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JINとコロナと銀英伝

 ご存知、彷蜃斎です!

 このコロナ禍に応じて、テレビ局がかつてヒットしたドラマを再放送しています。たとえば、「JIN-仁-」ですが、最初の放送段階(第1期:2009年10月〜12月、第2期:2011年4月〜6月)では、タイムトラベルものと医療ドラマものという2つのカテゴリーで括れるヒューマンドラマと捉えてよかったでしょうが、今回は圧倒的に医療ドラマとして視聴者には受け取られるでしょう。
 テレビ局がどのような思惑で、再放送に踏み切ったのかは別にして、結果的にはこのドラマは時宜を得た再登場だと思います。なぜなら、医療ドラマとしての「JIN-仁-」の真骨頂は、医学の限界を描いていたからだと今更ながら気付かさせられるからです。
 医学の限界という表現は、今、最前線でコロナと戦っている医療従事者の方々にとってはとても失礼なものいいかもしれません。しかし、「医学の限界」とは、最近良く耳にする言葉の「医療崩壊」の別名なのだと私は思うのです。
 そのような限界状態の中で、他者の生命を救うために、自らの生命を賭して治療行為に従事する関係者の皆さんこそ、真に称賛されるべき存在なのだと言えるだと思います。
 さきに、今回の再放送が時宜を得たといいましたが、そう表現した訳には、もう一つの理由があります。第2期が2011年の4月に始まっていることに着眼したいのです。そう、あの9.11の直後なのです。柄にもなく偉そうなことを言いますが、9年前あれだけのことの経験した(にもかかわらず)、我々日本人は喉元すぎればの諺のごとく、性懲りもなくほとんど元の生活に戻ってしまったのではないでしょうか。
 今回、諸外国の年度初めに合わせて、日本も9月新学期制を導入云々という議論が起こり始めていますが、このことに端的に示されているように、テレワークや遠隔会議等々、変わるべくして変わっていかねばならないとしたら、少しでもより良き変革を遂げていきたいものだとこの彷蜃斎は愚考する次第なのです。

 先日、NHKの「サピエンス全史」の作者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏(先生?)への、緊急インタビュー「パンデミックが変える世界」を見ていて、同じくNHK(しかし、これはEテレ)で2020年4月から放送が始まった「銀河英雄伝説 Die Neue These」を思い出しました。ハラリ氏はハンガリーの事例を出して、今回のコロナ禍の後、国家による国民の監視強化が進行する危険性を指摘していたからです。
 「銀河英雄伝説」はもともと、1980年代に大流行した田中芳樹さんの小説でした。彷蜃斎もある必要があって、本篇10巻、外伝4巻全て読了いたしましたが、なかなか読み応えのある大作品群だったことを覚えています。
 小説の大ヒットをうけて、いわゆるバブル期にTVアニメ化され、それも大ヒットしたように記憶します。さらに、つい1,2年前にリメイク版のアニメが作られたことは耳にしていましたが、今回、Eテレで放送されることを知り、録画し始めた次第です。
 物語は遥かな未来、地球に起源をもつ人類が宇宙に進出し、銀河帝国と自由惑星同盟、さらにはフェザーン自治領の三大勢力に分かれて派遣を争っているという設定で、作者田中芳樹さんが大学で中国文学を先行していた関係からみて、三国志が下敷きになっていることが容易に見てとれると思います。
 事実、第四話(だったと思います)を見ていましたら、士官学校時代にヤン・ウェンリーが戦術シミュレーションで対戦相手を打ち負かすエピソードが描かれていましたが、ヤンの戦術が明らかに官渡の戦いにヒントを得たものであるように思われますので、この解釈はそれほど的を外れたものではないように感じます。
 少し、筆は先走りましたが、銀河帝国と自由惑星同盟長期の戦争状態にありまして、銀河帝国の若き英雄ラインハルト・フォン・ローエングラムは魏の曹操、ヤン・ウェンリーは蜀の諸葛亮(孔明)がモデルといったところでしょうか。

 さて、いつものようにここからが本題です。おそらく、結果的にというべきか、偶然にというべきか、「JIN-仁−」が限界を見据えた上での医療に従事する方々の称賛するべき姿を描いていたとしたら、「銀河英雄伝説」は一体何を描いていたと解釈するべきなのでしょうか?
 答えはズバリ「銀河英雄伝説」はラインハルトとヤンという二人の天才的戦術家が競い合う点に主眼があるように見えて、立憲君主制と民主主義のどちらに人類の未来を託すべきかというもう1つ重要な作者のメッセージがあるように思えるのです。
 彷蜃斎は、コロナ禍が過ぎた後の社会がどう変わるのか、あるいは変わるべきか、いや、どう変わってはいけないのかを描いていると見るべきではないかと考えます。


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