は必然になるでしょう。20年前のわたしは「いずれクレジットカードが作れない層ができる」と思っていました。今は与信によるポイントで選ばれるか、選ばれないかです。そこに主体的な選択はないのです。これを社会主義とよぶには乱暴ですが、静かにひたひたと始まっているのです。ここも分水嶺かもしれません。

自由の本質は、断定できず流動的になるかもしれません。2020年のエッセンシャルワーカーは医療従事者という解釈が主ですが、フレームが変われば読み方が変わるように、自由の本質も変動する。いや、変動しては危ういのです。自由の本質が社会背景によって変動するとしたら、プロパガンダ。


新型コロナが私たちに突きつけているものとは?
日経未来会議 第1回(5月1日)
2020/5/1 2:00
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新型コロナウイルスは私たちに何を問い掛けているのでしょうか。

経済のグローバル化による人の行き来を容易としたことが感染のスピードを速めたのは明らかです。日本をはじめ主要国のように世界から良質で安価な商品を手に入れて豊かな生活をもたらした近代社会への強烈なメッセージなのでしょうか。半面、グローバル化を支え、これから豊かになる国や地域にも牙をむきます。無差別に、無慈悲に。

世界最大の都市封鎖(ロックダウン)を続けるインド。北部パンジャブ地方では、はるか200キロも離れたヒマラヤ山脈の雄姿が数十年ぶりに見えたそうです。工場が休止し、大気汚染が大幅に改善されたためです。皮肉な光景です。

「見えざる手」で市場経済は成り立っているはずでしたが、「見えざるウイルス」はマスクを買うことすら困難にさせてしまいました。

人間は集団で活動することを好みます。組織の中にいることで効率的な生産・学習活動に取り組めるからですが、今、人と人との距離を置くことを余儀なくされています。一方、急速に普及が進むテレワークなどネットの活用で働き方、学び方、付き合い方が大きく変わりつつあります。
新型コロナは時計の針を強引に逆戻り、あるいは速く進めようとしているのでしょうか。

物質文明を支え「石油の世紀」だった20世紀。21世紀になって約20年たち、その原油価格が急落したのは産油国の足並みの乱れだけの現象とは考えにくいです。再生可能なエネルギーを活用する社会を促しているようにも見えます。

東京・渋谷のスクランブル交差点は、普段より人通りが大幅に減った(4月8日正午)
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街から人も車もまばらになる中でネット通販は繁盛しています。リアルな店舗からのシフトは大きな潮流ですが、新型コロナは近未来を引き寄せてきたのでしょうか。

一足早く、強権的な手法でコロナ禍から脱しつつある中国。一方、日本では民主主義の枠組みの中でコロナと闘い、ポストコロナを模索している途上といえるのではないでしょうか。

「目の前の生活をどうしようか」と悩まれている人もたくさんいます。地球規模の災難に対してニッポンとして初めて自律的に考えて、行動を起こすことを求められています。政治、経済、社会。どれもです。

未来面は10年前に2020年に向けて「より良い社会を築くため」に経営者と読者が双方向でアイデアを議論する場として誕生しました。今回、初心に帰り、足元のコロナ禍は「私たちに何を突きつけているのか」を教えてほしいと考えます。そこからポストコロナの未来が始まるはずです。(編集委員 田中陽)

日経未来会議の課題に対するアイデアを募集します。投稿はこちらから。
■日経未来会議事務局から

未来面は読者や企業の皆さんと一緒に日本の抱える課題について考え、議論しながら作る紙面です。新型コロナウイルスの感染拡大で世界の様相が一変する中、従来のやり方では解決できない問題もでてきています。今後、日本を代表する企業経営者らが、自らの問題意識を基に課題を出す予定です。読者の皆さんから課題解決につながる今までとは違った解決法がでてくることを期待しています。
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未来面の新シリーズ「やり方を変えましょう。」が始まりました。第1回の課題は「新型コロナが私たちに突きつけているものとは?」です。400字以内にまとめた皆さんからの投稿を募集します。締め切りは5月14日(木)正午です。優れたアイデアを25日(月)付の未来面や日経電子版の未来面サイト(https://www.nikkei.com/business/mirai/)で紹介します。投稿は日経電子版で受け付けます。電子版トップページ→ビジネス→未来面とたどり、今回の課題を選んでご応募ください。




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