【逆噴射小説大賞】ボンバイエ
真っ赤な爆炎が遠くの空を一瞬だけ赤く染め、遅れて、けたたましい爆音が鳴り響いた。カフェの窓ガラスがビリビリと震え、黒煙がもくもくと空へわきだす。さて、何人死んだかな。あとは犯行声明を出して終わりだ。
「ケーキ頼んでいい?」
「ああ、好きなの頼め」
俺はゲルダにそう答えた。爆弾を作ったのは彼女、仕掛けたのは俺だ。
今回の依頼主は世界的な製薬企業『コイケ薬品』の会長で、標的は医薬品生産工場を装った合成麻薬プラントだった。巨大企業ゆえにコントロールできなくなった末端の不法行為、見過ごすことはできぬが明るみに出るのはもっと困る。
とはいえ身内が手を下せば無視できぬ禍根が残る。外部の手により偶発的に処理されねばならない。こんな話はいくらでもあるもんで、だから俺たちのような輩にも食い扶持がある。
俺たちは言わば、法で裁けぬ悪を裁く正義の代理人だ。
請け負うのはあらゆる破壊工作。しかし、正義にもとることはやらない。
【続く】
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