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【短編推理小説】五十部警部の事件簿

事件その55

中京団という窃盗を中心とする犯罪グループの首領だった、渥美五郎という男が惨殺され、荒川に浮かんでいた。
彼は内部に警察のスパイが紛れ込んでいるとの疑念を持ち、団員のうち数人を査問した上で殺害していた。
そのことに反発した団員たちの一派が反逆した結果との見方が強かった。
五十部警部は様々な協力者の提供する情報網を駆使し、中京団の構成員を割り出していた。
中京団は現在のところ以下の中核的団員で構成されている模様だ。
阿部比呂志、今泉麻衣子、太田太郎、石川真司、旅田宗冬、大木等、黒川種彦、黒柳良子の八人である。
渥美を殺害した犯人がこの中にいると、五十部警部は確信している。
彼らについて分かっているのは次のようなものである。
 
1.   阿部と下手人、そして太田は盗品の故買市場の顔役であった。

2.   この八人の中の一人は網走刑務所の脱獄囚である。
      このことは、本人と旅田、黒川以外は知られていなかった。

3.   殺害の一週間前、下手人と黒柳、大木、阿部、脱獄者は、大阪の泥棒市         から来た、浪速会の者たちと、盗品の買い取りについて相談したが、
     儲けの少なさに石川が腹を立て、浪速会とはケンカ別れになった。

4.   事件の二日前、下手人、今泉、旅田の三人は、渥美に対してこれ以上の          団員の査問を止めるように申し入れた。しかし、渥美は浪速会との交渉        が不首尾に終わった責任や、以前から続く警察の手入れの的確さを根拠        に彼らの申し入れを撥ね付けた。

5.   事件の当日、大木、黒柳、下手人は石川の隠れ家で密会し、
      話し合いの結果、遂に渥美を粛清する決定に至った。
      石川は渥美を呼び出す役割を引き受けた。
 
これらの情報から、下手人が分かるかな?

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