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チームで主役になれなくても

この記事はフルリモートデザインチーム Goodpatch Anywhere Advent Calendar 2020 14日目の記事です (2回目の掲載)。

普段はGoodpatch AnywhereでUXデザイナー兼プロジェクトマネージャーをやっている私が、チームを前に進められる存在「水を運ぶ人」について書いてみます。

デザインをするためにはスキルと知識が必要

疑う余地のないことですね。

デザイナーがその職能で何かを成し遂げるために必要なのは、間違いなく個人の実力です。私たちGoodpatch Anywhereのように個人ではなくチームでデザインをする場合でも、一定の成果を出せないメンバーがいるとプロジェクトが停滞してしまう、そんなことは珍しくありません。

そんなことを去年のアドベントカレンダーで書きました。

スキルが必要なのはそりゃそうだという話なのですが、最近はPCとインターネット回線さえあれば誰でも無料でデザインという行為をはじめることができます。

そのせいだとは言うわけではありませんが、近年デザイナーのスキルや知識の格差がめちゃくちゃ広がっているように見えます。

テクノロジーの力によって職業・デザイナーの入口が広くなった反面、論理的思考力やデザインの基礎を学ぶ機会と出会うのが難しくなり、一定レベル以上の仕事にぶつかると立ち向かうのが困難になります。

スキルや知識、つまりデザイナーとしての実力を身につけることは絶対に必要です。

優秀な人材を集めたチームが最強

そうとも言えません。

1981年、チームマネジメントの研究をしているメレディス・ベルビンは「アポロシンドローム」という言葉を作りました。

メンバーの能力が高いからこそ、メンバー同士のリスペクトは欠け、リーダーを尊重せず、些細な討論に時間をかけすぎる。それが建設的な会話を阻害し、ときには軋轢や妥協を有む。結果的には能力の高さがチームが前に進むことを邪魔する。これがアポロシンドロームです。

優秀な人材が集まったチームは強いですが、それだけで成功するとは限りません。銀河系軍団と言われたロナウド・ジダン・ベッカム・フィーゴを揃えたレアル・マドリードは優勝できませんでしたよね。

水を運ぶ人

レアル・マドリードといえば、みなさんはマケレレというサッカー選手を知っていますか?

マケレレはベッカムが来る1つ前のシーズンまでレアル・マドリードに在籍した選手です。彼はスターたちに比べて目立つ存在ではありませんでしたが、チームにとって不可欠な存在でした。スター達が守備をしないぶん彼が走り回って守備をし、チームメイトがパスの出しどころに困らないようパスの受け手として顔を出し、シンプルにスター達へボールを供給することで、チームのバランスが保たれました。

彼がチームから去った2003-04シーズン、レアル・マドリードの低迷が始まりました。

マケレレのように献身的に動き回りチームの潤滑油としてふるまえる選手を、元サッカー日本代表監督のイビチャ・オシムは「水を運ぶ人」と表現しました。

デザインチームの「水を運ぶ人」

デザインの話に戻ります。

デザインへの期待は日々大きくなっており、デザイナーを取り巻く環境は複雑になり続けています。デジタル領域に関するデザインに限定することにはなりますが、例としてわかりやすいところでJ.J.Garrett氏のUX5段階モデルで言うと戦略構築から表層まで幅広い領域が昨今のデザイナー・デザインチームに期待されています (期待の大小はあるけど)。

幅広い領域を一人のデザイナーがすべてを担うことは基本的に不可能です。だからこそデザインチームには多様な能力、多様なメンバーを揃える必要があります。

当然、デザインの仕事をするにはデザインそのもの以外の仕事もしなければなりません。

相互レビュー体制を整えたり、ツールや素材をチームで使えるようにする…など、デザインワークに直接的に関わる仕事もあれば、打ち合わせのセッティングや議事録作成、連絡や周知、タスク管理や優先度設定、チームビルディング活動、リーダーなら予算管理やピープルマネジメントのようにデザインワークと遠い仕事もあります。

必要な能力が幅広い領域にまたがり、やるべきことが多すぎるのがデザインの現場です。こんな複雑な現場で必要になるのが、メンバー同士をつなぎ、場をととのえ、泥臭くタスクを拾って、誰かに渡したり、時には自分で解決するメンバー、まさに「水を運ぶ人」です。

誰に言われずとも自らボールを拾う。ときには誰かに渡す。未決事項があれば決めるための場を整える。困っているメンバーに声をかける。おかしいと思ったことに対し勇気を出して声をあげる。Slackに素早く反応する。用事はなくともDiscordに常駐して声をかけてもらいやすい状況をつくる。こんなことをサボらず、献身的に、時には笑顔でやりきる。そんなメンバーがプロジェクトを前に進めてくれます。

もし実力あるデザイナーが集まってチームを組んでも、「水を運ぶ人」がいないチームは、きっと停滞してしまいます。

だからこそ、プレイヤーはデザインワークそのもの以外でもチームに貢献することを大事にすべきです。リーダーは貢献できる場や役割が見つかるようにプロジェクトを運営すべきです。そうすれば、そのチームはより高いところへ行けるはずです。

私が今春に参加した接触確認アプリのプロジェクト「まもりあいJAPAN」はスター揃いのドリームチームでした。スター揃いとはいえ寄せ集めチームだったにも関わらず、プロジェクトメンバーがポジティブに「水を運ぶ人」として振る舞いました。その結果まもりあいJAPANは素晴らしいプロジェクトになったのだと思います。以下の記事ではこんなスター達を「プロアクティブ人格」と表現しています。

水を運ぶデザイナーにリスペクトを

成果を数字にすることもできなければ、クオリティを直接向上させるわけでもない。ただ、そのメンバーがいるとプロジェクト進行が円滑になりチームが前に進む。このような「水を運ぶ人」を担ってくれるメンバーをリスペクトし、組織として評価すべきだと私は思います。

チームの中で泥臭く献身的に走り回ることでチームを前に進められることは一つの特殊な能力です。誰しもができるわけではないですし、訓練すればできるようになることでもありません。

本当は主役になりたいのをぐっとこらえ、チームのために献身的に動き回れるメンバーは貴重で大事な存在です。

そんなメンバーに主役の出番が回ってきそうなときは、まわりのメンバーが「水を運ぶ人」として積極的に振る舞いましょう。

おわりに

Goodpatch Anywhereでは「チームでデザイン」を手段の一つとして、デザインの力を世の中に届けています。

心理的安全性を高めることでのコミュニケーション量の最大化、宿題を設けずその場で一緒に行う作業、ソーシャルプレゼンスを高めるリアクションなど、チームで戦うAnywhereだからこそ大事にしているふるまいや価値観を、仲間たちは自ら日々体現しています。そんな仲間たちがプロジェクトを、Anywhereを前に進めてくれています。

とても誇らしい仲間たちですが、時にはデザイナーとしての実力に課題を感じ、苦悩する日々が続くこともあります。優秀で能力の高い仲間がたくさんいるからこその苦しみです。

自分の力が足りず苦しんでいる人は世の中に沢山いますよね、きっと。

努力はなかなか実りません。苦しい日々は続きます。でも、チームへ、世の中へ貢献するために必要なのは「デザイナーとしての実力」がすべてではありません。

チームは主役だけでは成り立ちません。主役じゃないとからこそできることが必ずあります。至らないと思っても、ありたい姿に届かなくても、チームに貢献するふるまいや姿勢が、良いプロダクトやサービスを生み、誰かの幸せに寄与しています。

もっと力をつけて良いものを作りたい、そうやって苦悩と共に努力しながらも「水を運ぶ人」として献身的に走りまわる仲間たちを、私は心からリスペクトします。

あなたが主役になったときは、みんなで水を運ぶからね。


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そんなGoodpatch Anywhereは
仲間を絶賛大募集中

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サッカーをテーマにしてたはずなのに魚住っぽさあふれるタイトルの記事を読んでいただきありがとうございました!

Goodpatch Anywhereの働き方をもっと知りたいという方は、コチラのnoteマガジンに記事がまとまってるのでご覧くださいー!!

採用も積極的に行っているので、ご興味のある方はお気軽にエントリーくださいませ!!

\\それでは皆様よいクリスマスをお過ごしください🎄⛄❄️//

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