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希望ある未来の欠片(1)

時代は20年の時を越えるとそれまでの生活とは比べものにならないカタチへと進化します。皆さんの20年前を振り返ってみてください。

どうでしょうか、当時皆さんが予想していた未来の形をなしているでしょうか。わたしは、20年前を振り返り今の社会を想像できませんでした。

20年前といえば、当時はCDが主流でレーコードが衰退していき、レコード針の入手が困難と言われ、ラブ2000(hitomi)が流れ、シドニーオリンピックのマラソンで高橋尚子さんが金メダルを取って、日本中を沸かせていました。又、2000年問題が取りだたされ、ミレニアム景気と裏腹に、システムがダウンするんじゃないかと言われ戦々恐々でした。

当時はサブスクという言葉もなく音楽はアイポッドに録音して聴くものでした。ゲームでいえば、ソニーのプレイステーション2が販売されました。現在はプレステ5が販売を控えていることを考えれば驚きです。

Amazonの日本語版サイトがオープンしたのも2000年だそうです。(意外、もう20年も経っている)

そして、今となればどうでもよい話ですが、ノストラダムスの大予言が流行り1999年7の月に恐怖の大王が降臨すると本当に信じた人は、私財を投げ売り、核シェルター購入してこれに備えた、などというデマなのか本当なのかわからない話が出回りました。

それで、何が言いたいのか?」といいますと、20年後の未来を予想することは不可能だとわたしは考えるのです。漠然と20年後はやってくるでしょう。しかし、わたしたちが考える程度の予想では足りず、20年後は全く違う未来の社会になっている可能性が高い。

しかし、希望ある未来を想像したい。このジレンマが最近の悩みです。そこで現時点で科学はどこまで進歩しているのかをみてみましょう。

「SR」

SRというシステムをご存じでしょうか?VRなら聞いたことも体験したこともあるよ、なんて人もいると思います。「仮想の世界を現実のように体験できる技術」VR(バーチャルリアリティ)とは違い、代替現実とよばれるものです。

被験者はエイリアンヘッドと呼ばれる360度の空間全体を録画できるパノラマビデオカメラ付きのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)をかぶります。ちょうどスマホのカメラを通して外の景色を見ているような状態です。

そこで被験者とコミニケーションをしながら、こっそりカメラに過去の映像やつくられた映像を混ぜ合わせます。すると、被験者は現実なのかつくられた映像なのかわからなくなるのです。

この研究を行っているのは、理化学研究所の脳科学総合研究センターに所属する藤井直敬さんたちのチームです。この体験をした人の内容は下記になります。

無菌室にも似た白い部屋に通され、一脚の赤い椅子に座っている僕の前に、学生風のラフな普段着の研究チームメンバーが、黒光りするヘルメットを手にして現れました。「エイリアンヘッド」と呼ばれるそのヘルメットは、文字通り映画に登場した「エイリアン」の頭によく似た形で、つけてみると思ったより重量があり、少し頭がぐらつきます。内部にあるモニタに外の様子が映しだされ、耳元のスピーカーからメンバーの声が聞こえました。
「両手を見てください」
両手を目の前にかざして左右にてを動かしてみると、カメラから映像を送っているためか、コンマ数秒ほどのズレを感じます。身体感覚がズレるような奇妙な感じ・・・ふと、この感覚を知っている、なにかに似ている・・・という不思議な既視感に襲われました。ー
「では、ちょっとまわりを見てください。」
目の前に立っているチームリーダーの藤井直敬さんからそう言われ、上下左右に首を動かしてみます。
「はいけっこうです。ところで私はここにいると思いますか?」
「はい」
「じゃあ握手をしましょう」
差し伸べられた手をにぎろうと伸ばしたぼくの右手が、文字通り空をつかみました。
あれ?
「今ここにいる、この私は一年前の私です」
そう言うと目の前にいた藤井さんは消え、部屋の入り口から藤井さんがまた現れます。
「どこで過去の映像データとすりかわっていたのかわかりましたか」
「いえ・・・わかりませんでした」
「今ここにいる私が、本物か偽物かわかりますか」
「どちらも偽物、というトリックですか?」
藤井さんがまた手を伸ばし、それに触れるとーー今度は感触があります。

引用:「明日、機械がヒトになる  海猫沢めろん著」

どうでしょか。

SRを体験した人は、現実と虚構の区別がまったくできなかったと話しています。人間の網膜が1つ1つの点を認識できる「分解能」は300ppi前後といわれ、瞳の中央と周辺で解像度が異なりますが、中央のピントを合わせて見る事が可能な領域の画素数は700万画素程度と言われています。

4Kで800万画素といわれているので、360度漏れることなく4Kの映像を見せ続けられれば、現実と虚構の区別がおそらく不可能になると予想されます。これを体験するには「エイリアンヘッド」と呼ばれるHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の装着が必要ですが、ありもしない現実を生み出すことが可能で、そのなかの現実を体感することも可能です。

残り何年でこのような技術がコモディティー(大衆化)されるか分かりませんが近い未来、HMDを被り有名な観光地は代替現実により観光することが可能になるのではないでしょうか。当然そこには、莫大なデータを高速でやり取りしなくてはならないので、一筋縄ではいかないと思いますが、魅力的な未来だと思いませんか。

しかし、このような話をきいて、旅行はそこに行かなくては感動が味わえないという人もいると思います。確かに、その国に降り立った時の国の匂いや人々の生活から醸し出される民族感を味わうのは難しいかもしれません。

しかし、このHMDを体験した人に誰かと握手をしている映像を見せながら、映像と自分の動きをシンクロさせてすっと手を差し出すと、誰とも手をつないでいないのに何となくつないでいる気になるそうです。ほかにも、猫を撫でで喉をゴロゴロ鳴らさせる映像で同じような実験をすると、80%位の人がモフモフした感じがしたと言っています。

つまりこれは、視覚で触覚を補填しているのです!

驚いている人がいるとうれしいのですが、先日書いたWbasic(錯覚的アプローチ)に記載した通り、人の視覚は見たものと見えてるものが必ずしも同じでない。これは現実をそのまま見ているのではなく脳内のデータと照合しそれを投影している方が正しいと言えます。

例えば風景を見るときにそれが初めて見るものの場合はデータのインプットに時間がかかりますが、2度目は以前のデータを読み込むので、認識が早くなります。認識が早くなるということは、瞬時に「ああ、これね」と脳がデータを投影して認識していることになる。では、今目の前に見えているものと本当に同じかと言えば違うかもしれないということです。

話がそれましたが、旅行ににおける触覚の一部はこれで補えそうです。また、最近ではアスクという会社が、VR Electronicsが展開するTESLASUITブランド製のVR/ARに対応したスーツ型デバイス「TESLASUIT」の取り扱いを開始しました。これは現在のVRなどの拡張用のものですが、全身スーツにバーチャルで体感している触覚情報を電気信号に換え、スーツを通してその刺激を上手に受けることができれば、見ているだけではなく体験しているのに限りなく近くなりそうです。

わたしが個人的に期待をすることは、このような技術が進化していき、視覚共有ディバイスなるモノが誕生し、人が固有に見え感じていることを共有し、社会のノイズを無くしていくことです。

B'Zの歌の歌詞にあるように

たとえばどうにかして君の中 あぁ入っていって

君の瞳から僕を覗いたら 色んなことちょっとはわかるかも

これが実現するのです。

しかし、それは同時に過酷かもしれません。交際中の異性がディバイスを通して自分を他観するとき、実は全く興味がなく魅力的に映っていないことがバレてしまいますし、そこに内包されている感情も共有することもできる様になれば、偽善や嘘はもはや通用しません。そこには真実しかないので、ごまかしようがないのです。

また、わたしたちが時折友人などの会話のなかで、あの人の何処が良いの?などと理解不能な恋愛や容姿に疑問を抱いたとしても、このディバイスを通してその人を見れば、友人の目からは、キラキラに映っている相手を体感できるようになるはずです。そうすれば、この状態なら相手が良く見えるわけだと理解できると思います。

それでもこのような技術ができるまでにはいくつもの山を乗り越えていかなくてはならないでしょう。しかし、わたしたちは絶望的な未来よりも希望ある未来を望んでいることは間違いありません。世界の多くの科学者と70億の人の求める世界の在り方に希望を抱いて生きることは、それ自体が幸福なことではないでしょうか。

                              つづく

参考文献:「明日、機械がヒトになる  海猫沢めろん著」

最後まで読んで頂きありがとうございます。

伊藤拓郎さん画像を使用させて頂きありがとうございます。

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no.38 2020.10.30



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