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【短編推理小説】五十部警部の事件簿

事件その53

事件が起こったのは、梅雨に入って間もなくの大雨の日であった。
その日、女子高校生だった久我佳子が学校から帰宅せず、警察に届け出がされたのがきっかけだった。
間もなく、刺殺された久我佳子の遺体が通学路から離れた運河に浮かんでいるのが発見された。
直ちに捜査本部が置かれ、五十部警部らは付近の聞き込みに奔走した。
その結果、以下の事が分かってきた。

佳子が通っている学校近くの運河の橋の下に、夜中に集まっている若い男女のグループがあった。
1.そのメンバーは、疋田四郎、大津冬子、多田次郎、友田種子、林彦治の五人である。
彼らはいずれも孤児院の出身者で、全員が何度か窃盗や恐喝で補導されていた。

2.彼らの中に花札のイカサマが得意な者がいる。
仲間内でも評判となって、最近は〇×組の賭場に出入りしていた。

3.友田種子はこの花札男に弟子入りを志願したが、種子を嫌っていた花札男はそれを断った。
 
4.花札男と林彦治は互いに不信感を持っていたが、互いの弱みをニギりあっていたので、表だって対立することは無かった。

5.疋田四郎は、仲間の念友に、久我佳子を殺害した犯人である仲間が、あの雨の日に、久我佳子が一時雨を凌いでいた運河沿いの大きな柳の木の下に、腹痛から便意を催して駆け込み、佳子に脱糞した場面を見られて、カッとなり刺殺したのだと語っていることが分かった。
その場には偶々、花札男も雨を凌いでいたが、久我佳子をいきなり刺殺しようとする仲間を止めようとしたが、遅かったという。
花札男と犯人は同じ孤児院で育った親しい仲間だった為、仕方なく久我佳子を、雨が強くなり視界がほとんど無い瞬間を見計らい、大雨で水量の増した運河に投げ入れた後に、すぐさま逃走したのだという。
 
これらの情報を得て五十部警部は一味を全員逮捕することができた。

殺害犯人は誰かな?

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