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書評「戦術以外のサッカーの見方を教えてくれる一冊」(大串哲郎他編『サッカー13の視点 13人の研究者によるアカデミックサッカー講義』創文企画,2020)

幅広い学問領域を包含

 今回紹介するのは、アカデミックなサッカーの見方を広く浅く学べる本です。私自身もスポーツ社会学は馴染みがありましたが、この本で初めてスポーツ科学や運動生理学に触れました。
 言わずもがな、最大の特徴は文理問わずに幅広い学問領域を抑えていることです。スポーツ社会学の中でメディア論やカルチュラルスタディーズがある一方で、スポーツ科学の中でも組織論(チームビルディング)や心理学の章があり、興味をそそるポイントが多いです。

スポーツメディアの役割

 一部だけ紹介すると、第7章はメディア論として「スポーツメディアの役割」について書かれています。この中では著者の落合博さんが新聞記者だった自身の経験をもとに、盛り上げ役、感動伝達装置としてのメディアに対して疑問を投げかけています。
 スポーツ(イベント)のスポンサーになった新聞社は公正な報道ができるのか?だったり、W杯出場を紙面を割いて大々的に報道する必要があるのか?などは、サッカーファンに刺さる問題提起だと思います。
 詳しくは先日この本についてツイキャスで喋りましたので配信アーカイブ、もしくは書き起こしをご覧ください。

あくまでも入り口

 念のため、これはあくまでもアカデミックへの入り口の本です。各章を担当した方々の研究で分かりやすい部分をピックアップして書かれています。
 たとえば第2章「イングランドのフットボール」を担当した山本浩さんは、単著で『フットボールの文化史』を書かれています。イギリスでのフットボールを民俗学的観点から研究したもので、資料を用いてより詳細に歴史が描かれていて面白いです。
 他の著者の方も論文や本を書かれていますので、興味を持った分野はより深く掘っていくのと良いのではないでしょうか。


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