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Tr.02 アドリブのソロってなんですか?

Jazzは民主主義だ

Jポップやロックなどのバンド編成は①ヴォーカル、②ギター、③ベース、④ドラムスというのが一般的だと思う。
一番目立つのはヴォーカルで、次にギターがなんか格好いいことしているなーという感じかな。
ベースやドラムスが有名なバンドってあまり聞かないと思う。(リズムセクションなので音楽的にはすごく大事)

一方でJazzの編成は①フロント(管弦楽器 or ヴォーカル)、②ピアノ、③ベース、④ドラムスという形が一般的だ。
フロントがいない場合は「ピアノトリオ」、1種類の場合は「カルテット」、2種類の場合は「クインテット」と呼ばれる。

曲の構成にもJazzは特徴がある。
Jazzの演奏はテーマと呼ばれる曲の進行を基にしており、アドリブ(即興演奏)で繰り返し演奏する。
そのアドリブはソロ演奏となり、どんな楽器でも平等に自己表現の機会が与えられている。
Jazz is Democrasy(ジャズは民主主義だ)という表現がぴったりだ。

【曲の構成】
1.前テーマ
2.フロントソロ
3.ピアノソロ
4.ベースソロ
5.ドラムソロ
6.後テーマ
といってもなかなかイメージがつかないと思うので、実際に曲を聞いてみよう。

You'd Be so Nice to Come Home to (アート・ペッパー / ヘレン・メリル)

今回は"Art Pepper Meets the Rhythm Section"より"You'd Be so Nice to Come Home to"を紹介する。アルトサックスの名手アート・ペッパーの演奏だ。
最後まで聞いてほしい。5:26分間の演奏だ。曲の構成を書き出したので、照らし合わせながら聞くとJazzの流れがよく分かる。
【曲の構成】
0:00 - 0:10 イントロ
0:10 - 0:52 前テーマ
0:52 - 2:20 アルトサックスソロ
2:20 - 3:00 ピアノソロ
3:00 - 3:46 ベースソロ
3:46 - 4:50 ドラムソロ
4:50 - 5:26 後テーマ

ソロ回しの醍醐味、ご理解いただけただろうか?

***
もう一曲紹介しよう。
お時間がない方は最初のヘレン・メリルの歌声(-1:08まで)を聞くだけでよい。
もし余力があるなら、クリフォード・ブラウンのトランペットソロ(2:06-)まで聞いてほしい。
抑揚を聞かせたピアノソロから、ガツンとトランペットが入ってくるから。

この2つの演奏は全然違った印象を受けると思う。
アート・ペッパーはお洒落で澄ましている。
一方でヘレン・メリルは心情の吐露が感じられ、昭和の歌謡曲みたいだ。(イントロなんて特に)

今回は管楽器とヴォーカルの聴き比べを行った。もし気に入ったのであれば、他の演奏も聞いてみてほしい。Amazon Musicなら検索で一発ですよ

余談
それにしてもこの曲のタイトルは日本語訳が難しい。(高校の英文法の問題ににぴったりだ)
一般的な和訳は「帰ってくれたら嬉しいわ」だが、これは誤訳であると言われている。(二大誤訳曲の一つと私は呼んでいる。もう一つはビートルズのノルウェイの森)
「(私のいる家に貴方が)帰ってきてくれたら嬉しいわ」が原意に近い。
くれぐれも「帰れコノヤロー」という曲ではないことにご注意を。

余談2
この曲はジャズマンの間では「ユビソ」と呼ばれている。
(ex. 次はユビソやろー、原曲キーでね)
筆者が住む群馬県には「湯檜曽(ゆびそ)温泉」という観光地がある

余談3
アルバムタイトルをもう一度見てほしい。「Art Pepper Meets the Rhythm Section」
"the Rhythm Section(唯一無二のリズムセクション)"と評されたのは、マイルス・デイビスのバンドのレッド・ガーランド(pf)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(Dr)の3人である。

余談4
このアルバムは録音が優れており、オーディオのチェック用に使われる。
筆者も海外版など3種類のCDを持っている。

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