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二人の寸刻みシアター:邦画編

「ジャズ大名って映画わかるかな」

 僕の問いにコグレは首をぶるぶる横にふった。

「貧乏藩主が黒人の漂流者を拾いジャズを習って大はまりする。陽気で楽しい作品だけど、根っこはとても痛切なんだ」

 彼女と観る映画は二本目だ。さっき観たのはかもめ食堂。無口な彼女は一言も喋らなかったけど楽しんでくれているとは思う。

「今から観よう。あ、その前に十分だね」

 鉈でコグレの右足親指を縦に割ると錆びた汽笛みたいな声が鳴った。十分に一度という取り決めは最初に伝えてある。人間は待つ時間を一番恐れるそうで、事前に教えておくと効果があるのだ。

「盗んだお金はどこ?」

 バタバタと身をよじり汁を漏らすコグレ。僕もこの道のプロ、彼女が本当に何も知らないことは感づいている。でもボスが疑った以上仕方ない。無実の罪で剥せるところを全部剥され油とか釘打ちとかされたんだ。待ち時間を使って映画を観るくらいの御褒美があっても罰は当たらないよね?

【続く】