見出し画像

信じられない場所で偶然妹に会った。

私には妹が一人いる。
私は大学入学を機に上京し、妹は就職のため大学卒業と同時に東京にやってきた。
しばらくは一緒に住んでいたが、今はそれぞれ家族をもち別々に暮らしている。

しかし、妹とはこの広い東京でばったり出くわすことがよくある。お互いに示し合わせたわけでもないのに偶然出会ってしまうのだ。

私も妹も音楽フェス好きなので、その会場で、たまたま「あっ来てたんだー」ということがよくある。
これはまあ音楽の好みが似ていて、好きなフェスも一緒なので当然ではある。

電車の中で偶然でくわしたこともある。ある日、新宿駅から山手線に乗った時に一つだけ座席が空いているのを発見した。その日は疲れていて座りたかったので、電車に乗り込むと急いでその席に足を向けた。

とその時、別のドアからすごい勢いで私が狙っている席に近づいてくる人がいる。

私は何とか席を確保しようと、その人に負けないように歩くスピードを上げた。席が近づき向こうから来る人の顔を見ると、それは何と妹だった。顔を見合わせてお互いに「えっ!」とかなり驚き、お互いに席に座るのに必死すぎだと笑い合った。

3分に一本くらいのダイヤの山手線のしかも同じ車両に乗るなんて、しかも同じ席に座ろうと争い合うことになるなんて想像もつかなかった。

想像がつかないと言えば、普通はあまり人に会わないような場所で妹に出会ったことがある。

それは5年くらい前のお台場に行こうとしていた日のことだ。何となく暇だしお台場にでも行くか、というかなり消極的な気持ちでお台場に向かうためにゆりかもめ(モノレール)に乗っていた。

5年くらい前のことなので、お台場もだいぶ古くなって、観光客も少なくなっていた。

ただ私が上京したばかりのころは、お台場はまさに未来都市といった感じで、さすが東京だと感動したものだ。だから新橋からゆりかもめに乗ると、今でもお台場に行くんだと何だかワクワクした気持ちになる。

そして何と言ってもゆりかもめはレインボーブリッジを渡る。織田裕二が封鎖したいことで有名な橋だ。レインボーブリッジを渡るのはやはり嬉しい。この日もゆりかもめがレインボーブリッジに入ると、「わーい、今レインボーブリッジを渡ってる。封鎖されてなくて良かった」となんの捻りもない感想を抱きつつニヤニヤしていた。

そんな浮かれた気分でレインボーブリッジを進むゆりかもめに乗っていたのだが、驚愕の出来事が起こる。

レインボーブリッジも中腹に差し掛かるところで、私は橋の上を人が歩いていることに気が付いた。えっレインボーブリッジって歩いて渡れるの!と驚いたのだが、次の瞬間、その100倍くらいびっくりすることになる。

何とレインボーブリッジを歩いていたのは妹だった。そして一瞬のことであるが、ゆりかもめの窓ごしに目が合った気がする。

数秒後に携帯電話に妹から「ゆりかもめ乗ってる?」とメッセージが来たので、私は「レインボーブリッジ歩いてる?」と返した。

まさか妹とレインボーブリッジの真ん中で偶然出会うことになるとは。そもそもレインボーブリッジの上でたまたま人に遭遇することが稀である。

後で調べたらレインボーブリッジは遊歩道があって歩いて渡ることができるらしい。しかしわざわざ、徒歩でレインボーブリッジを通過してやろうなんて人はあまりいない。

妹もいつもはそんなことしないのだが、たまたまその日は歩いて渡りたくなったとのことで、はじめての経験だったと後に聞いた。
私もお台場には一年に行くか行かないかくらいの頻度だ。

同じ日にタイミングよくお台場に行きたくなり、それだけでなく私がゆりかもめの中からレインボーブリッジを徒歩で渡る妹を見つけるとは、かなりのレアケースだと言えるのではないだろうか。

妹とはずっと仲がよく、子どもの頃はよく遊んだし、わりと大きくなってからも二人で出かけた。一緒にいる時間が長かったので、考え方や物事の受けた止め方が似ている。
それは長年、兄妹として培ってきた繋がりなのかなと思っている。

この日はそんな兄妹の繋がりがシンクロして、レインボーブリッジで偶然出会うというようなことが生じたのだろう。何となく二人ともお台場気分になり、レインボーブリッジの中腹での邂逅となった。

これ以来、ちょっと変わった場所に行くと、妹はまさかいないよなと辺りを見回すようになった。今のところ、レインボーブリッジ以上に変わった場所で妹と偶然会ったことはないが、きっとそのうちにまた驚くような場所で妹と出くわすことがあると、なぜか確信に似た思いを抱いている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?