ロックバンドTOKIOの音楽が好きだった

長瀬智也がTOKIO脱退、ジャニーズ事務所の退所を決めた。
これは、邦楽ロック好きのライトなTOKIOリスナーが、答えの出ない今の気持ちをだらだらと書き記しただけの文章です。


バンドTOKIOに出会う

私がTOKIOの音楽に興味を持ったのは、(言いづらいが)とある動画サイトで見たライブ映像がきっかけだった。
TOKIO Special GIGs 2006。念願のライブハウスツアーだったそうだ。
偶然目にした「城島SONG」という曲の映像。
タイトルの通り作曲者は城島茂、要はメンバー紹介ソングだ。毎回歌詞を変えて演奏するライブ定番曲だということは後に知ることになるが、この映像の演奏とパフォーマンス、そして歌詞に私は度肝を抜かれた。

各々の演奏も、ギターリフもアレンジも、音の重なりやノリを楽しむさまも、ロックバンドのそれそのものだったからだ。そして歌詞が酷い。下ネタに次ぐ下ネタ、終いにはピー音が入る。
それと、(今思えば当然なのだが)ボーカルだけが目立っているバンドではなかったところも気に入った。メンバー皆歌う。合いの手を入れる。シャウトする。賑やかしがすごい。こちらはTOKIOならではの強みだと感じた。

そんな様子はそれまでイメージしていたキラキラとしたジャニーズとは程遠かったけれど、いや遠かったからこそ、パワフルで自由で男臭い5人組のアイドルのステージに私は一瞬で虜になった。
それまでにも、テレビでTOKIOが歌う様子を時々目にすることはあったが、明るい応援ソングが多いなぁという印象だけだった。こんなにロックだなんて聞いてない。誰も教えてくれなかった。

違法アップロード動画なのでここで紹介することは出来ないが、興味のある方はニ…動画でこっそり探してみてほしい。(DVD化もされているので、興味を持ったら是非購入を!)


そこから過去の曲や映像を集め、音楽番組の出演なども見るようになる。
しかしここがライトファンと自称する所以なのだが、申し訳ないことに、メンバー出演のドラマやバラエティを積極的に見ることは少ないし、TOKIOカケルや鉄腕DASHといった冠番組だってちゃんと見ているわけでもない。
一時期ファンクラブに入っていたとはいえ、メンバーに対してアイドルファン的なハマり方をすることは結局できなかったから、金銭的にも貢献できていたとは思わない。TOKIO漬けの人生でした、TOKIOに救われましたみたいなエモいコメントもできない。

それでも、音楽だけは心から好きだと言えた。曲を出してライブをやってくれる限り、つかず離れず、ずっと追いかけていくつもりだった。新曲が出れば必ず買ったし、音楽番組は録画して何度も見た。
長瀬の尖ったハイトーンボイスと、彼の声質ととても相性の良い国分の低音のハモリ。そこに山口、城島の上ハモが重なる。時には毛色の違う山口の甘い声と入れ替わる。ダブルボーカル、トリプルボーカルになり曲に彩りを添える。
そんなTOKIOならではのオンリーワンの構成が大好きだった。(松岡はソロ曲こそあれど、この構成時に歌う事が少ないので触れなかったけどもちろん好きですよ!)

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(↓カップリング&アルバム曲のため試聴できませんが機会があったら聴いてみてください。サブスク解禁しろ)
【Southend】下ハモ推し曲。長瀬&国分の声の混ざりが至高。初聴時エモ過ぎて泣いた
https://www.j-storm.co.jp/tokio/discography/green
【Sweet Sick Honey】長瀬&国分推し曲②
https://www.j-storm.co.jp/tokio/discography/%e3%81%b2%e3%81%8b%e3%82%8a%e3%81%ae%e3%81%be%e3%81%a1%ef%bc%8f%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%83%bb%e3%83%95%e3%83%aa%e3%83%bc%ef%bc%88%e3%82%b9%e3%83%af%e3%83%b3%e3%83%bb%e3%83%80%e3%83%b3%e3%82%b9%e3%82%92
【HEY!Mr.SAMPLING MAN】上ハモ推し曲。終始かっこいい
https://www.j-storm.co.jp/tokio/discography/5-ahead
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最初に手に取るならこのベスト盤がおすすめです。


TOKIOが作る音楽とは

宙船をはじめ、大御所アーティストから曲提供を受けていた一時期のイメージが強いかもしれない。しかし近年はこれまでアルバム曲に収まることが多かったメンバー自作曲でシングルリリースも行い、編曲もメンバー名義の曲が増えている。音圧もなんか前と違う。着実に自分達の望む音楽活動を進めてきた、と思う。
ちなみに彼らの古い曲にはアイドルソングも多い。5人で事務所の上層部に「俺達ロックがやりたいんです!」と直談判しに行ったはいいが「じゃあ他の仕事はさせない」みたいなことを言われ、すごすごと引き返してきたなんてエピソードもある。彼らは時間をかけて自らの手でやりたい音楽を掴みとってきたのだ。

長瀬がシングル曲を作るようになってから(ちなみにフロントマンだから彼に任せているのではなく、毎回それぞれが自作曲を持ち寄ってコンペを行ったうえで結果的に長瀬の曲に決まっている)のTOKIOはそれまでとはまた音楽性が変わったように思えたが、今までで一番魅力的に見えた。
何せそれまでの経歴からキャラ立ちしている彼らである。それを理解したうえで、20年以上の付き合いのメンバーとやるためにと作ってきて演奏する曲は、彼らのパブリックイメージにこれでもかというほど合っており、尚且つTOKIOの持つ魅力を最大限に引き出していた。

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(↓こっちは試聴できます)
【リリック】
https://www.j-storm.co.jp/tokio/discography/%e3%83%aa%e3%83%aa%e3%83%83%e3%82%af
【LOVE,HOLIDAY.】
https://www.j-storm.co.jp/tokio/discography/love-holiday
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身も蓋もない言い方をしてしまえば、ジャニーズとバンドという組み合わせは恐らく基本的に相性が悪い。キラキラと踊るアイドルが好きなら初めからそういったグループを応援するだろうし、バンド好きもまた然りである。毎年紅白に出ることで音楽ファンの反感を買ったこともあるかもしれない。正直、メンバーが自分で曲を作るなんて当然のこと過ぎて、わざわざアピールするのは逆効果ですらあるかもしれない。

けれど2012年にオリジナルフルアルバム「17」、そして2013年に上記「リリック」をリリースして以降、少しずつ変わってきた空気のようなものを感じていた。もう完全に自分たちの力で勝負し始めていた。
「この曲いいね、えっ!長瀬くんが作ったんだ」というような感想を何度も目にしたし、夏フェスに出演した際にはオーディエンスの期待以上に熱狂させ、バンドTOKIOを強く印象づけることもできた。
(ここがライブに興味を持ってもらえた絶好のターニングポイントだったのにこれ以降ライブツアーがなくなり、新規客を増やすチャンスを逃しただろうことは今でも惜しかったと思っている)

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二枚目にはこちらをどうぞ。手に入りそうならDVD付の初回限定盤がおすすめ。レコーディングで真剣に音楽に向き合う様子がたっぷり見れます。


TOKIOはバンドでありアイドルで、そしてバンドだ

ところで、バンドの恒久性というのは、ある意味ではアイドルよりも脆く儚い面があると思っている。

通常のバンドであれば、音楽性の違いで脱退・解散することや、技術の低いメンバーをクビにする等の話はそこまで珍しいことではない。新しくメンバーを迎えることもあれば、足りない楽器パートにはサポートメンバーを入れることだってある。
良い曲やアルバム、ライブを作るためなら意見がぶつかっても話し合っていいものを作り上げていくだろう。彼らは想いを伝える手段として音楽を選んだ。音楽という結びつきによって一緒にいる集団だ。
長く続いているバンドというのは、元々ものすごく仲が良く意見が合うバンド、誰か強い意見を持つ者に折れて合わせるのが苦にならないメンバー達によって成り立っているバンド(これは別に悪いことではない)、とことん話し合って信頼関係を築いてきたバンド、のどれかが多いように感じている。

一方、一般的にアイドルはどうだろう。大所帯の女性アイドルグループならば卒業によるメンバー入れ替えはあるが、特にジャニーズに関しては、一度グループを組んだら終身雇用、一蓮托生のように数年前まで思われていた。
メンバー同士の仲の良さにも幻想が持たれる界隈だ。仲違いしていたとしても、表向きには仲が良いように振る舞わなければならないこともあるだろう。
当然こちらも同じ番組、ステージを作り上げることに一致団結しているのは同じ。ただし表現方法は音楽に限らない。
(ちなみにTOKIOにも、意見の食い違いなどから一切口を利かなかった期間というのがあるらしい。理由も正確な時期も明言はされていないが、ディープなファンですら、気付かなかった、今思えばそういえば…というような感想だったそうだ。それほど上手に隠すことが出来るプロなのだなと思ったものだ)

◆◇◆◇◆

ではTOKIOはというと。
彼らはバンドマンでありながらあくまでアイドルだ。音楽だけやっていればいい訳ではないし、彼ら自身も音楽だけをやっていたい訳ではなかっただろう。
それぞれ俳優業やバラエティでの活動があり、グループのレギュラー番組があり、そしてザ!鉄腕!DASH!!がある。
鉄腕DASHは彼らのイメージを確立させた存在であり、メンバー間の絆を強めた存在でもあったと思う。ここ数年は膨らみ過ぎた虚像と重圧感に個人的には危うさを感じることもあったが、この番組の影響は計り知れない。

それらの多岐に渡る活動と並行しながら、彼らは音楽活動を行ってきた。
バンドマンはそれこそ音楽が本業なので曲を作って売りライブをすることで生計を成り立たせているし、何より音楽がメチャメチャ好きな奴らばかりなのでそこそこのハイペースで曲をリリースするしライブもしょっちゅうやる。

一方TOKIOは、多分、音楽をしなくても生活には困らない。でも彼らは曲を作るのだ。数こそ年々減っていったがライブをしていたのだ。だって音楽が好きだから。TOKIOの活動の原点はきっと音楽だ。と思う。思っていた。そう信じている。
その忙しさの中でいつ曲を作って楽器や歌を練習しているんだろうと思っていた。ライブの翌朝、生放送でテレビ出演しているのを不思議な感覚で眺めていた。音楽番組に出れば、彼らはテレビ映えするパフォーマンスをごく自然に行い、その場を楽しんでいた。彼らは生粋のエンターテイナーだ。

◆◇◆◇◆

多忙になり、またベテランになるにつれライブが減っていくのは仕方ないにしても、この心地よいサイクルはゆっくりとずっと続いていくものだと信じ込んでいた。音楽もレギュラー番組も5人でやるのは当然のことで、それを疑ったことなど一度もなかった。
「誰か一人が抜けたら解散」「音楽性の違い以外での解散はない」こんな感じのことを言っていたらしいから、本人達もきっとそのつもりだったのだろう。
私が彼らに求めていたのはバンドのような音楽活動であり、それでいてアイドルのようなグループ活動だった。


脱退の報せを受けて

TOKIOは、ものすごく仲の良い'グループ'だし、話し合って信頼関係を深めてきた'グループ'だ。音楽的な繋がりももちろんあるだろうが、それより前提にくるのは、友人のような、幼馴染のような、兄弟のような。そんな言葉が似合うグループの絆がある。
鉄腕DASHで皆を引っ張るメンバーがいれば、バラエティで力を発揮するメンバーがいる。そして音楽面で前に出るメンバーがいる。これまでずっと、そんな絶妙なグループのバランスで成り立ってきた。

長瀬がTOKIOで音楽をやることにこだわっていたということは見ていれば分かる。ソロでやろうと思えば出来たはずの彼がそれをしなかったことを「嬉しい」と表現するのは違うというか失礼な気もするが、彼のその気持ちはバンドTOKIOファンである私に突き刺さった。
(誤解を招かないよう補足すると、他のメンバーもそれぞれTOKIOのグループ活動、音楽活動をどうするかについては沢山真剣に考えていたはずだし、長瀬が成熟するまでバンドを引っ張ってきたのはむしろ国分だったように思う)(あと長瀬にはやっぱりソロでもいいから歌ってほしいしギター弾いててほしい)

◆◇◆◇◆

彼がどうして脱退を選んだのかは分からないし、これからどうしていくのかだって当然分からない。分かった気になってはいけないと思うし、勝手に代弁するのも違うと思う。(ここまで散々希望的観測で語ってきた私が言うなという話でもある)
TOKIOのバランスが崩れたこと。長瀬が大切にしていたTOKIOを脱退するという選択をしたこと。3人はそれを受けて会社を立ち上げる選択をしたこと。TOKIOという名前を残すと決めたこと。山口も含め、仲違いしたわけではないということ。私たちから見える事実はこれだけ。
また、長瀬の脱退と2年前に起こった事件については関連がないと、メンバー3人は今回の件のインタビューで話している。

「今回の決定は、山口の脱退がきっかけじゃないんです。節目節目で話し合ってきたことが、こういう形になった、ということです」

問題を起こした彼の行動への怒りや嫌悪感は今でも拭いきれないし、擁護する気は全くない。
けれど私は彼らの言葉は基本的に信じると決めている。
見せてくれたものを信じ、話してくれたことを信じていきたいと思っている。

おわりに

もう二度と5人のステージを見ることが叶わないのはすごく寂しいし辛い。
でも、長い間夢を見させてくれたことの方に感謝したい。そのうち数年だけだけど、共に過ごせたことが嬉しい。難しい選択を迫られる中、最善とも思われる方向に進んでくれたことにありがとうと言いたい。
寂しい、悲しい、辛いといった感情は溢れてきても、怒りや憎しみ、不可解に思う感情はどこに対しても、誰に対してもない。
それがきっと何かの答えなんだと思う。頭のどこかで納得がいっている。

「5つの音」にこだわり続けてくれただけで十分だ。「5人の絆がある」と話してくれただけで十分だ。5人が生きてさえいてくれれば、またいつかどこかで道が重なることもあるかもしれない。そんな希望を持てるだけで十分だ。
たとえ私たちが知ることがなくても、メンバー達同士が分かっていればそれでいいのだ。ファンに全部話してくれる必要なんかない。世の中のバンドは大体そんなもんだ。TOKIOもそれに倣えばいい。

とはいえ、この感情を整理するのにはまだまだ時間がかかりそうだし、私は今後の㈱TOKIOの活動を追っていくかどうかは分からない。けれど、今まで届けてくれた曲達は、これからもずっと聴き続けていくと思う。
活躍の場が変わっても、5人のそれぞれの幸せを願っています。あなたたちの奏でる音、ステージ、大好きだったよ、ありがとう。

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