2016年春

結局、企画を考えているうちに1年が経ってしまった。
何回もプロットを書いてはボツにしてを繰り返すうちに、テーマは自然と、僕の地元、友達のことに絞られていった。
「東京が目と鼻の先にあり、東京に出る事自体にはそれほど夢がない。大都会周縁部の“田舎”で暮らす若者たちの鬱屈した思い、やるせない気分、空気感を込めた作品」そんなものを僕の大好きな群像劇のスタイルで描いてみたいという、気持ちが芽生えていった。
 企画は動きはじめたが、先立つ資金がない。そんなある日、飲んで通りかかった、母校日藝がある江古田の駅で一枚のポスターを見つけた。《未完成映画予告編大賞》、その瞬間、「これだ!これしかない!」と思った。しかも、主催はあのオフィス・クレッシェンド。学生時代に夢中で追いかけた、大根仁監督作品や堤幸彦監督作品を制作している会社だ。まだ応募もしていないのに、一人で勝手にテンションが上がった夜であった。

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