コントレックス箱買い

私がコントレックスの存在を知ったのは
相対性理論（バンド）の「夏の黄金比」という曲からだった

この曲の真ん中あたりでやくしまるえつこが軽快に
「コントレックス箱買い、コントレックス箱箱箱買い」
と歌い出すのである

↑大体このあたりから箱買いが始まる

初めて聴いた当時学生だった私は、"コントレックス"をまるで知らなかった
調べてみるとどうやら「カルシウムがいっぱい含まれた水の名前」らしい

「やくしまるえつこが歌うなら、それはきっと良いお水だ」と思ったので、母と買い物に行った時、「コントレックス飲んでみたい」と言ってみた

すると
「やめときな。」
と母

私「え、なんで？いいじゃん。水だよ？」
母「………飲むの？飲めるの？ほんとに？」
私「ウン。水だもん。」

上記のやり取りの末、無事コントレックスを手に入れた

一目見ただけで外国産とわかるパッケージ、日本じゃ見たことないペットボトルの形、鮮やかなビビッドピンクの蓋、そしてあのやくしまるえつこが口ずさんでいた名前、その全てが私をワクワクさせた

ドキドキしながらペットボトルに口を付けて、おそるおそる一口飲んだ

コントレックスは、水じゃなかった

なんっっっだ、コレ。マジで。

起きながらにして、夢から現実へ一気に引き戻された感じだ

コントレックスに向かって「水って知ってる？」と訴えかけた
そして、母が言っていた「飲めるの？」をやっと理解した

一口飲んだだけでもう全部飲める気がしなくなったので、母には「無理だった」とだけ伝えた
その後、コントレックスがどこに行ったのかはわからない

大人になってから、コントレックスはフランス産の硬水だから日本の蛇口から出てくる軟水とは口当たりが全く違う。ということを知る
調べてる最中、同じ水なのにな…と５回ぐらい思った気がする
とりあえず日本の水に感謝した

あれからもう絶対に飲むことはないだろうと思ったコントレックスと、だいぶ月日が経った後に再会することになる

美意識の高い友人が「コントレックス飲んでたら慣れたし身体にいいことばっかりだわ」と言い、家に常備している水が全部コントレックスになったと報告してくれた
そんなことある？と思ったが、訪れたら本当に常温のコントレックスかウイスキー類しか飲むものがなかった
試しに常温のコントレックスをいただいてみたけどやっぱり無理で、コントレックスも酒も飲めない私は結局、水道水を啜っていた
再び日本の水に感謝した

以上がコントレックスと私の思い出である

急にコントレックスのことを思い出したきっかけは、初めて「コントレックス箱買い」を見ることができたからだった
住んでるマンションの隣の部屋に、コントレックスの箱が置き配されていたのだ

隣に住んでる人、コントレックス箱買いを見せてくれて本当にありがとう

もしかしたらやくしまるえつこかもしれないな

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おわり