#90 「Don't think! Feel.(考えるな!感じろ)」
勝負を論理的に行い、論理が通用しなくなったなら、己の直感に頼り選択をする。
そして、偶然の変化や自身の選択によって不利になった場合、事前対策になんらかの不備があったのだろうが、それにはその時点では原因究明せず開き直る。
ここまでは良いだろう。
勝負において論理は必要不可欠であるがそれでは足りず、一瞬のひらめきの選択によって場が一気に変化する。勝者が敗者に、敗者が勝者になるその分水領はほんのわずかな変化によるものが多い。
それはバタフライエフェクトの効果のように、それ自体は気にも留めないほどのわずかな変化による。
そのわずかな変化こそが、巨大な歯車を動かす小さな歯車なのだ。それは全ての部品が必要な場所に収まる時、機械は正常に機能し本来の動きを取り戻すように起こる。
たった数ミリの部品一つなくなっただけで機械は停止するように、人の織りなす現象や行動にもこれらと同じ性質を持つ。
格闘家の勝負でいえば、格闘中に相手を倒すための技に集中しすぎると、相手の動きにたいして反応がおそくなり、逆に打撃や技を受けマットに沈んでしまう。かといって格闘家は考えていないわけではない。
サッカーや将棋や他の競技と同じように論理的に考え肉体に記憶させる。身体が勝手に動くのは反復練習の賜物だ。
ボクシングや武道のように肉体を酷使するものでさえ骨格や筋肉の連動性による論理が存在する。
合気道は自分のエネルギーを極力使わずに相手の動きに合わせ、相手のエネルギーを利用して技を繰り出す。
例えば、相手の右拳が自分の顔面に襲いかかる時、その拳を手でそらし手首を捕まえそれをひねり相手を一回転させる。
これは合気道特有の『合理的な体の運用・体捌き』を論理的に理解し実行することで、“相手の力と争わず”に相手の攻撃を無力化し、相手を制することを可能にしているのだ。
今は亡きブルースリーは、一流の俳優でありながら武道家で截拳道(ジークンドー)の達人でもある。
截拳道(ジークンドー、中国語: 截拳道、粤拼: Zit6 Kyun4 Dou6)は、俳優・武道家のブルース・リーが開発した武術、哲学。武道のみならず、人間としての生き方を表す思想である。英語ではJeet Kune Do、Jeet kwun daoと書く(広東語発音を英語に当てた表記)。リー自身が使ったように、頭文字をとってJKDと呼ばれることもある。
引用:Wikipedia
彼は自身の出演する映画「燃えよドラゴン」の劇中でこんな名言を残している。
「Don't think! Feel. (考えるな!感じろ。)」
あまりにも有名なセリフなのでご存じだと思う。また、この解釈についてはさまざまある。
この言葉こそが勝負の勝敗をわけるすべてのように感じる。
一見、この言葉は「考えること」は無意味であり、身体で感じことがすべてのようにみえる。
しかし、下記にあるセリフの続きをみると、それはかならずしも正しくないように思える。
「Don't think! Feel. (考えるな!感じろ。)」台詞の続き。「It is like a finger pointing away to the moon.(これは月を指さすのと似ている。)Don’t concentrate on the finger, or you will miss all that heavenly glory.(指に気を取られていると栄光(月)を見失うぞ。)」
「これは月を指すのに似ていてる。指に気を取られていると、月を見失うぞ」
相手を倒すため自分の指先に集中するのは良いが、それでは外の変化に気がつかず相手を見失うと語っている。
#88、#89で色々を述べてきたが、すべての答えはここにたどりつく。
この言葉は勝負における『オッカムの剃刀』ではないかとわたしは考えます。
オッカムの剃刀:「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでない」とする指針
引用:Wikipedia
まず論理的に考え、勝利できる方法を探し、それを実行できるための練習(訓練)をし、想定しうるケースをすべて熟考し、その対策をとり、実行し、不確定な要素に常に目を配り、起こってしまった想定外のものは開きなおり、そのとき可能な手を打つ。
そして、論理を尖らせた先の直感を利用し、相手が想定していない『意外な手』によって優位性を保ち盤石で勝利する。
理屈ではわかるものも実践ではその通りにはいかないものです。
また、それらが100%実行できたとしても、実力に開きがあれば全く意味を成しません。
それでも、何が大事で、どう振舞うかは参考になると思います。
「Don't think! Feel. (考えるな!感じろ。)」が多くのひとに認知され愛されているのは、深堀して意味を考えたりはいないが、この言葉に触れた多くのひとが直感でこの言葉は真理をついていると感じたのではないでしょうか。
つまり、勝負に勝つにはDon't think! Feel.なのです!!
おわり
参考文献:「勝負哲学 岡田武史 羽生善治」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
こうさかしんやさん画像を使用させていただきました。
毎週金曜日に1話ずつ記事を書き続けていきますのでよろしくお願いします。
no.90 2021.10.29
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