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それは30年前からやってきた、うつわ。

紅葉深まる、11月。わたしが出会ったのは、30年のときを経て、久しぶりに棚に並べられた、鹿の絵付けのうつわだった。

こんにちは、こんばんは。くりたまきです。

山々に囲まれた長崎県波佐見町では『あちこち陶器まつり』ということで分散型のイベントが行われていた。

わたしは取材とSNS発信のため、つまり仕事のために、町中をあちこち車でまわっていた。

波佐見町の窯元・藍水さんでもイベントをされていたので、はじめてお伺いした。

まるで水彩画のような、あざやかな発色の手描きの柄が美しい焼きものたち。ぷくりとした釉薬がかわいらしい。

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うっとりと眺めていたら、なんだかどれもすてきで、どれも魅力的で。取材しつつもほしくなって、でもどうにも「これ」と決めることができなかった。

どうしよう。

ぐるりとまわっていたら、すみっこにある素朴なうつわを見つけた。

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それが、このうつわ。すみません、ちょっと写真が急ごしらえで魅力を伝えきれていないんですが。とても気に入った。鹿の姿が、たまらなく愛しい。ほのぼのしていて、2匹でなんだか会話していそう。脚もよい。松の葉もあって、縁起もよさそう。

まるで、鹿のつがいが駆ける、ちいさな楽園。(雌同士っぽいけどそれはそれでいい)

しかも、かたちがまたすばらしい。

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縁が波打っていて、脚がついている。そして脚の部分にも絵付けが施されているのだ。こういう脚の部分にも絵付けができるのは、手描きならでは。機械ではこうはいかない。


これだ。


わたしは、レジにこのうつわを持っていった。対応してくれた窯元の方が「これは…!」と驚いた顔をする。

「これは、30年以上前に焼いたんですよ! 昔の窯でね。いやあ懐かしいなあ。長いことしまってあったのを、今回いい機会だからと出したんです。かたちも型じゃなく手でつくっててね。絵付けもいまとは違うでしょう。時代に合わないかなと思っていたけど、気に入ってくれる方がいてよかった」

うれしくって、家で洗ってから、ずうっと眺めている。30年の時を経て、わたしのところに来てくれたのだ。わたしはこれほど年月を重ねたうつわを持ったことがない。残りものの福がありったけ詰まっていそうな気がする。

30年。いま、ここにあることが奇跡だと思う。

そんなことを考えて気づいた。

あ。もしかしたら、わたしと同じ歳くらいの焼きものなのかな? そうだ。わたしも、もう31年生きてるんだった。忘れてた。

ぶわあっと、愛しさが増す。

「そうかあ、わたしと同じくらいの時間を過ごしてきてんだね。すごいね」なんて心で語りかけてしまう。

大切に、大切にしよう。

もうだいぶ買い揃えているし、うつわを増やすのは……とためらいながら、なんだかんだ、大切なものが増えてゆく。とくに陶器まつりなどのイベントでは、ふだんは並べられていない掘り出しものに出会うとつい買ってしまう。

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先月買った、この急須と煎茶のセットも、掘り出しものでつい……。古風なものが好きというより、陶器まつりならではの買いものがうれしいっていうのもある。だって、ふだんは今風のうつわを買ってるもの。そしていろんなテイストのうつわをミックスしてテーブルコーディネートするのが楽しいのだ!

ということで。

これからよろしくね、鹿さん。

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